Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

イップスについて私が述べられる二・三の事柄

以前の記事へのコメント*1で,やきそばパンWさんがお友達のイップスについて触れられていたので,イップスについて少し書いてみます。

正直いうと,〈イップス〉と〈シャンク〉って口にするのがためらわれる言葉だと思ってるんですが――口にした途端出る気がするので――,このブログを古くから読まれている方ならご存知かもしれないですが,僕もイップス気味なんですよね*2。今でも。

ってことでこんな本を読んだこともあるんですけど,

ykkactuarial.hatenablog.jp

「イップスは外科手術で治療できるんです」って言われたってさすがにそこまでやらないよな,と。

ってことで,現実的に何ができるか,あるいは僕が何を意識しているかを述べてみようと思います。自分の場合は〈始動ができない〉って問題なので,やきそばパンWさんがお友達――スイングの途中で動きが固まる――とは少し違いますが。

アドレスする前に考えを整理する

スイングをするにあたって自分で意識するポイントがいくつかあるとして,構えてからそれを意識しちゃうと体が動かなくなるんですよね。なので,構えに入る前にポイントをチェックする。すべて確認できてから構えに入るようにする。

動かないときは何かが違ってる

アドレスしたとして,自分の中で無意識にでも何か違うなと感じてると,体が動かなくなる。アライメントが違うとか,ボール位置が違うとか,グリップ(自分の場合は特に右手のグリップ)が違うとか。それをだましだましやろうとしても結局体が動かないので,そういうときはいったん外して仕切り直す。

ショットにコミットする

よく言われている話だけど,構えに入るまえにショットを選択する。フルショットかノックダウンか,ストレートかドロ―かフェードか,ピンを狙うのかグリーンセンターを狙うのか,グリーンを外すとしたら右か左か,高い球か低い球か。そういうのを全部検討して,決断して,それにコミットする。コミットしてからアドレスに入る。

ショット前に覚醒する

デシャンボー的なアプローチとして,ショット前にめっちゃ素振りして,覚醒する。自分を興奮状態に追い込んで,冷静な思考ができないようにあえて自分を持っていく。その勢いのままアドレスしてスイングする。

動きを自動化する

これちょっとやきそばパンWさんがお友達の件に絡みますが,お友達の場合,切り返しでのシャフトクロスを治そうとしたことがイップスの原因だと理解しています。問題は,それをどうやって治すのか,ということですよね。そこで,切り返し前後の手や腕の動きにフォーカスして治そうとすると,きっとうまくいかないと思います。シャフトクロスの原因はそれ以前にある――セットアップなのかグリップなのか始動の仕方なのかはわからないですが――という認識のもと,その根本を改善しようとしない限り,本質的な解決にはならないんじゃないかと思います。つまり,どうやってもシャフトクロスにはならないような動きを身につける,つまり正しい動きを自動化する,ということですね。

意識を別の場所にもっていく

たとえばトップのシャフトクロスが気になるとして――あるいは僕の場合はバックスイングの方向が気になるとして,そのことから注意をそらすために,別のことを積極的に考えるということですね。たとえば僕の場合だと,切り返し以降の下半身の使い方を考える。

この件,昔少しだけ触れたことがあるけれど*3,ちょっと長いけど引用します:

「野球の動作を修正する場合、悪い動作を直接意識して直そうとせずに、別な部分に光をあてる」と語るのは、野村克也氏である。右打者の右肩が下がるという欠点が目に入ると、指導者は右肩が下がらないように水平に回すことを指摘する。しかしこれでは、動作の修正はうまくいかない。技術的な欠点というものは、ほとんどの場合、別な部分を意識する間接的な方法で是正されることが多い。野村氏は、身体運動は部分と部分の相互作用で成り立つと考えている。したがって、ある部分の動きを修正するには、直接その部分だけを修正しようとしても、その部分と相互作用する別な部分がそのままであれば、結局、修正が不十分に終わったり、よしんばその部分は修正できても、今度は他の問題点が出てきてしまう。この場合、野村氏が提案した間接的方法は、右肩が落ちると左手の甲はボールに正対しなくなるから、「左手の甲をボールにぶつけていく」というものであった。身体のある部分の動きを直そうとしたら、他の部分を探すのである。直したい部分から意識を外すのである。脳は修正点に直接意識をおこうとする。身体は意識を外したほうがうまくいくことを知っている。

小田伸午「視覚の虜――運動科学における認知と運動」,『InterCommunication No.45 Summer 2003』NTT出版

トップのシャフトクロスの場合,その「左手の甲をボールにぶつけていく」に対応するのが何かは分からないですが,少なくともこういう方法論もあるということは知っておいて損はないでしょう。

以上,イップスについて私が述べられる二・三の事柄でした。