Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

〈気持ち悪さ〉を克服してこそゴルフスイング

これを書こうと思ったのは,身近で〈シャフトクロス〉に悩んでいる人が散見されたのがきっかけです。

シャフトクロス,つまり飛球線後方からみたときトップでシャフトが右に向いている――つまりジョン・デイリーみたいな感じ――になってるやつですね。まぁシャフトクロス自体が良いとか悪いとかはないと思うんですが――デイリーもメジャーで勝ってるし,とはいえシャフトクロスがネガティブな意味合いを含んでいるのには,いくつか意味があると思うんですよね*1。で,シャフトクロスになるのは要するにスイングの始動でクラブヘッドがインサイドに入っちゃってる――あるいはクラブヘッドが垂れちゃってるからで,さらになんでそういうことになりがちかというと,その方がラクにクラブを動かせるからだと思うんです。

ここで「ゴルフクラブは偏重心でぇ」みたいなことーーつまり簡単なことをあえて難しく語ることーーはしたくないんですが,要するにセットアップからクラブフェース開いてクラブヘッドを垂らして上げるほうが,感覚的にラクなんですよね。シャフトの軸上にクラブヘッドの重心が来るからーーっていってもそのあと勢いで垂れるから結局シャフトの軸上からは外れるんだけど。だから〈感覚的にラク〉に無意識的に従って動かした結果が〈シャフトクロス〉だと思うんですよね。だから始動では,クラブヘッドが垂れない/開かないように,グリップを〈下から支える〉感覚と〈右手で抑える〉感覚が必要ーーいわゆる〈左ハンドル〉とか〈アルファだかベータのトルク〉とか表現されることがあるけど。

もうひとつ,始動における〈感覚的にラク〉といえば,クラブヘッドが先に動いちゃう状態。本来であれば,トルソーが動いてそれが腕を動かしてそれが手を動かす……っていう運動の連鎖になると思うんですよ。で,これが起こるとクラブヘッドはいちばん最後に動くかたちになるーーいわゆる〈クラブヘッドが置き去りになる〉状態ーーので,シャフトには負荷がかかって,バックスイング前半でシャフトはしなるわけですね。

これもまた慣れていないと〈気持ち悪い〉感覚になるんじゃないかなと思んですけど,これがないと〈大きなショルダーターン〉ができないと思うんですよね。

その〈クラブヘッドを置き去りにする〉ことの〈気持ち悪さ〉ってたぶん,〈ゴルフクラブの動きがコントロールできなくなる〉って感覚が無意識にあるからだと思う。というのはーーやってみればすぐわかるけれどーー,クラブを手でひょいっと上げると〈自分でクラブを動かしてる〉って感覚がえられるんだけど,体が先に回って最後にクラブヘッドがついてくるというかたちだと,バックスイング後半で〈クラブが勝手に動いていっちゃう〉っていう感覚になる。だからこそ肩は回るし深いトップが作れるんだけど,まぁこれも慣れてないと〈気持ち悪い〉感覚ですよね。

さらにそこから〈右手首の背屈〉って話になるわけです。以前一緒にラウンドした人で「片手スイングは力がないとできない」と思っている人がいたんだけど,なんでそう思うかっていうときっと,〈手首を固めて〉〈クラブの動きを手でコントロールしたい〉からだと思うんですよね。でもそんなことできないし,やらない方がいい。これもやってみればすぐわかるけれど,右手だけでスイングしたとき,切り返しで右手首は甲側にがっつり折れるーーいわゆる背屈するだけするーーし,その感覚を両手でスイングしたときにも得られるようにすることで,インパクトまでにクラブヘッドを最大限に加速することができる。

最後にダウンスイングにおける〈気持ち悪さ〉の話なんですけど,これは要するに〈右を向いたまま打て〉って話ですよね。ゴルフスイングってーー三橋さんの言葉を借りるならーー「正面を向いたまま左に打つ」っていう,普通ではない運動なので,どうしても打ちたい方向に向きたくなる。長いクラブになってボールを左足寄りに置くと,なおさらそういう傾向が強まる。その〈傾向〉にカウンター入れるためには〈右を向いたまま打つ〉という感覚で打つと,実は全然普通のスイングになるじゃんっていう。

っていう感じでゴルフスイングの中には〈気持ち悪さ〉を感じるポイントはあるし,それは無意識的/本能的な動きをする方がラクでそれに対抗しなきゃいけないからこそ〈気持ち悪い〉と感じるんだけど,その〈気持ち悪さ〉が〈当然〉とか〈快感〉とか思えるようになるーーそのためには成功体験を積む必要があるーーのが,目指すべき方向性なんじゃないかなと,僕は思います。

……そういえば,グリップについて。ゴルフスイングにおいていちばん〈気持ち悪い〉のって,何らかの理由でグリップを変えようとしているときだと思う。「グリップなんて好きなように握ればいい」って言う人もいるし,それはある程度正しいと僕も思うーーグリップなんてその人のスイングとか打ちたい球とかに依ると思うからーーんだけど,でも世の中には〈標準的〉なグリップの仕方がある以上,スイングの他の箇所を改善しようとしてうまくいかないときに,グリップを見直すのはアリだと思う。めっちゃ気持ち悪いんですけどね,グリップを変えるのって。でもその〈気持ち悪さ〉を受け入れてーーそれまでなかったミスショットが出るのも許容してーー練習を重ねているうちに,だんだんいい球が打てるようになってきて,そういう成功体験が〈気持ち悪さ〉を〈心地良さ〉に変えていくんですよね。

おしまい

*1:エネルギーのロスとか,切り返しからシャフトが立って降りてきてうんたらほんたらとか