Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

〈持ち球〉について|その効果を定量化できるか?

コメントしようかと思ったのですが,面白いテーマなのでこちらで記事にしてみます。なお,データはないので定性的な記述に終始します。

ゴルフの持ち球の嘘 - 札幌と理系とゴルフ

むーさんの主張としては,「『持ち球を持ってる方がいい』と一般的に言われているが,そのメリットが定量的に示されていないのでは? 曲がり球よりストレートボールを目指した方がいいのでは?」ということだと思います。いろいろとツッコミどころは多いですが,突っ込んでいると切りがないのでそこはほっときます。

一方,『持ち球を持ってる方がいい』という主張として,よく言われるロジックとしては,たぶん以下のニクラウスが言っているようなことだと思います。

ニクラウスの言っていることを一応ざっくりと訳すと,「フェードが持ち球の人(ゴルファーA氏)は,ピンを狙うときに10フィート左をターゲットにする。狙い通り10フィート曲がったらベタピンだし,ストレートに打っちゃっても10フィートのパットが残る,20フィートのスライスになっちゃっても10フィートのパットが残るだけ。一方で,この図には示されていないけれど,常にストレートボールを狙っている人(ゴルファーB氏)は,A氏のように20フィートもスライスしちゃったら20フィートのパットが残る(から不利だよね)」ということです。

納得感がありそうなんですが,反論としては,「A氏と同じショットの分散(意図した点から左右に10フィートずつのブレ)とB氏のショットの分散とが同じであれば,B氏が20フィートもスライスする状況などありえず,だから上記のニクラウスの議論はB氏の不利さを意図的に誇張している」ということですかね。ストレートボールが持ち球のB氏が右に10フィート,左に10フィート曲がる可能性があると仮定すれば,ピンを常にデッドに狙えば,その結果は常にA氏と同じになると言えるんじゃないでしょうか。

なので,「曲がり球を持ち球とする人(A氏)と,ストレートボールを持ち球とする人(B氏)の,ショットのdispersion(ボールの散り方)がまったく同じ」(仮説1)であれば,そのいずれかが有利とか不利とかはない,と結論づけられると思います(ショットのdispersionとは,要は以下の図のようなこと)。

なので問題は,上記の「仮説1」が果たして正しいかどうか,つまり「同程度のスキルレベル(というのも雑な定義だけど)を持つふたりのゴルファーがいて,ひとりは曲がり球が持ち玉,もうひとりがストレートボールが持ち球だったときに,そのdispersionは同程度になるかどうか」,ということなんですが,

経験的には「そんなことはない気がする」としか言えません。僕も基本的にはストレートボールをイメージして打ってはいるんですが,ある時期は曲がるとしたらスライスが大多数,またある時期は曲がるとしたらフックが大多数,という感じで,「どっちに曲がるか分からない」という時期の方が短いし,逆に「どっちに曲がるか分からない状況」というのは「技術的に安定していなかった時期」だと思うんですよね。だし,そういうときってゴルフをやっていて本当に辛い。

そもそも〈持ち球〉って,自分のスイングのクセ,体のクセ,効き目,柔軟性,体のアシンメトリー,その他もろもろのゴルファー固有の何かによって結果的に生まれてくるものだと思ってるんですが(ドライバーを打ってOBする程度にスライスするっていうのは,持ち球以前の基本的な技術の問題だとは思いますが……実際,ニクラウスの議論だってアイアンで10フィート曲がるの曲がらないのって話だし),それよりも「持ち球」で思い出すのは,誰が言ったかは忘れましたが,

林の中からボールを打ち出すとして,木が邪魔してストレートには打てないから,左右どちらかには曲げなきゃいけない。そのときに自分が自信を持って曲げられる方向,それが持ち球だ

ってなやつなんですよね。上記の通り,理想的な状況でショットのdispersionだけ気にする(つまりは過程を無視して結果にだけ注目する)んであれば,ボールが曲がる方向なんてどうでもいいし,ストレートボールがエネルギー効率がいいのは間違いないけれど,実際コースに出ればいろんな状況が待っていて,その中でボールを曲げたい・曲げなきゃいけない状況は存在する。そのときに左右両方に曲げられる方が有利だし,少なくとも自分が自信を持って曲げられる方向を持っている方が精神的に有利である,ということは言えると思います。

あともうひとつのポイントとして,これは『ロジカルゴルフ』*1 *2 で書かれていたことですが,ショットにおけるミスというのは「トップかダフりか」「スライスかフックか」「プルかフックか」の6つ(シャンクは除く)で,カギカッコ内のどちらか一方を防ぐことはできると。つまりは,どうしてもトップしたくなかったらダフるようなスイングをすればいいし,どうしてもスライスしたくなかったらフックするようなスイングをすればいいと。逆に言えば,そういう技術を身につけることが,実践的なゴルフのスキルだよ,って話ですよね。

例えば以下のような(右が池,左がバンカー)状況で,そりゃストレートに狙ったところに打てればベストでしょうが,現実的には「左のミスは許容して,右のミスを消す」という必要性がでてくるわけですよね。そういう打ち方ができるんだったらそうすればいいし,「どうしてもフックが打てない」という人であれば,スライスしたときの最大の曲がり幅を基準にして,アライメントラインを左に設けることになる。

……っていうようなことが,〈持ち球〉から想起することですかねぇ。