この本については大庭さんの紹介へのリンクを張ることで事足りるでしょう。*1
Search for the Perfect Swing を勝手に翻訳していくよ | 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる!
自分のために,スイングに関するところだけをサマライズします。
第1部|モデルゴルファーを求めて
第1章|プレーヤーがボールを打つとき――いったい何が起こっているのか?
「ゴルフスイングってのは短い時間のあいだにいろんなことが起こって,エラーのマージンがすげー小さい」ということが切々と語られて,「だからゴルフスイングってのはできるだけシンプルでなきゃいけない」と結論づける。納得感高い。
第2章|ゴルファーは二重振り子である
「ゴルフスイングってのは二重振り子である」ということが滔々と語られて,誰が何と言っても*2二重振り子は二重振り子なのである。
第3章|ザ・モデルゴルファー
「シミュレーション」とは不可欠な「モデル」ですね。「ゴルフスイングって二重振り子でしょ」っていう前章の仮説,その妥当性を検証するために,実際のゴルファー(当時のトッププレーヤー)のスイングを分析して,ああやっぱり二重振り子的な運動になっているよね,ということが確認された。良かった。章のタイトルに「The」がついているのがポイントで,「いろんな人のスイングを見て,やっぱり二重振り子運動こそが,ゴルフスイングのエッセンスだよね,それでモデル作っちゃうよ」という気持ちが理解できます。(厳密に言えば,第一の振り子の支点はアップスイングとダウンスイングで動いてるし,その動いている度合いもゴルファーによって違うことが同時に確認されている)
第2部|モデルから分かること
第4章|スイングのハブについて
前章でモデルが確認できたけど,それを自分のスイングにどう当てはめればいいの?って話。こっからプレーンとかの話が出てくるけど,まずはハブ*3を固定して,その周りをプレーンが描くイメージを持ち,そしてそれがまたターゲット方向に揃っているイメージを持つといいよ,ということです。細かい点で面白いのは,「よく頭を動かすなとか言うやつがいるけど,スイングのハブって頭ではないので(実際は「肩のちょい下にある胸のどこか」らしい),頭は動くし動いていい」ということ。
第5章|モデルに合致するようにクラブヘッド振ること
ここで,モデルと人間の実際の動きとのあってしかるべき差違について細かく見ていくけど,最初に登場するのは,身体的ハンディキャップがあって左手だけでスイングするふたりのゴルファー。実際彼らは250ヤードも飛ばし(1960年代で!),ハンデも8と4だとか。そういう彼らのスイングを分析すると,二重振り子運動のモデルに非常に近いスイングになっていると。で,この先,手首の動きの呼び名を確認(というか定義か)しておこうということで,「撓屈・尺屈」を「コッキング・アンコッキング」,「背屈・掌屈」を「ヒンジング」と呼ぶことが確認されて,最後の最後になって,「ゴルフスイングは二重振り子って言ったけど実際はそんなシンプルじゃないし,本当に人間の動きを二重振り子に当てはめるとボールなんか打てない」みたいなことが言われて,なんだそれ。
第6章|モデルバックスイングの基本的な動き
バックスイングの動きを要素に分解していくわけだけど,その前に「リードアーム(右利きの人なら左腕のこと)」の重要性が最初に述べられる。で,バックスイングの運動としては「胸郭(肩でもいいけど)のターン」と「肩関節からの腕の上昇」があって,それから「手首のコッキング(撓屈)」があると。それから第4と第5の動きとして「腕が胸に近づく動き」と「前腕の回内」があるけれど,このふたつの動きは受動的だって言ってる。いずれにしろこれでようやくクラブヘッドがプレーンに乗りますよ,と。
個人的な感想としては……,「スイングのトップってどこなんだ」問題があって,一般的には「バックスイング→トップ→ダウンスイング」とされているけど,実際には「バックスイング→切り返し(そのアクションの途中のどこかの時点がいわゆるトップ)→ダウンスイング」なんじゃないかと。マシュー・ウルフのスイングは顕著だけど,あれってどの時点を「トップ」と呼ぶんですか,って。一般的に「シャローイング」と呼ばれる動きがあるけれど,それをする直前をトップと呼ぶのか,それが完了した時点がトップなのか……,まぁどっちでもいいですが,上で述べられているのは,つまりは上腕の回内も完了してクラブヘッドがプレーンに乗ったところでバックスイングのできあっがりー,ってことですね。
第7章|体全体をモデルのパターンに当てはめる
「いいタイミング」のモデルはインパクト時に第一の振り子と第二の振り子が直線(最長点)に近くなってヘッドスピードが(ほぼ)最大化されるのに対して,「悪いタイミング」のモデルは二種類あって,ひとつはインパクト時に第二の振り子がまだ遅れてきているもの,もうひとつは逆にインパクト前に最長点を迎えてしまっているもの。で,コンピューターでシミュレーションした結果,最も効果的な運動というのは「第一の振り子を旋回軸を中心にスムーズかつ力強く動かし,第二の振り子に積極的に力を加えるのは,それ自身が外側に向かって動き始めたときになってから」。もっとも大事なポイントとして,スイングの動き(ねじれ)の中で一点でも緩みがあってはならない。
第8章|インパクト前後の左腕のフォワードスイング
左腕のローテーションとか手首のヒンジングとかコッキングとかについて詳細に語られる。(あとでしっかり読む)。左腕のローテーションがヘッドスピードを増すのはコッキングしている場合だけ。分析の結果,左手首に軽く掌屈が入っているポジションでインパクトを迎えるのが最善。
第3部|右腕をいかにモデルに当てはめるか
第9章|右腕はいかにしてスイングを強化するか
前章までで左腕だけのスイングがモデルにいい感じに当てはまることを見てきたので,これに右腕を加えたときにどうなるか,右腕がよりパワフルでより効果的にコントロールされたスイングを生む方法を見ていく。まず左腕だけのスイングの弱点として,1)テイクアウェイでクラブをプレーンに乗せるのが大変,2)トップでもクラブが暴れないように力が要る,3)インパクト地点の動きに正確性と再現性が欠ける。また,右腕を加えることで,概算で飛距離を25%伸ばすことができる(はず)。右腕を伸ばす動きが,追加的なパワーの源泉。一方で右腕は,左腕だけでスイングしたときのメカニズムを壊さないように働かなくてはいけない。特にダウンスイングの開始で右腕を使うのは害でしかない。
第10章|両手スイングのタイミング
右腕(のサポート,動き)が加わるので,二重振り子で第二の振り子が伸びる(を伸ばす)タイミングは,左腕だけのスイングのときからは変わってくる。伸ばすタイミングはゴルファーのスイングによって変わってくる。
第11章|右手首のロールのタイミング
左腕のローテーションをしないでスイングすることはできなくはないけど,それではいいスイングはできないし,トッププレーヤーは多かれ少なかれ左腕のローテーションが入っている。インパクトあとであっても左右両手首のターゲット方向に向かうヒンジングはあってはならず,アームローテーションが入ることで,フォロスルーのけっこうな段階まで左右の腕(肘)は伸びたままになる(ベン・ホーガンのスイングが参照される)。
第12章|右手の感応度,コントロール,学習
モデルは分かったといってその通りにやったつもりでも,ストレートボールが打てるわけじゃない。人間の動作には「学習」が必要であるし,ゴルフスイングのその例に漏れない。右利きの人は普通,右手がもっとも自由に使えて感覚もするどい。ゴルファーも右手から情報を得ながらスイングを行なっている。なもので,右手のグリップは重要。実際,左手は掌で握ってても,右手は指で握ってるでしょ。
第4部|モデルタイプゴルフにおける人間工学
第13章|ゴルフにおける筋肉の働き
モデルの動作は旋回軸から起こっているように見えるが,実際の運動は足の存在が欠かせない。筋肉は反射で収縮するが,スイングの主たる動力は筋肉の能動的な動きであるし,筋肉というのは「引く」一方であって「押す」ことはできない。スイングのパワーは筋肉から供給されるが,その供給源の大半は腕の筋肉ではなく脚とヒップの筋肉(スイングに必要な3-4馬力のうち,腕から生まれるのは最大で1.25馬力)。言い換えれば,「脚とヒップはスイングのエンジンであり,腕と手は変速機である」。バックスイングが終わる前に,下半身のフォワードスイングを始めなければいけない。ヒップのターゲット方向への動き(sideways thrust)と回転が合わさると,大きな力を生むことができる。
第14章|リズム,タイミング,バランス,スタンス
「タイミング」とは,ダウンスイングの一連の流れのコーディネションを意味し,クラブヘッドスピードを最大化させるものをいう。一方で「リズム」というのは曖昧な用語であり,タイミングも含むけれど,主観的なものであって,ゴルフスイングを客観的に記述するのには向かない。とはいいながら,上級者のスイングを見ると感じ取れるのが「リズム」ではあるし,そこから初級者が学べるものはある。「バランス」といったとき,それは静的なものだけでなく,動的なものも含まれる。いいスイングはいいスタンスの上に作られる。
第15章|手首のアクション――構造とグリップ
いろいろ。オーバーラッピングを採用しているプレーヤーが多いけど,実験ではオーバーラッピングだろうがインターロッキングだろうがベースボールだろうが結果にあまり差はない。また,ストロンググリップ(フックグリップ)がスライスを引き起こすことはよくあるし,逆もしかり。
第16章|手首のアクション――スクエア派とローテーション派
1960年代初頭に,ゴルフ界では「スクエア派」と「ローテーション派」との争いがあった。すべてのゴルファーはトップでクラブフェースがプレーンに対して90度開いた状態からダウンスイングをしてインパクトでスクエアになるわけだが,その90度の回転のうち左前腕のローテーションからくるのは30度ほどで,残りの60度ぐらいは腕の上昇とか肩のターンとかに起因する。ローテーションは常に発生するが,その度合いやタイミングはゴルファーによって異なる。トップからインパクトまで90度のローテーションをするのが「スクエア派」。一方「ローテーション派」はトップでもっとクラブフェースが開き(例えば120度とか),ローテーションが増えるだけスイングはパワフルに感じられるが,よりタイミングに依存し,再現性が減る。その逆が「シャット派(あるいは掌屈派)」で,これはトップからインパクトまでのローテーションが90度より小さいスイングのこと。当然インパクトの再現性は増すが,その代わりローテーションからくるパワーを放棄することになる。しかしこれは機械的に考えればそうなのだが,一方でシャットなスイングやその手首の動きは多くの人にとって不自然で居心地が悪いものであるから,それによってヒューマンエラーが起こる可能性はある。また,手首のアクションは体のアクションにも影響を与える(ローテーションが少ないほどより大きな体のアクションを必要とする)ので,ローテーションの度合いの選択は容易ではない。ローテーションの度合いによってバックスイングの動きも変わる。