去年の全英のときの話なのでちょっと古いですが,ジョン・ラームのあのショートスイングは,実は内反足に起因していたという話。
British Open: Jon Rahm says club foot at birth is behind short swing
内反足,英語では〈club foot〉といいますが,イメージ検索すると容易に分かる通り,足首が90度内側に曲がっている症状ですね。これを治すには手術をするか矯正をするかで,ラームは矯正する方法をとったようです。(「ポンセッティ・メソッド」と呼ばれる手法かと思われます。)
Rahm revealed that every bone his right leg from the ankle down was broken and casted within 20 minutes of his birth. He returned to the hospital weekly to be recasted from knee to foot which didn’t allow that part of his leg to grow at the same rate, resulting in limited ankle mobility in his right leg. It’s also a centimeter and a half shorter than his left leg, Rahm said.
生まれてから20分以内に右足全体を覆うようにギプスがつけられ,週一で病院に行ってはギプスを交換する。こうやって歯の矯正と同様に少しずつ足首の関節の角度を調整していくわけですが,これをすると右足と左足の成長にズレが生じ,脚の長さも足の大きさも異なるようになり,そして内反足のある側の足首は柔軟性の点で劣るようになります。
“I have the swing I have, and I’ve gotten more mobile and stronger in some parts of my swing so that might slightly change it, but I have certain unique parts and certain unique, let’s say, physical limitations that let me swing the way I swing, and I don’t deviate from that,” he said.
ラームいわく,「自分の体には独特な部分があり,いわば身体的な限界があるので,だから今のスイングみたいなスイングをするようになった」と。
この話が面白いなと思ったのには2点あります。ひとつは,「ラームみたいなスイングをしたい」といって真似する人は少なからずいるけれど,ラームのスイングはラームの身体的条件に起因・依存していたということ。当然といえば当然の話ですが,「誰それみたいなスイングをしたい」と思うことのナイーブさについて考えさせられるなぁということ。もうひとつは,同じく先天性内反足で生まれてきた息子を持つ親として,同じ症状を持っていた人間が世界ナンバーワンのゴルファーになっているという事実に,勇気づけられるということ。
幸いにして我が子は――ロンドンで生まれましたが――母親の胎内にいるときから内反足が判明し,生まれる前から産後の処置について手筈が整えられたということもあり,いまではそんな事実があったということを忘れさせるぐらいに,元気に動き回っています。ロンドン時代の同僚に息子の内反足のことを話したら,「実は俺も小さいときに内反足だったよ」と教えてくれました。彼は手術をしたようだけど,でも「そっちの足の方がいまでもワンサイズ小さい」って言ってたっけな。
ラームのこのニュース。日本ではあまり報じられなかったように記憶しているので,とりあえずここに書き残した次第です。