Linkslover

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アマチュアゴルファーはいかにドライバーにエネルギーを伝えるか|Sasho MacKenzie

GOLF.comにLuke Kerr-Dineen(LKD)が書いた記事*1で知ったんですが,ゴルフ界のバイオメカニクスの第一人者,サショー・マッケンジー博士(Dr. Sasho MacKenzie)が "How Amateur Golfers Deliver Energy to the Driver" という論文を Golf Science Journal で発表したんですって。*2

で,せっかくだからもとの論文を全訳してみようかと思ったのですが,長すぎて挫折しました。

とりあえずアブストラクトだけ訳すと,こうなります。

ゴルファーがクラブにかける仕事量はクラブヘッドスピードを決定する最大の要因であり,それは以下の4つの要素の関数だ。つまり,ハンドパス長,ハンドパスに沿う仕事量の平均値,クラブ角距離,そしてこの距離上にかかる偶力の平均。主目的は,クラブヘッドスピードを生み出すにあたってこれら4要素の相対的な重要性を評価することだった。ローンチモニターを使ってゴルファー76人のドライブを計測した。これら4要素の相対的重要性を決めるのに,回帰分析を行なった。クラブヘッドスピード(r = .96)の変動における最大の割合を占めるのは,フォースの平均値。ハンドパス長(r = .45)と平均偶力(r = .45)は,クラブヘッドスピードの有意な予測因子であった一方,角距離は違った(r = .14)。これら調査結果は,クラブヘッドスピードをあげたいインストラクターおよびゴルファーに適用できるだろう。 *3

要するに,というか,自分なりの解釈をするならば,ジェイコブズ3Dでも「フォースとトルク」という話がでてくるけど,クラブヘッドスピードに影響を与えるのはトルクよりはフォースだよ(というのはタスクさんの本でもさんざん書かれていたと思うけど*4),ということなんだと思います。

で,問題というか気になるのは,LKDがGOLF.comに書いた記事の方で,次のふたつが大事だって言ってるんですね。

ひとつは「Pulling down with force」。つまりは「(切り返しから)引く力」ってことで,ラットプルダウン*5みたいなトレーニングを勧めている。しかしサショーはツイートで「There is not an initial hard pull down. The following are from the paper. The force on the grip increases quite slowly at the start of the downswing. You want a higher AVERAGE force.」,つまり「平均的なフォースが問題であって,ダウンスイング初期でハードなプルダウンは要らないよ」ってなことを言ってる。ここはLKDの勘違いじゃないのかなぁ。GOLF.comには下のような図が載ってたけど,これだと力の入れ方とか方向性とかで誤解を生むと思う。

もうひとつは「Increase your hand path」。まさしく「ハンドパスを伸ばせ」ってことで,そりゃ手の動く距離が伸びてそこでかかるフォースが増えたら必然的にトータルの仕事量は増えそうな気がするんだけど,同様にこんな図が載ってて,これだとショルダーターンを伴わないオーバースイングをする人が出てくると思う。

あと,当然ながら,ダウンスイング時のハンドパス長が問題なわけで,切り返し時の手の位置というのは変数のひとつでしかない。つまりは切り返しからどの方向にフォースをかけることで長いハンドパスを実現するかが問題なんであって,ひとつめの図のようにボールめがけて出力していったらハンドパスが短くなるだろー,というのは,最近のジェイコブズ3Dまわり(というか三觜さんまわり)でよく出てくる話題だから,ご存知の人は多いだろうけど。

おしまい。

*1:New study reveals how golfers *really* generate their power

*2:How Amateur Golfers Deliver Energy to the Driver | Published in International Journal of Golf Science

*3:The work the golfer does on the club is the primary determinant of clubhead speed and is a function of four factors: hand path length, average force along the hand path, club angular distance, and the average couple applied over this distance. The primary purpose was to evaluate the relative importance of these factors in generating clubhead speed. The drives of 76 golfers were captured using a launch monitor and an optical system. Regression was used to determine the relative importance of each of the four factors. Average force accounted for the greatest proportion of variability in clubhead speed (r = .96). Hand path length (r = .45) and the average golfer applied couple (r = .45) were also found to be meaningful predictors of clubhead speed, while angular distance was not (r = .14). These findings will be applicable to instructors and golfers attempting to increase clubhead speed.

*4:松本協『ゴルフの力学:スイングは「クラブが主」「カラダは従」』三栄書房 - Linkslover

*5:How to do lat pulldowns like a professional golfer