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ホールの距離がスコアリングに与える影響を定量化する|15th Club

結果が直感的なので,「当然じゃん」の感想で済まされそうな記事ではあるのですが,本当はもうちょっと示唆に富んでいるんじゃないかと思います。コース設計においてホールの距離のバリエーションを増やすことがいかに大事か,みたいな,設計論の観点につなげれば。

ソース

The impact of hole variation on scoring - 15th Club by Luke Carter, 6 February 2020

拙訳

マーク・ブローディ(Mark Boradie)教授が生み出したストロークスゲインド(strokes gained)のコンセプト。今となってはゴルフに置いて欠かせない数値となったが,開発当初は,ピンまでの距離が,残りの平均打数を算出する上で独立するふたつの変数のひとつであった。ブローディ教授が定式化した通り,ピンまでの距離が遠くなるほど(それ以外の要素はすべて同じとする-例えばライの状態など),ホールアウトまでに要する平均打数は増える。しかし,そこで発見されたのは,ピンまでの残り距離とホールアウトまでの必要打数とは,比例的な関係ではないということだ。ここでは,ヨーロピアンツアーの大会においてホールごとの長さの変化が,プロフェッショナルゴルファーのスコアにどのような影響を与えているかを,検証してみよう。

この分析において,ホールの距離の変化に応じたスコアリンク確率を計算するために,ホールをパーごとに分類する(パー3,パー4,パー5)ことが欠かせない。以下の散布図は,ヨーロピアンツアーの全ホールで,ホールの距離(単位はヤード)と平均スコアとの関係を図示したものである。

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上の散布図は,ヨーロピアンツアーで2017年初めからプレーされたすべてのラウンドのすべのホールにおけるスコアを示しており,パー3・パー4・パー5ホールそれぞれにおける全体的な傾向を示している。上記の通り,スコアリングにおいては距離が主要な要素となっており,ホールの長さと対パーの平均スコアとのあいだには,強い相関関係がある。

大部分の現象はこれらのトレンドラインの周りに存在しているものの,「外れ値」としてこの一般的な傾向には沿わない現象も,いくつか存在する。平均スコアから大きく外れるようなスコアが記録される理由は,そのホールの難易度に影響を与える外部要因がいくつか存在していることによる。それら要因が,距離の影響を上回るのだ。

その外れ値のいくつかの例を取り上げて,平均スコアのブレの要因を突き止めてみよう。例えば 2019年 Opan Open が開催された Al Mouj Golf Course の,5番パー3ホール。第2ラウンドでの平均スコアは3.26だった。

計算上は,150ヤードと短いこのホールの予想平均スコアは2.90で,易しい部類に入るはずだ。しかし,ホールの設計と気象状況を鑑みれば,当時のホールの難易度が高かったことは明らかだ。このホールはアイランドグリーンのパー3ホールで,グリーン全体がウォーターハザードで囲まれており,平均より難易度が高いことがこれで説明できる。さらに,第2ラウンドは砂嵐の影響を強く受けており(瞬間最大風速は63km/h),最終的にすべてのプレーが中断となったほどだ。

このような現象を見れば,ストロークスゲインドを算出する上で,生データに対してラウンドとホールレベルでの調整を行なうことの重要性がよく理解できるだろう。普通ではないスコアの変化に際し,ホールレイアウトと/あるいは気象状況を考慮に入れた上で検証することの助けにもなる。これら調整を行なう際に大事なのは,ベースラインそのものを正確にモデルすることだ。

上の散布図は,異なる回帰分析モデル(線形 vs. LOWESS*1)を用いれば異なる結果が得られることも,よく示している。そしてそれゆえに,不正確なモデルを用いれば,平均スコアの微妙な変化を無視してしまう可能性もある。

このいい例は,パー5での平均スコアをモデリングするときに見られる。図を見れば明白なように,550ヤードと575ヤードとのあいだで,平均スコアが大きく増えているからだ。2019年のヨーロピアンツアーで,平均ドライビングディスタンスは297ヤード。なので550ヤードのホールであれば2打目の残り距離が253ヤードとなるが,575ヤードでは278ヤードとなる。この距離だと,ヨーロピアンツアーのプレーヤーの大多数は,セカンドショットでグリーンを狙うのが難しくなり,2打でグリーンに乗せるプレーヤーの割合が著しく下がる。結果的にバーディかイーグルであがるプレーヤーの数が減るので,結果として平均スコアが増えるというわけだ。

平均スコアの統計を計算するに際して大事だったのは,異なる大会における出場プレーヤーのスキルの違いを考慮に入れることだ。そのために,フィールドの強さを示す指標(15th Club のパフォーマンスインデックスを使用)を用いて,ホールレベルでの調整を行なった。こうすることで,イベント間のプレーヤーのスキルレベルの変化を考慮に入れられ,シーズンを通じての平均スコアの比較検討が可能になる。

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上のグラフが示しているのは,ホールが長くなるに応じて,いかにバーディー以下の可能性が減って,ボギー以上の可能性が増えるかだ。パー3とパー4では傾向は似通っている。いずれも,ボギー以上の可能性が距離の伸びに応じておおむね比例的に増え,同時にバーディー以下の確率が指数関数的といえるほどに減少している。パー5では,ボギーの確率とバーディーの確率とが逆転することはない。

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予想通り,平均スコアのブレ(標準偏差,縦軸)は,ホールのパーが増えるにつれて増加する(パー3よりはパー4,パー4よりはパー5の方が,スコアのブレが大きい)。面白いことに,パー3とパー4とでは,カーブがU字になっており,ホールの長さが短いとスコアリングのブレが大きく,ホールが長くなるにつれていったんブレが減少して,また再度増加する。カーブの最下点(ブレがもっとも小さくなるホールの距離)は,上のバーディー確率とボギー確率との線が交差するポイントと,ほぼ完全に一致する。

逆に,パー5でのスコアリングのブレは,逆に傾向を見せる。つまり,短いときにはブレが小さかったものが,距離が長くなるにつれて増え,550ヤードぐらいでピークに達したあとは減少に転じるのだ。

予想としては,パー5でもこのままホールの距離を伸ばしていけば,パー3やパー4と同じようにこのブレのカーブが最下点を迎えるポイントが訪れ,それはバーディー確率とボギー確率との線が交差する点に一致するであろうということだ。バーディー確率とボギー確率との線が直線だと仮定すると(かなり大胆な仮定ではあるが),その交差する点は700ヤードぐらいのあたりになり,そこでパー5ホールでの平均スコアがイーブンパーになるだろうと思われる。

さて,これが全体のスコアリングに持つ意味は何か? 簡単なところでいえば,ホールの距離がスコアリングに与える影響は,ホールのパーによって変わるということ。パー3とパー4とを見ると,極端に長かったり極端に短かったりするホールは,スコアリングのブレが大きいことが分かった。その理由としては,パー3で例をとると,すごく短いけど正確性がかなり問われるホール(Troon の postage stamp)だったり,モンスター級に長いホール(2018年全米オープンでの Shinnecock の2番,252ヤード)だったりするだろう。超飛ばし屋(全体の1%)を除けば,このような長さのホールは,プアープロでさえもてあそぶ。このような極端なプレーヤーたちをいじって初めて,スコアリングに大きなブレが生じてくるのだ。

しかし,パー5については逆のことが言える。距離が短い,あるいは長いホールほど,スコアのブレが小さい。その中間の,550−575ヤードあたりで,もっともブレが大きくなる。もう一度言うが,ここで鍵になるのは,リスクだ。ショートパー5なら大半のプレーヤーはふたつでグリーンに届くか,レイアップしたところで,大半のツアープロにとっては容易に寄せワンでバーディーがとれるだろう。逆にモンスター級のパー5(例えばドイツ・ハンブルグの Green Eagle GC 9番,647ヤード)では,極端な飛ばし屋を除いて,ふたつでグリーンに乗せるのは難しい(1134回中成功したのは13回だけ)。それゆえ,ふたつでグリーンを狙うリスクは取り除かれ,単純な3ショットホールとなり,安定したスコアリングのパターンになる。

賢く設計されたコースにおいてのみ,スコアリングの大きなブレが実現されることになり,そして肉体的にも精神的にもバランスのとれたプレーヤーだけが,上位に来れる。リスクを犯して成功したプレーヤーが,72ホールを通じた大会で最高のプレーヤーとなれるのだ。

*1:Locally Weighted Scatterplot Smoothing