「ゴルフで慢心している人が着るべきウェアのブランドってなーんだ?」
「マンシングウェア」
というしょうもないなぞなぞはさておき,先日のラウンドでの自分のスイングを同伴者のkkが動画に撮ってくれて,それを見て思ったのが,
「悪くないじゃん。これでスコア90台はおかしい」
だったんですよね。kkには「すげー慢心だな」と言われておしまいでしたが。
もちろんスコアを崩す理由はスイング以外に山ほどあるのは承知の上でなんですが,スイングの良さとスコアの良さというのはある程度の相関関係があると思うんですよ。そういう話は前も書きましたが*1,ここ数日また,「スイングよりスコアだろ」的な話が盛り上がっている気がします。先週の 3M Open を制したマシュー・ウフルをきっかけにして。
Matthew Wolff is -3 thru 14 in his PGA TOUR debut.
— PGA TOUR (@PGATOUR) January 31, 2019
🔸19 years old
🔸Attends @okstate
🔸1st-team All-American as a freshman last year
🔸 Won three straight collegiate events in the fall
And a swing you have never seen before. 😯 pic.twitter.com/rdoMo4NwS7
もちろん,僕がここで引用するのは野村タケオ氏。
僕のスイングはたぶんめちゃ手打ちで格好悪いかもしれないけど、格好良いスイングを目指してるんじゃなくて、スコアを出すことを目指してるんだな。今後もスイングはいろいろと試行錯誤したいと思うけど、見た目はどうでもいいです。
— 野村タケオ (@nomtak) July 8, 2019
たまにどっかのコメント欄とかに「こいつのスイングYouTubeで見たことあるけど、あのスイングて本当にシングルなのかよ」とか書かれますが、そんなこと言ってる時点で、その人のゴルフのレベルが分かる。スコアはスイングの綺麗さじゃないからね。
— 野村タケオ (@nomtak) July 8, 2019
野村氏,本当は自分のスイングの格好が気になってしょうがないんだろうな,というのが読み取れるツイートです。こういう人たちってどういうわけか,「見た目よりスコアだ」という割には,最後に「カッコいいに越したことはないけどさ」って付け加えるんですよね。
さらには,ゴルフライターでシングルハンデの児山和博氏も乗っかってきた。*2
一般アマチュアがカッコいいスイングするのはほぼほぼ不可能。ほとんどのゴルファーはその不可能性に挑戦してはね返されている。
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 8, 2019
別に「ほぼほぼ不可能」ではないでしょ。そもそも誰かに習っているゴルファーが2割とかそういう世界の中で,自己流で「カッコいいスイング」に到達するのが難しいだけじゃないか。まぁ習ってるだけで「カッコいいスイング」に到達できるわけではないけど。
スイングを良くしようとするのはやめようという事ではなくて、見た目にこだわるよりも再現性をあげたり悪い動きを減らした方が現実的ということです。 https://t.co/9ymDbNdBRV
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 8, 2019
このツイートに限らず,この議題になると議論が混乱しているように思えるのがまさにこれで,「再現性をあげたり悪い動きを減らした」りするのは最終的に「カッコいいスイング」につながっていくと僕は思っているのですが,どうも「スイングを良くする」ことが「形をなぞる」ことの同義になっているんじゃないか,ということ。教科書的なスイングのスナップショットを見て,点で形を真似るというか。
その意味では癖のある動きを活かすのもあり。クセを活かせば再現性が高まるので、形だけきれいに見えるスイングよりもずっといい。
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 8, 2019
ほら,ここで「形だけきれいに見えるスイング」って言ってるでしょ。「クセを活かせば再現性が高まる」のはその通りだと思うけど,逆に言えばそれは「comfort zone」から出ないことも意味する。
ちなみに5年前の私のスイングがこちら。ハンデ10くらいかな。ヘタクソではないですが、たまに70台出るかなというゴルファー。今ならもてはやされたかもw pic.twitter.com/8upsS6RiRz
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 9, 2019
「これでは80切れても70は切れないなあ」という思いがあり、次の年に大本研太郎プロのコーチを受け始めました。
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 9, 2019
おかげでするっと壁を超えられました(´ω`) https://t.co/pU4lGVoRuw
ほら,結局は「壁」があるじゃん。あと,「形だけきれいに見えるスイング」をクサすのであれば,ヒールアップとかトップの高さという点だけを見て「ほらウルフと似てるでしょ」的なことを言うのもクサされるべきではないでしょうか。
みたいなことをマシュー・ウルフを見て思いました。シャフトクロス、過度のヒールアップといわゆるよくない動きはあれど、再現性は高いし飛距離も出る。
— コヤマ カズヒロ (@ebird0214) July 8, 2019
同様に,「シャフトクロス、過度のヒールアップといわゆるよくない動きはあれど」というように,スイング動作の中のポイントだけを見て「よくない動き」と決めつけるものこれまた思考停止であり,「形だけきれいに見えるスイング」を目指すのと似たようなものだと思うんです。
その児山氏が書いた記事がこちら。
超独特スウィンガー・ウルフに学ぶ「個性のススメ」 (1/2) - みんなのゴルフダイジェスト
ここで何度も何度も「個性的」って書いてるけど,ウルフのスイングってそんなに「個性的」かなぁ? 全体的には最新のスイング理論(あるいはGGスイング)に沿っていて,ただ切り返し前後の前腕の動きが大きいだけでしょ。せっかくティーチングプロの石井良介氏はいいことを言っているのに,されが最終的に児山氏の思考の枠の中に収められて,「個性派スイング万歳」みたいな結論にメッセージが矮小化(とあえて言おう)されてしまったのは,すごくもったいない気がするというか,これが文筆の限界というか。
彼の地USでもウルフのスイングは当然のように話題になっているんですが,本質をついている議論ってあまり見かけないです。
People often ask me how Matt Wolf can hit the ball with that swing.
— LKD (@LukeKerrDineen) January 31, 2019
My response: Because you don't hit the ball with your backswing. pic.twitter.com/T1U3dEAZlc
これも,「あんなスイングでウルフはなんでボールを打てるの? に対する僕の回答は,『だってバックスイングではボールを打たないから』」とか言ってて,もっともらしく聞こえるけど,それだけじゃないでしょ。
だいたい,バックスイングがどうでもよかったら,どうしてバックスイングなんて存在するのか。だったらトップの位置からスイング始めたっていいでしょ。でもそうしないでしょ。だからやっぱりバックスイングには意味があるし,その動きの中に「正しさ」は存在する。正しさというか,ありうべきインパクトにつながりやすいバックスイング動作の中の要素が存在するというか。
マイナス+マイナス+マイナス+マイナス+マイナス=プラス
という時流に乗ってか乗らずか知りませんが,ムジークのブログでタイミングよくこんな記事がありました。
こうやってゴルフは壊れていくのです。解析の功罪。 | ムジーク裏ブログ
要するに,「個性的なスイング」であっても,複数のマイナスの要素が絡み合って結果がプラスに出ることもある,そこでへたにスイングとかインパクトの解析なんかしちゃうと,個々のマイナスの要素を変えたくなって全体が崩れる,という話ですね。
このへんがスイング改造の難しいところで,「成長のU字曲線」じゃないですけど,改造に取り組むと,必ずどこかで現在のパフォーマンスよりレベルが下がるポイントが訪れる。それが最大のジレンマというかハードルで,教える側はそれをいかにマネージするかだし,教わる側も根気が必要だし,あと教える側と教わる側とのあいだで信頼関係が必要だし……,というところですかね。
結局何がいちばん言いたかったかといえば,冒頭のなぞなぞです。
*2:そもそもこの児山氏,「パッシブトルクとか地面反力には反対派」だそうで,この人のゴルフスイング理論に対する理解にはちょっと納得しかねるものが個人的にはあります。