Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

機能と美しさ

井上透の本は満足できない内容でしたが*1,その中でひとつ,同意できる箇所がありました。

東大ゴルフ部の監督をつとめる井上が,「入部後にゴルフを始める部員が多いため,型からの指導を行ないます」と述べたあとで,

機能と美しさは,別々に考えるものではないのです。ですから初心者もまず型から入ること,それこそが上達への正確な筋道なのです。(p.17)

と言い切ったところ。

なぜわざわざこれを持ち出したかというと,こんなツイートを目にしたからです。

イラストレーターで「ゴルフバカ」で筋金入りのアーリーリリースで70台のスコアを普通に出す野村タケオ氏。ご自身のおっしゃる通り,「ブサイクなスイングでスコアを作れ」ていらっしゃいます。

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なんですが,これって普遍的じゃないでしょ。つまり……,

僕の信念としては,美しいスイングはすなわち機能的なスイングであり(井上透のスタンス),それは再現性の高いスイングであり,所与の身体能力の制限の中でヘッドスピードのより出やすいスイングである。ヘッドスピードの速さとハンデキャップの低さには相関関係がある*2。それゆえ,美しいスイングを目指すことはスコアを作るための効率的な方法である。逆に言えば,ブサイクなスイングで(その再現性を高めて)スコアを作るためには,それなりの練習量と経験が必要であり,「スコアを作る」という目的に対して効率的な道だとは思えない。あるいは,ブサイクなスイングでスコアを作れているのは例外的(データ的にアウトライヤー)なだけかもしれない。または,ブサイクなスイングを美しいスイングに変えれば,もっといいスコアがもっと容易に作れるのかもしれない。

分かりますよ。スイングを変えることの困難さ。それに伴うスコアの低迷。その結果得られる追加的効果(マージナル・エフェクト)の大小。それらを全部勘案すると,「どんなにブサイクなスイングでもスコアが作れればいいです」という,自己肯定的な発言につながるであろうということは。(野村氏って三觜氏に習ってから,ハンドファーストなインパクトを身に着けようと一時期努力されてたんじゃなかったでしたっけ。その結果この発言だとしたら,その努力を放棄した上での諦めというか開き直りというか,そういう風にしか読めない)

……といろいろ言ってますが,こういうのは個々人の思想と嗜好とスタイルの問題なので,外野がとやかく言う筋合いのものではないのは承知しています。ただ何というか,少なくともこれからゴルフを始める人,あるいは始めたばかりの人が,こういう発言を真に受けないで欲しいなぁとは思うわけです。

あと最後に。僕がこういうことにこだわるのは,大学で数学を学んでいたというバックボーンが大きいと思っています。シンプルで優れた論理構成に「美しさ」を見出す,そういう世界観です。