ペブルビーチで開催された,2023全米女子オープン。最終日最終組で登場した畑岡奈紗は,こんな服装でコースに姿をあらわした。
Twitter民もこれに対してさすがにザワついていたように思うけど,これに関して自分の思ったところを書き残しておくのも,なにがしかの意味があると思いたい。
〈ユニオンジャック〉というcontroversiality
〈全米〉女子オープンでなんでユニオンジャックなんだって話があるけど,仮にこれが〈全英〉だったとしても,
- そもそも母国以外の国旗(をモチーフにしたもの)を身につける,ということに対する違和感
- ユニオンジャック自体が政治的にcontroversial
という意味では,違和感はぬぐえなかったと思う。これでさらに〈全米〉で,という要素が加わるので,なんともまぁ。
一点目に関しては,線引きが微妙なところがある。たとえば,テニスの全仏で錦織圭はトリコロールを取り入れたユニクロのウェアを着ていたことがよくあったと思うけれど,あれは〈旗〉そのものではなく〈三色〉を取り入れただけなので,そういう意味ではなくはないという気はした。(とはいうものの,「全仏だからトリコロール」という発想自体は安易だと思うけれど,それはまた別問題。)
で,二点目。こっちの方が,個人的にはひっかかる。
たとえばアイルランドのコースをめぐっていたときに印象的だったことのひとつは,クラブハウスの前に掲げられていた旗。アイルランドとUSとEUROの旗は掲げられているけれど,ユニオンジャックはない。という事実が,両国の歴史に横たわるの闇――UK側の問題ではあるんだけど――を象徴している。
スコットランドの独立に関する住民投票があったとき,ユニオンジャック🇬🇧は当然〈No〉を突きつける対象であったわけだし,Ashkernish *1 に行ったとき,現地の子供が〈Yes〉のバッヂを普通に身につけているのが印象的だった。
イングランドの田舎町にいくと,家の前にユニオンジャック🇬🇧の旗を掲げている家と,セントジョージズフラッグを掲げている家とに分かれているのも印象的だった。スコットランドにいけば,そこは当然セントアンドリュースフラッグでしかない。ユニオンジャックは逆説的に,UKという国の〈United〉しきれていない部分の表象になっていると思う。
流行り言葉で言うならば,このユニオンジャックウェアは〈文化剽窃〉と言えるかもしれない *2。しかもそれをUSのナショナルオープンの最終日(のしかも最終組)に当ててくるあたりが,なんとも絶望的というか,決定的にセンスがないなと思った。
ついでにいうと,僕ら日本人がユニオンジャックに抱くイメージって,1960年代あたりのロンドンカルチャーなんじゃないかなと。それをマーケティング的に活かしているのがPaul SmithとかMINIみたいなブランドだと思ってるんだけど。も,ロンドン=イギリスではないし,ロンドン=イングランドでもない。そういったことはBrexitの国民投票があったときに強く感じたことだけど,そんなことも思い出したりした。
*1:イギリスゴルフ #52, 53|スコットランド遠征|Askernish Golf Club|オールド・トム・モリス設計,失われそして再発見され復元されたコース - Linkslover
*2:山下達郎がジャニーズ問題を見て見ないふりをしたことに対して,「ヤマタツは黒人音楽の〈文化剽窃〉をしただけだ――黒人音楽に内包されている社会性,社会の問題に対して声を上げるという部分は無視しているという意味で――という意見を目にしたけれど,そこまで行くと〈文化剽窃〉という言葉の意味もだいぶ広いなとは感じた。本件には直接関係はないけれど。