Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

噂の『Phil』を読んだ

噂のこの本を読みました。

著者はアラン・シプナック。マキロイに「ただのゴシップライターでしょ」と言われつつも*1,もしかしたら最高のゴルフゴシップライターかもしれない人。2018年のライダーカップを前にシプナックがUSチームの勝利を予想するコラムを書いて,結局ヨーロッパチームが大勝し,大会後の記者会見でマキロイに「それで,アラン・シプナックはどこにいる?」と名指しされた人*2。この(非公認の)伝記を書くよとフィルに伝えたら,「伝記を書いてもらえるのは光栄だけど,それを君に書かれるのは問題だ」と言われる人。まぁいろいろある人なんですけど,ゴルフジャーナリズム界では圧倒的な存在感,情報量,そして行動力なんですよ。

そういえば最近も,LIV Golfの記者会見からつまみ出されていたようだし。

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そんな人が書く本だから面白くないわけないんだけど,その対象であるフィル・ミケルソンという人がまた,われわれの想像を遥かに上回る複雑な人間性だということがよく分かりました。圧倒的にポジティブな性格。多動性ともいえるアクティブネス。例のサムアップに象徴されるようにファンサービスはするけれど,聞こえないように観客をディスってたり。人から注目を集めるのが大好き。ギャンブルも大好き。無名のツアープレーヤーには,冗談とも嫌味ともつかないようなことを平気で言ったり(本人は冗談のつもりらしいが)。ながらくフィルのキャディーをつとめたBonesも「フィルのことはよくわかんね」って言ってるらしい。そのBones,本来ならマスターズ優勝時にはキャディーは18番ホールのピンフラッグをもらうのが伝統になっているらしいが,フィルはBonesに渡さずに自分の親とかに渡したらしく,それとかギャラの支払いとかでもめてキャディーをやめることになったらしい。

とかね。とにかくフィルのそういうポジティブでマジカルな面とダークな面とかどばっと詰め込まれていて(とくに冒頭のチャプター),ほんとBonesじゃなくても「なんなんだこの人は」って感じ。ただニック・ファルド(だったかな)が言ってるけど,テレビでコメンテーターするときにジム・フューリックの組だとクソつまんねー(原文でもF***ってなってる)けど,頼むからフィルの組につかせてくれ,って思うらしい。

本書でタイガーとフィルの比較がちょいちょい出てきて,それも面白い。チャールズ・バークレー(だったかな)が「タイガーはすごいプレーヤーだけど,一緒にいてもつまらない。フィルもたいがいな人間だけど,一緒にいると間違いなく楽しい」みたいなこと言ってる。あるいは「フィルはギャンブラーだけど,タイガーは賭場。賭場が常に勝つことを,タイガーは知っている。」とかね。あと,ブッチ・ハーモンがタイガーのコーチを辞めたあとフィルのコーチになって,それでタイガーの攻略法をいろいろ授けたのが面白い。たとえばタイガーはグリーンで先にパットを終えて次のホールにさっさと向かう。そうするとギャラリーたちもついてくるから同伴者はパットに集中できなくなる,とか。タイガーのやっているそういう姑息な技をブッチがフィルに伝えて,それからフィルは対処できるようになったとかなんとか。

ってな感じで,めっちゃ面白かったです。