あいかわらず面白いスタッツをいろいろと紹介してくれている「15th Club」です。タイガーとケプカとのつばぜり合いになりそうな気もするし,ダークホースが現れそうな気もするし,ミケルソンが暗躍するかもしれないし。週末が楽しみですね。
ソース
Previewing the PGA: Can Tiger Really Do It Again? - 15th Club by Justin Ray, 14 May 2019
拙訳
20年も経たないあいだに,Bethpage Black で3度目のメジャー大会が開催される。2002年の全米オープンは,タイガー・ウッズとフィル・ミケルソンが1位と2位で終えた,唯一のメジャーだ。2009年の全米オープンは悪天候に悩まされ,月曜日にずれこんだ最終日にルーカス・グラバーが自身唯一のメジャータイトルを獲た。
2019年の PGA Championship は,1949年にバージニア州 Hemitage Country Club での大会以来の,5月開催となる。サム・スニードが Johnny Palmer を火曜日の決勝で「3 and 2」で下して以来だ。
この新しいスケジュールと魅力的なコースは,PGA Championship への期待を早くから高まらせていたが,プレーヤーに目を配ってもいろいろと興味深い。ブルックス・ケプカはメジャーでの強さを再び発揮するか? フランチェスコ・モリナーリはマスターズ最終日の屈辱を晴らせるか? ジョーダン・スピースはキャリアグランドスラムを達成できるか? それからもちろん,タイガー・ウッズは記録更新に向かってメジャー勝利数を増やせるか?
タイガーと BETHPAGE
2002年,タイガー・ウッズは Bethpage で開催された全米オープンに,マスターズタイトルを手にして,世界ランキング1位の称号とともに登場した。当時ランキング2位だったフィル・ミケルソンとのポイント差は,約6.5。その差は,ミケルソンとランキング41位の Jesper Parnevik との差に等しい。
タイガーはすでに,3つの異なる会場で複数のメジャータイトルを手にしている。オーガスタナショナル,メダイナ,そしてセント・アンドリュース*1。Bethpage に勝利すると,彼はまだ自身が成し遂げていない偉業を達成することになる。マスターズとPGAとの同一年制覇だ。最後にこれを達成したのは,1975年のジャック・ニクラウス。
ジャック・ニクラウスといえば,彼がプロとして迎えた76回目のメジャー大会が,1980年にニューヨーク州 Oak Hill で開催されたPGA。ここで彼はメジャー17勝目をあげた。面白いことに,今週タイガーはプロとして76回目のメジャー大会を,ニューヨーク州で開催されるPGAで迎えることになる。
タイガーはPGAツアーでGIR(パーオン率)トップとして5月を迎えたわけだが,これは彼にとって3回目のこと。過去2回は,2002年と2008年。その両年で,タイガーはシーズンふたつめのメジャー大会を制している。いずれの全米オープン。2002年の全米オープンはもちろん,Bethpage Black での開催だった。
タイガーが直前のメジャーから他の大会でプレーすることなくメジャー大会を迎えるのは,プロになってこれが7回目。直近では2013年,全米オープンと全英オープンとのあいだに大会出場はなかった。Muirfield で開催されたこの全英オープンでタイガーは6位タイの成績。しかし,過去6回中2回は勝利している。1999年のPGAと2008年の全米だ。
43歳のタイガー・ウッズに,彼が20代や30代のころのような活躍を期待するのは心惹かれる話だが,そう簡単ではない。過去には Julius Boros と Old Tom Morris のふたりだけが,43歳以上で複数のメジャータイトルを手にしているが,同一シーズンで成し遂げてはいない。同一年に複数のメジャーで勝ったプレーヤーの最高齢は,1998年の Mark O’Meara。マスターズと全英オープンを制した彼は,当時41歳だった。
しかし今のタイガーに「奇跡」を期待するのは,罪深いながらまっとうなことでもある。もし今週タイガーがPGAを制するとメジャー大会連勝となるが,これはタイガーにとっては6回目となる。現代ゴルフでメジャー大会連勝を複数回成し遂げたのは,ベン・ホーガンのみ。かれはこれを3回行なっている。
ダークホースの勝利は?
「ぽっと出」のプレーヤーがメジャーを勝たなくなって久しい。過去29のメジャー大会で,優勝者はすべて世界ランキング50位以内に位置していた。50位圏外から優勝した最後のプレーヤーは,2011年のキーガン・ブラッドリー。Atlanta Athletic Club で開催されたPGAを,彼はランキング108位で迎えた。世界ランキングが1986年に始まって以来,これはもっとも長い現象。これより前に世界ランキング50位以内のメジャー制覇が続いたのは,1990年台序盤から中盤にかけての「14」というのがあった。
さらに詳しくこれをみると,過去19のメジャーのうち18回で,優勝者はランキング25位以内にいた。唯一の例外はジミー・ウォーカー,2016年のPGAでランキング48位。さて,Bethpage ではどうなるか? ここで開催された前のメジャー,2009年の全米オープンでは,ランキング71位のルーカス・グラバーが勝利を収めている。
注目のプレーヤー
- ブルックス・ケプカは2017年以来,メジャーで平均1ラウンドあたり「2.87」の strokes gained。この間,87のプレーヤーがメジャーで15ラウンド以上しているが,その中でケプカは2位のファウラー「2.36」に0.5打の差をつけている。ケプカのメジャーでのパフォーマンスについて,詳しくはこちら→ブルックス・ケプカはあなたが思っているより遥かにすごい|15th Club - Linkslover
世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン。先のマスターズではケプカと並んでタイガーに1打差の2位タイだった。直近でDJがプレーしたのは Harbour Town。このときのDJは3日目を終えて首位だったものの,最終日に「77」で最終的に28位タイに終わった。たぶんご存じないと思うが,DJは現在,strokes gained putting でPGAツアー5位。このカテゴリーで自身のシーズン終了時最高位は,昨年の25位だった。
マスターズでは残念な結果に終わったロリー・マキロイだが,自身最高の状態でPGAを迎えることは間違いない。今年9大会に出場し,トップ10入りを逃したのはマスターズだけだった。ヨーロピアンプレーヤーでPGAを複数回制しているのは,マキロイ(2012年と2014年)を含めてただふたり。その前は,Jim Barnes が1916年と1919年に勝っているだけだ。
マキロイにとっては30歳になって最初のメジャー大会。過去10年で,マキロイは以下のスタッツで1位の成績を残している。トップ5入り12回,トップ10入り18回,アンダーパーのラウンド76回,60台のラウンド50回,バーディー&イーグル数543個,そして勝利数4。
フランチェスコ・モリナーリは先のマスターズでボギー以下のホールがわずか4つだった。過去30年のマスターズでは最少の数字で,これに並ぶのは2009年のスティーブ・ストリッカーのみ。直近のメジャー3大会で,モリナーリの1ラウンド平均のボギー以下ホール数は1.42。このスパンに8ラウンド以上プレーしたゴルファーの中では断トツに少ない数字だ。2番目はウェブ・シンプソンの1.83。
モリナーリ,ケプカ,タイガーが直近3大会で活躍しているあいだ,ひとりの若者がメジャー初制覇に向けて虎視眈々とプレーしていた。ジョン・ラーム。直近メジャー2大会で通算21アンダーパー。2018年PGAでは4位タイ,先月のマスターズでは9位タイだった。この2大会での通算成績がラームより良かったのは,ケプカ(-28)とタイガー(-27)ただふたり。モリナーリはラームと同じ21アンダーだった。
フィル・ミケルソンがメジャー大会で11回した準優勝のうち,2回はPGAで起こっている。また,うち4回はニューヨーク州で,それは2002年と2009年の Bethpage での全米オープンを含む。Bethpage で過去2回行なわれた全米オープンで通算成績がアンダーパーなのは,ミケルソン(-2)を含めてふたりだけ。他にはタイガー・ウッズ。
*1:それぞれ,1997年・2001年・2002年・2005年・2018年のマスターズ,1999年と2006年のPGA,2000年と2005年の全英