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1にコースで2に道具,3・4がなくて,5にスコア

Broadie『Every Shot Counts』|日本語訳のタイトルは『ゴルフデータ革命』

「パット・イズ・マネー」はもう古い?』で触れた Mark Boradie の本。コロンビア大ビジネススクールの教授が,従来のスタッツ(フェアウェイキープ率だのGIR=パーオン率だのパット数だの)では捉えきれない,新しい指標「strokes gained」を用いて,スコアメイクにつながる本当に大事な要素を明らかにする。プロゴルフの見方が変わるだけでなく,アマチュアゴルファーのコース戦略やロースコアにつながること間違いなし……,ってな内容。

これはネタの宝庫でございますよ。随所にルーク・ドナルドに関する記述が出てくるので,ルークのファンはなおさら必読だと思われる。そして,この本の日本語版を出すのであれば,翻訳をしたい!

抜粋
  • ルーク・ドナルドのコーチであり,ノースウェスタン大学のヘッドコーチであるパット・ゴス(Pat Gos)は,ゴルフの分析の力を信じている。しかし,自分のチームのゴルファーたちに,伝統的なスタッツはつけさせていない。
  • この本は,「strokes gained」というアイデアの根底にあるものを説明する。
  • この本は,ゴルフコースにおいてどのような戦略をとることで,スコアを下げることができるかをお見せする。
  • ゴルフライターの Bill Pennington いわく,「何が自分のパフォーマンスを下げているのか,アベレージゴルファーはそれを評価するのが恐ろしく下手である,というのは,疑いようのない真実である」と述べている。
  • 2011年以来,著者はルーク・ドナルドおよびコーチのパット・ゴスとともに,ルークのゲームの分析に取り組んできた。
  • エドアルド・モリナーリは自らコンピュータプログラムを書いて,strokes gained を計算している。パッティングだけではなく,自らのすべてのショットについて strokes gained を算出している。
  • "Drive for show and putt for dough"(ドライブ・イズ・ショー,パット・イズ・マネー)という格言は,南アフリカの名ゴルファー Bobby Locke (1949年から57年に4回全英を制覇)に起因する。
  • 「ドライバーの失敗は取り返すことができるが,パットの失敗は取り返せない」という格言は,パッティングの価値を過大評価している。
  • 1986年のマスターズ17番ホールで,46歳のジャック・ニクラウスは優勝をたぐりよせる18フィートのバーディーパットを決めた。2008年全米オープンの最終ホールで,タイガー・ウッズはプレーオフ進出を決める12フィートのバーディーパットを決めた。こうした例を見ると,パッティングは他のショットに比べて重要であると思われるが,これは confirmation bias(確証バイアス)かもしれない。
  • 1972年にペブルビーチで行なわれた全米オープンの最終日,ジャック・ニクラウスは218ydの17番パー3ホールで1番アイアンのショットをピンから1フィートにつけ,18回目のメジャータイトルを確実にした。1950年にメリオンで開催された全米オープン,最終日の最終ホール,プレーオフ進出にはパーが必要だったベン・ホーガンは,1番アイアンで放った2打目をピンそば40フィートにつけパーセーブし,そして翌日のプレーオフで優勝を決めた。
  • PGAツアープロは1ラウンド平均で29パット,71ストローク。パットは全ストロークの約40%を占めてはいるが,それがそのままパッティングの重要度を示しているわけではない。なぜなら,29パットのうち9パットは,カップから2.5インチ以内からのものであるから(プロはその距離のパットは99.5%以上の確率で沈める)。
  • 陸上の800m走の勝負が最後のホームストレッチで決まるからといって,その前の750mの走りが重要でないということにはならない。
  • PGAツアーの大会優勝者の1ラウンド平均のスコアとフィールドの平均スコアを比べると,パッティングによるのはその差のうち35%,残り65%はグリーン外でついている。
  • 2012年のルーク・ドナルドや2011年のビル・ハースはパッティングによる貢献度が70%以上。一方,2006年や2008年のタイガー・ウッズや2006年のフィル・ミケルソンは35%以下。2008年のビジェイ・シンに至ってはパッティングによる貢献度がマイナス。
  • 平均以下のパッティングで優勝することは可能だが,平均以下のボール・ストライキングで優勝することは非常に難しい。
  • 2008年にベイ・ヒルで行なわれたアーノルド・パーマー・インビテーショナルの最終日,タイガー・ウッズは最終ホールにバーディーが必要なところで24フィートのパットを決めて優勝した。しかしその日の10番ホールで,タイガーが残り7フィートから3パットをしている。もしここを2パットであがっていたら,最終ホールは2パットのパーで済んでいた。
  • 2004年から2012年にかけて,ルーク・ドナルドはフィールドに対して平均1.8打差をつけているが,このうちパッティングによるのは0.7打(貢献度は39%)。パッティングの貢献度としてはルークが1位。トータルのスコアではタイガーが1位だが,タイガーのパッティング貢献度は3位,グリーン外の貢献度が1位。
  • 平均スコア80のゴルファーと平均スコア100のゴルファーのスコアの差の85%は,グリーン外のショットから来ている。
  • それだけでなく,ベストなプロと平均的なプロとの差,プロとアマチュアとの差,トップアマチュアと普通のアマチュアとの差,それらの差のうち15%はすべてパッティングに起因し,残り85%はグリーン外に起因する。
  • もし,ゴルフにおける各ショットのクオリティを「打数」という単位で計測することができれば,ドライビングとパッティングという,性質の違うふたつのショットの質を同じ土俵に並べることができる。これが「strokes gained」の基本的なアイデア。
  • 1ラウンドあたりのパット数のようなスタッツは,そのゴルファーのパッティングの上手さをとらえることはできない。なぜならそれは,各パットの距離を考慮に入れていないから。
  • PGAツアープロの距離別の平均パット数は,2フィートで1.01,5フィートで1.23,10フィートで1.61,30フィートで1.98,60フィートで2.21。
  • 8フィートからのパットの成功率は,PGAツアープロの平均で50%,ルーク・ドナルドは57%。
  • 統計によると,PGAツアーの中でグリーンが難しいコースはペブルビーチとウェスチェスター。
  • Strokes gained putting の指標で判断すると,2004年から2012年にかけてPGAのツアーでの最高のパットの名手はルーク・ドナルド。
  • 各パットの strokes gained とは,ホールアウトに要するパット数の平均の減少から1を引いた数字。すなわち,もし残り33フィートから打ったパットが残り8フィートにつけたら,ホールアウトに要する平均パット数は2.0から1.5に減ったことになる。つまり,1打のパットにより,0.5打分ホールに近づいたことになるから,このパットによる strokes gained は 0.5引く1で「マイナス0.5」となる。
  • strokes gained の基本的な考えは,1970年代のGOLFマガジンの記事に似たようなアイデアが言及されたのが最初と思われる。
  • 平均スコア90のアマチュアがベストボールスクランブル,PGAツアープロがワーストボールスクランブルで6500ヤードのコースで対決した場合,コンピュータシミュレーションによると,両者の1ラウンドあたり平均スコアはいずれも78になる。
  • ルーク・ドナルドはワーストボールスクランブルで練習することがある*1
  • プロが100yd以内(ショートゲーム)を担当してアマがロングゲームを担当する組と,アマがショートゲームを担当してプロがロングゲームを担当する組が競うと(このフォーマットは Switcheroo とも呼ばれる),プロがロングゲームを担当する組の方が有利(コンピュータシミュレーションの結果によると)。もう一方の組のスコアとの差は,コースの距離が長いほど,あるいはアマチュアゴルファーのハンデキャップが増えるほど,広がる。
  • ショートゲームの専門家,フィル・ミケルソンのコーチなどとしても知られる Dave Pelz でさえも,(ロングゲームの方が大事という)著者の考えに賛同している。
  • スコアを手っ取り早く改善したいのであれば,ショートゲームの練習が効くのは間違いない。ロングアイアンの改善には時間と努力を要する。しかし,そのことと,スコアメイクにおけるロングゲームの重要性とを混同してはならない。
  • ホールの大きさ(直径108mm)が今より大きくなったら,得をするのはパットが上手いプレーヤーか,パットが下手なプレーヤーか。ルーク・ドナルドは「それはパッとが下手な人が有利(自らのパッティングの優位性が失われる)」と感じている。実際,シミュレーションの結果からも,そのことが証明される。
  • なぜホールの直径は108mm(4.25インチ)なのか? 1829年,Musselburghゴルフクラブの管理者が,そのへんにころがっていたパイプをホールカッターに用いた。それがたまたま4.25インチだったという理由にすぎない。それ以前はホールの大きさはまちまちだったが,1891年にR&Aが正式にルールとして採用した。
  • 2012年のロリー・マキロイは平均スコアで1位だったが,strokes gained driving で2位,strokes gained approach shots で2位,strokes gained short game で35位,strokes gained putting で73位だった。
  • 2013年のヒュンダイトーナメント,13番のPar4で,ジェイソン・デイはドライバーでのティーショットをチョロしながらもパーセーブした。このときの各ショットの strokes gained は以下の通り:
    • 1打目:マイナス0.7(残り394ydから残り278yd)
    • 2打目:マイナス0.5(残り278ydから残り62ydのバンカー)
    • 3打目:プラス0.4(残り62ydのバンカーから残り17フィートのグリーン)
    • 4打目:プラス0.8(残り17フィートからホールアウト)
  • 2004年から2012年のあいだ,上位40名のプレーヤーの平均スコアに対して,ドライビング(Par3以外のティーショット)の貢献度は28%,パッティングの貢献度は15%,残りのショットの貢献度は57%。
  • プロゴルファーにとって,飛距離は正確性より重要。アマチュアゴルファーにとって,スコアメイクのために飛距離は正確性よりさらに重要。
  • 飛距離の出るプレーヤーは,正確性の高いプレーヤーである。
  • マキロイいわく,「みんな『優勝するためにはショートゲームを磨け』っていうけど,まったくそうじゃない」。ニクラウスいわく,「マキロイに同意する。私はショートゲームを練習したことがない。パーオンが1ラウンドで15あって,Par5のいくつかで2オンできて,10フィート以内のパットをすべて沈められたら,チップショットを練習する必要なんかないだろ?」
  • 平均スコア90のアマチュアとプロを比べたとき,Par3ホールでは平均0.8打差,Par4ホールで平均1.1打差,Par5ホールで平均1.3打差がつく。
  • 「If you can't putt you can't score, but if you can't drive you can't play.」
  • 2010年,ルーク・ドナルドは total strokes gained で5位,strokes gained driving で175位だった。2011年,ルークはPGAとヨーロピアンツアーの両方で賞金王となったが,この年の total strokes gained は前年から0.75打向上,strokes gained driving は前年から0.5打向上していた。
  • プロにとっては5フィートのパットが最も重要。アマチュアにとっては4フィートのパットが最も重要。この距離を入れるか入れないかでスコアの差が出る。
  • 殿堂入りしているレイ・フロイドいわく,「スコアメイクできないいちばんの理由は,単刀直入に言うと,みんなプレーの仕方を知らないからだ。スイングの仕方とか,ボールの飛ばし方とかじゃなくて,ゲームの進め方を知らないんだ。もし,僕が君のスイング技術になったとして,僕と君とで勝負をしたとしても,100回のうち99回は僕が勝つと思うよ。なぜなら,僕は君よりゲームの進め方を知っているからね」
  • ひとつのショットに対してはひとつの結果しか出ないが,起こりうる結果の範囲と,それらの起こりうる確率を考慮に入れた上で,プランを立てる必要がある。
  • 右側がOBになっているPar4ホールを想定した場合,平均スコア80のゴルファーは,ターゲットをフェアウェイの左端にすることで,平均スコアは4.6になる。ターゲットがフェアウェイ中央の場合,平均スコアは4.7。
  • 同じ状況で,平均スコア100のゴルファーの最適なターゲットは,左のラフに数ヤード入ったところ。
  • プロゴルファーは,フェアウェイ中央にターゲットをおいた場合にOBになる確率は4%,最適なターゲットを狙った場合で0.7%,実際は0.5%。平均スコア100のゴルファーは,それぞれ15%,2.0%,14%となる。
  • 多くのアマチュアはOBとラテラルハザードを同じように扱って同じように避けようとするが,これは効果的ではない。
  • コンサバな戦略がベストな戦略とは限らない。
  • ティーショットで飛距離の代わりに正確性を求める戦略(ドライバーの代わりにロングアイアン等)は,結果的にスコアを落とすことになる。
  • Golf Digest の US Open Challenge は,タイガー・ウッズの「ハンデ10のゴルファーはUSオープンのコースで100を切ることはできない」というコメントに触発されて開催された。2008年,7600ydのトーレパインズ南コースにて。ハンデ8.1のとあるアマチュアはティーショットでハイブリッドを使う戦略をとったが,結果は114打だった。
  • 残りを80yd(などのウェッジでフルショットできる距離)に残す,いわゆる刻む戦略と,いけるところまでいって残りを30ydにする戦略を比べた場合,平均的にスコアがよくなるのは後者。2012年USオープン優勝のウェブ・シンプソンも,自らのデータを分析するうちに,この戦略に気づいた。
  • ベン・ホーガンいわく,「ゴルフとはいいショットのゲームではない。悪いショットのゲームなのだ。ベストを追求しない者が勝つ」
  • 平均スコア100のゴルファーは,1ラウンドあたりミスショットで9.7打落とし,ロングゲームで6.7打落とし,ショートゲームで3.0打落としている。
  • ゴルフはパッティングだけのゲームではないし,ドライビングだけのゲームでもない。全英オープンを3度制したヘンリー・コットンが言ったように,「Every shot counts.(すべてのショットが大事である)」