単純な話の割には,文章が長い。
ティーオフの時間とスコアには相関関係があるのか,という話で,まあ直感通りに早いティーオフほどスコアが伸ばしやすいという結論ではあるのですが,そこから少し膨らんで,ツアープレーヤーの中で誰が風に強くて風に弱いのか,風に強い(弱い)としたらその理由は何か,といったことにも触れているのが面白いです。
著者の Rich Hunt はPGAツアープレーヤーもクライアントにもつ統計学者。以下の記事にも出てきています。
PGAツアーでは,全体の最初半分に出る組を「早い組(early round)」,残り後半に出る組を「遅い組(late round)」と定義している。そうすると,以下の表にあるように,平均スコアは明らかに早い組の方が良いという結果が出ている。
5シーズンの平均では,早い組が平均0.163ストローク有利。0.163はわずかな差のように見るけれど,PGAツアーの賞金ランキングでは20位ぐらいの差に換算される。
で,早い組と遅い組との差を生む理由をふたつ考えてみる。風とパッティングだ。
No. 1 風
風は普通,正午あたりにいちばん強さを増し,そして明け方にもっとも弱くなる。以下は,2014年3月21日にフロリダ州オーランドに吹いた風速を計測したもの。日にちは任意に選んだ。
2013年,著者はツアープレーヤーと風に関する統計的調査をした。そこでの発見は,風速が12mphを超えると,明らかにスコアが増えるということだ。上のチャートが示すように,午前11時前後に風速は12mph以上に達しているが,実際には午後2時あたりに一貫して12mph以上になっている。
もうひとつ,風の影響を受けやすい・受けにくいプレーヤーに関する調査も行なった。どのプレーヤーも風速が増せばスコアも増えるが,より風の影響を受けにくいプレーヤーというのもいる。
風に強いプレーヤーは,
- Stuart Appleby
- Brian Harman
- Chris Kirk
- Matt Jones
そして風に弱いプレーヤーは,
- John Daly
- Keegan Bradley
- Bill Haas
- Hunter Mahan
という結果だった。
テキサスやスコットランド,オーストラリアなど,風の強い地域で育った風に強いプレーヤーもいるが,そういった地域で育った風に弱いプレーヤーもいるから,風への強さ(弱さ)と育った地域はあまり関係ない。しかし,風に強いプレーヤーが共通して持っている得意なエリアというのがあって,それは75−125ヤードからのショットと,グリーン周りのショット。
つまり結論として,風が強いとパーオンが難しくなるので,グリーン周りからの寄せワンが大事になってくるということ。そしてもうひとつ言っておきたいのは,風が強まるとティーショットもオフラインになるので,3打目や4打目を75−125ヤードのエリアから打つ機会が増えるだろうということだ。
No. 2 パッティング
よく言われるのは,後ろの組になるとグリーンにスマイクパークや足跡がつくからパットが難しくなるということ。それを検証するために,個々のプレーヤーが早い組でプレーしたときと遅い組でプレーしたときとの平均スコアを比べてみた。
そうすると,早い組でプレーしたときにスコアが伸ばせないプレーヤーは,以下のエリアを苦手としていることが分かった。
- 175-225ヤードからのアプローチショット
- 250-275ヤードからのショット(3番ウッドでのショットだろう)
- パー4の平均スコア
ツアーでは,175-225ヤードからのショットというのは,ゲームの個々のパートの成功と最も強い相関関係がある。パー4の平均スコアは,パー3やパー5の平均スコアよりもはるかに,ツアーでの成功と強い相関関係を持つ。
一方で,遅い組でプレーしたときにスコアが伸ばせないプレーヤーは,以下のエリアを苦手にしている。
- 3−10フィートからのパッティング
- 3パットの確率
- Strokes Gained – Putting
- 100-125ヤードからのショット
100-125ヤードからのアプローチショットは,風に強いプレーヤーのところで見た通り。3−10フィートからのパッティングと,3パットの確率については,午後になるほどパッティングが難しくなるという説を支持するデータだろう。
著者の研究のその他のファインディングとしては,Strokes Gained – Putting の上位にいるプレーヤーは,ペブルビーチやリヴィエラといった,難コースでほどストロークをゲインしているということだ。ということで,Strokes Gained – Putting で下位にいるプレーヤーが,グリーンが難しくなる午後によりスコアを伸ばせないのは,驚くにはあたらない。
以下に,著者の研究からアベレージプレーヤーが示唆を得られるであろうポイントを箇条書きにする。
- 朝早いほどスコアを縮める可能性は高いのだから,恐れずにレイアップせずに打っていき,ピンを攻めていこう。
- もし午後にティーオフするなら,風がどうなるか事前にチェックしておこう。もし風速が12mph以上になりそうなら,ティーオフ前にウェッジショットとグリーン周りのショットに練習時間を割くほうがいいかもしれない。
- 同じく,もし午後にティーオフするなら,練習グリーンで多くの時間を割いて,上体が悪くなったグリーンにアジャストしておいた方がいいかもしれない。