Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

「パット・イズ・マネー」はもう古い?

前に書いた記事の続き。

Golfweekのサイトで,同じくMark Broadieの分析についての記事を見つけた。こっちの方が読み応えがあった。

Analytics show putting’s importance overstated | Golfweek by David Dusek, 1 March 2014

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Mark Broadie & Sean Foley

The pair were on the stage at the MIT Sloan Sports Analytics Conference to give a lecture called, "Every Shot Counts: Using Analytics to Improve your Golf Performance." A better title might have been something like R.E.M.'s 1987 hit, "It's the End Of The World As We Know It."

「パット・イズ・マネー,ドライブ・イズ・ショー」とわれわれが思っていた世界は,終わりを告げるかもしれないと。"The pair" というのは Mark Broadie と Sean Foley(ハンター・メイハンやジャスティン・ローズ,あるいはタイガー・ウッズのコーチとしておなじみ)のことで,このふたりが  "Every Shot Counts: Using Analytics to Improve your Golf Performance." と題したレクチャーを行なった……,というのでピンときたけど,このBroadie教授の本は,前から興味があったやつだった。

以下,長くなるけど,訳してみる。

拙訳

「ゴルフの世界での最大の誤解に取り組みたい」とBroadieは口火を切った。「伝統的に,ゴルフでいちばん大事なのはパッティングだよと言われている。まず私は,“いちばん大事”という言葉を,“試合の勝者と敗者とを,あるいは最高のプレーヤーと普通のプレーヤーとを分かつショットの数”という意味で使いたい」

留意したいのは,Broadieというのは,2011年からPGAツアーのスタッツとして用いられている strokes gained-putting (ツアー平均と比較してホールまでの距離別のパットの良し悪しをまとめた指標)を開発した人。(そのBroadie自身が,パットの意義は過大評価されているという発表をしたところが面白い)

2004年から2012年のあいだ,ルーク・ドナルドやタイガー・ウッズなどがstrokes gained-puttingの上位に来たが,これは驚くべきことではない。しかし,Jasper Parnevik や Brian Gay などもこのランキングで上位に来ているけど,彼らはツアーで勝っているわけじゃない。

strokes gained-putting を算出しているのと同じ方法論で,BroadieはPar4とPar5ホールにおけるティーショットの strokes gained-driving を開発した。さらに,ティーショット以外で残り100ヤード以上のショットに対する strokes gained-approach,パット以外の100ヤード以内のショットに対する strokes gained-short game も算出。これらを足し合わせて,total strokes gained が出る。

この指標(total strokes gained)では,2004年から2012年,タイガー・ウッズやジム・フューリック,フィル・ミケルソン,ルーク・ドナルド,ヴィジェイ・シン,アーニー・エルス,セルヒオ・ガルシア,アダム・スコット,スティーブ・ストリッカー,そしてザック・ジョンソンといった,われわれが日曜日のリーダーボードでその名前を目にするプレーヤーたちが,上位に来る。

Broadieによると,「詳細にみると,これらトップ10プレーヤーの平均で,1ラウンドあたり1.7打,フィールドとの差が出る」。この1.7打差の内訳は,ティーショットで0.3打,フェアウェイから0.7打,グリーン回りで0.4打。パットではツアー平均と0.2打差しかつかない。

「要するに,差の3分の2はロングゲーム(100ヤード以上),3分の1がショートゲームから生まれる」とBroadie。トップ10プレーヤーとツアー平均とのあいだとの差で,パットによるものはわずか15%というわけ。

2008年,タイガー・ウッズはBay Hillの最終ホールで24フィートのロングパットを決めた(アーノルド・パーマー・インビテーショナルかな)。確かに勝負を決めたのはパットだったけど,Broadieの分析によると,パットでついた差は1.1打。勝利をもたらした本当の要素は,2.5打差をつけたロングゲームだった。つまり4日間で,タイガーはティーショットとフェアウェイで10打差をつけた。「ドライブはショー,パットはマネー」っていうのは,明らかに違う。

「長年をかけてわれわれが引き継いだものの多くは,ノスタルジア」だとFoleyは言う。彼は教え子のプレーヤーに対する練習セッションを,Broadieが発表したようなデータにもとづいて組み立てている。「残り30ヤードからホールアウトまで,PGAの平均で2.52打かかる。110ヤードからになると2.71打。だけど,トーナメントの練習風景を見ると,多くのプレーヤーが40,50,60,70,80,90,そして100ヤードからのショットを練習している。基本的に,これは大いなる時間の無駄づかいだ」。

Broadieの新著『Every Shot Counts』は3月6日に発売され,Foleyがはしがきを書いている。Foleyいわく,この本にはアマチュアプレーヤーの助けにもなる,データにもとづいた情報がつまっている。カンファレンスでの発表と本の内容は全体的に近いけど,まったく同じというわけではない。「多くのアマチュアプレーヤーが,420ヤードのPar4で2打目をグリーンサイドバンカーに入れ,そこから出すのに3打かかってるのを見ている。アマチュアに関して言えば,もしかしたらいまだに30ヤード以内のショットに注力したほうがいいかもね」とFoley。