最近,クラブに対する知識欲が高まっていまして,その流れで買ってみました。
- 作者:松尾好員
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2011/07/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
著者は,かつてダンロップの従業員としてクラブの設計に携わり,その後独立された方。クラブに対する記事をいろいろ書かれているようですね。
http://golf.dunlop.co.jp/magazine/matuo/mat_index.html
http://www.golfdigest.co.jp/digest/column/gear/
さて,この本ですが,表紙を見た限りでは,「重心深度だトルクだ慣性モーメントだといった要素について,(イラストを交えて)解説していく」というものだと勝手に想像していたのですが,その期待は裏切られました(でも良書です)。
この本のスタンス,あるいは著者の考え方は,「はじめに」にある以下の文章に集約されていると思います。
もちろんスイングを直すことは大事なことですが,みなさんのようなアマチュアゴルファーが他人から見て劇的にスイングが変わり,良くなったと言われるのは大変難しいことです。私はスイングを治すことよりも,クラブに助けてもらうほうがよほど上達の近道だと思っています。
ただ,そうしたクラブに一歩でも近づくためには,クラブのことを知る必要があります。
今よりもゴルフが楽しくなるクラブの選び方を知っていただくとともに,クラブを選ぶことの楽しさも分かっていただけたら幸いです。
第1章は「設計家が答える 今どきクラブのQ&A」と題して,「自分に合っているクラブとはどういうクラブ?」「ウェッジはセットものと単品モデルのどちらがいい?」といった基本的な質問で,ドライバーからパターいたるまでのテーマが一通りカバーされます。
- スライスを軽減するためには,ヘッドが返りやすい小さめのモデルの中から,フックフェースのものを選ぶとよい
- アイアンのシャフトは,ヘッドスピードによってカーボンかスチールかを決めればよい。48m/s以上あるならダイナミックゴールド,40-43m/sぐらいなら軽量スチール,38m/s以下ならカーボン。
- ウェッジは,セットのアイアンより重いシャフトのついたものがお勧め
といった具合に,初心者には嬉しい具体的なアドバイスが,分かりやすい言葉で説明されています。
第2章は,「ドライバーとアイアンはトータルバランスで選ぼう!」。ポイントは「ドライバーからアイアンまでをすべて同じタイミングで振れる重さにすることが重要」で,ここでもヘッドスピードとドライバー及び5番アイアンの重量との具体的な目安が書かれています。この章では,ロフトやライ角,重心,バンス角,リーディングエッジなどなどといった,クラブ選びに必要な要素についても詳しく書かれています。目を引いたのは,「大ぶりなドライバーのヘッドと小ぶりなアイアンのヘッドの組み合わせは,スイングのタイミングを狂わす可能性があるので要注意」という記述でした。これってルークのセッティングでは……。
第3章は,「フェアウエーウッドとユーティリティーは弾道の高さで選ぼう!」。同じロフトのFWとウッド型UTとアイアン型UTで迷ったときはどんな基準で選ぶべきか,クラブが短くなるほど重くなるべきという基本原則,アベレージゴルファーに本当に3番ウッドは必要か?(それよりもウェッジを多くバッグに入れた方がよいのではないか?),FWもロフトが寝るにつれて(つかまりやすくなるので)少しずつフェースが開く設定にするのがお勧め,最大飛距離が出るアイアンと飛距離の重なるFWなりUTを入れるのがお勧め,といった,これまたタメになる記述が満載です。
第4章は,「ウェッジは重さから選ぼう!」。出っ歯なのにすべきかグースネックなのにすべきか(その選択のポイント),バンカーが苦手な人のサンドウェッジ選び,ウェッジの溝がバックスピンに与える影響,などが書かれています。また,アベレージゴルファー向けのアイアンセットはストロングロフト化が進んでいるのでウェッジの距離の打ち分けが難しくなっている,だからウェッジは4本入れた方がよい,ということが強調されています。
第5章は,「パターはパッティングスタイルで選ぼう!」。割かれているページ数は少なく,さまざまなヘッドの形状や打球音などについて書かれています。
最後の第6章は「チューンアップで使い勝手をよくしよう!」ということで,シャフトとリシャフトの話題だけではなく,ドライバーのフェースの向きやアイアンのライ角の調整,グリップの太さ,鉛での重さの調整といったテーマが解説されています。シャフトについての記述は個人的にもっと欲しかったところですが,トルクや調子といった基本的な概念を知ることができ,またリシャフトするにあたって優先順位をつけよう(まずは重さが大事),FWやUTもそれに合わせてリシャフトするとよい,といったことが分かってよかったです。
全体的に,書名通り「クラブ選びの基礎知識」が網羅されていたと感じましたし,とても分かりやすい文章でした(著者の人柄が感じられます)。ゴルフを始めてすぐに(クラブを買い始める前に)この本を読んでおけばよかったなぁと,つくづく思います。
以下の本と合わせて読むと,クラブに対する知識や好奇心がますます深まのではないでしょうか。
72で回るためのクラブ機能を生かす (72ヴィジョンGOLFシリーズ)
- 作者:「72ヴィジョンGOLF」編集部
- 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本