Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

ハンク・ヘイニー『オメーラ・レッスン:40歳を過ぎてもゴルフは上手くなる』

中井学の著書を批判した記事に対するコメントで教えていただいたのが,この本です。

「オメーラ・レッスン」と言っていますが,実際にはハンク・ヘイニーの本です。しかもヘイニーがオメーラに教えた内容ではなくて,ヘイニーのインストラクションに対する一般的な考え方・方法論が記されています。この本が出た当時(1999年)はオメーラの知名度の方が日本では高かったのでしょうか。

参考までに,原題は『The Only Golf Lesson You'll Ever Need』です。大きく出たもんですね。

ところで,ヘイニーの言っていることはシンプルかつ筋が通っており,「自分のインストラクションはきれいなスイングを目指すのではなく,弾道を見てスイングを矯正する」,「そのために大事なのはインパクト」であり,「身体の動きは,クラブを振るうえで,両手,両腕に仕事をしやすい環境を作るにすぎ」ない,そして「正しいスイングとは,ゴルフクラブの機能を十分に引き出すことを目的としている」。そしてベン・ホーガンの「モダン・ゴルフ」はすぐれた教本だったけど,その内容は正しくないし万能ではない。といったところでしょうか。

ということで,あえて中井学を蒸し返しますが,「手打ちと体打ちの論争」などというものもヘイニーに従えば不毛な争い(そもそもそれが「争い」と呼ぶに値する内容だったとして)でしかなく,打たれた球を見てどうスイングを矯正したいかに依るんじゃないの?ということですかね。で,さらに中井学はいたるところで「自分はアメリカでこう習った」ということを,自らの論の根拠としていますが,これまたヘイニーに従えば「米国の平均的インストラクター達はあまり優秀ではない」ということで……。

抜粋

  • 私の理論で最も重要なことは,よりよりインパクトのためのデザインです。
  • ゴルフとは,クラブフェースで打ったボールを,狙ったところへ運んでいくゲームです。だからすべてのプレーにおいてインパクトの影響は避けられないのです。
  • さて,スイングにおいて身体の動きが最重視される傾向がありますが,私の考えは違います。身体がしっかり回れば,クラブはスムーズに仕事をこなすでしょうか。身体の動きは,クラブを振るうえで,両手,両腕に仕事をしやすい環境を作るにすぎません。
  • 誤解しないで欲しいのですが,身体の動きが重要でないと言っているわけではありません。ボディターンだけでは正しいスイングは生まれないということ,そして正しいスイングとは,ゴルフクラブの機能を十分に引き出すことを目的としていることを理解して欲しいのです。
  • この本はハウツーものではありません。この本から得られること,それは正確なインパクトを支えるスイングのデザインなのです。
  • 心が痛いことですが,米国の平均的インストラクター達はあまり優秀ではないのです。数少ないトップクラスのインストラクターは雲の上の存在ですが,その中間層がアメリカにはいないのです。
  • 彼(ジム・ハーディ)からは,ゴルフの技術的な面はもちろん,ゴルフというゲームの本質を教わったと思っています。
  • スイングの矯正をすべてボールの飛び具合から判断する。この考えは今も私のベースになっているのです。
  • ミスのバランスを崩すことなく,いかにスイングを矯正するか。しかし,そんなことを考える以前に,自分の好みでスイングを直すコーチのいかに多いことか。
  • ベン・ホーガンがこう言いました。「上達の極意なら,土の上で探すべきだ」
  • 両腕を肩の付け根から真下に下げた位置で,上体を腰から20度前傾させると理想的なポスチャーが作れます。
  • 「ミスした時の感触が手に伝わる分,ブレードの方が」という人もいますが,この意見に私は何の意味も見つけられない。それよりも弾道が,あなたにスイングの内容を正直に教えてくれるし,またミスをミスと見破られない結果を選ぶことのほうが,スコアを競うゴルフでは,はるかにスマートな考えだからです。
  • これまで多くの出版物がスイングプレーンを扱っています。中でも有名なのが,ベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』でしょう。しかし的確に解説した文章はほとんどないといっていい。このことが多くの誤解と混乱を与え続けてきた原因なのです。
  • ホーガンのスイングプレーンは,アドレスで肩からボールを結んだ1枚のガラス板を想定。その直ぐ下,もしくはその架空のガラス板に沿ってアドレスからフォローまでのスイングを行なうというものでした。(……)だが,ホーガンの考えは決して正しくはなかった。
  • ジャック・ニクラウスを真似るのもよいでしょう。彼は常にボールの1ヤード先の目印にボディの各ラインを合わせます。
  • ボディが先か,腕の振りが先か。これは最近さらに大きな論争に発展しています。私の考えを先に述べると,この二つの考え方は,結局フックを矯正したいのか,スライスを矯正したいのか,という議論にすぎないということです。
  • ベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』は優れた教本です。しかし,タイトルがよくなかった。「モダン・ゴルフ」ではなく「フックを矯正するためには」とすべきだったのです。
  • スライスを直したいなら,バックスイングでボディの動きを大きくし,逆にダウンスイングから,手と腕をより意識して使うべきです。反対にフックと格闘しているゴルファーは,ダウンスイングでの手の使いすぎに注意すること。
  • アドレスで作った両腕とボディの「十分な距離」を,トップスイングでも保つこと――これがバックスイングからダウンスイングへ移行する切り返しの際に最も重要なポイントです。
  • ロングヒッターが,常に大勢のギャラリーを引き連れてプレーする理由は簡単です。信じられないような飛距離が感動を与えるからです。
  • 身体を目一杯使って強く振るのと,両手を速く振ることを同じものとして捉えているのが,誤解の原因です。身体は力まず,手と腕を速く振ることを心掛けてみてください。
  • フェースの向きはボールが最初に飛び出す方向です。
  • 「ショートゲーム」(グリーン周りからカップに沈めるまで)は,パット,チップ,ピッチの三つで構成されています。その中で最も信頼性の高いのがパット。次が弾道の低いチップショット。最後がピッチショットです。
  • ピッチショットになぜピッチングウェッジを使わないのか,と疑問に思っている人もいるかもしれませんが,私はクラブのネーミングのほうが間違っていると考えています。ピッチングウェッジはフルショットする時か,あるいはチップショットする時に使うべきものなのです。