Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

ヒップターン中井学の変節|その態度は煮えきらず,「プロとアマ」という二分法に拘泥している

いま日本でもっとも注目されるべきゴルフトレーナーのひとりである高野裕正さんのブログでこの本の存在を知りました。

その高野さんが

つい1年前まで腕は何もしなくてもいい、

と堂々と言い放っていた中井プロが

指導の軸を大変革されたのは

櫻井よしこさんが左翼に鞍替えするようものですよねw

と言ってたのでだいぶ期待したのですが,読後感はよくなかったです。

確かにこれまでヒップターンを散々推奨してきた中井学が,フェースローテーションの重要さを謳いだしたのは驚くべき変節だと思います。しかし一方で,依然として「でも本質的にはヒップターンが重要」と思っていることが随所にあらわれたり,これまでヒップターンを推奨してきたのが「アマチュアはある程度フェースローテーションができるものと想定していた」という言い訳をしていたり,「(自分のいるサイドである)プロはフェースローテーションをしすぎるからヒップターンを謳ってきたのであって」といったことを主張していたり。

みずから「贖罪」と言っている割には,本当はこの人は反省なんかしていないくて,なんとなくヒップターンの旗色が悪くなってきたから,表層的にフェースローテーションを言い出しただけなんじゃないか? 20年間の理論の集大成とかいいながら,そして数多くのアマチュアを指導してきたのでありながら,フェースローテーションの重要さに気付くのにこれだけ時間がかかったのだとしたら,よっぽど思い込みが強いか謙虚さがないか思考の柔軟性に欠けるかなんじゃないか? という印象を逆に抱いてしまうのでした。

「アマチュアのスイングが自然に,ではなくて,意識的に行わないとできないという現実を無視して,プロの目線からレッスンを押し付けた」などと言いながら,結局「バックスイング中にコックと呼ばれる手首の屈曲が自然に働きますが,特別に意識する必要はありません」といったように「自然にできる」という,考えすぎのアマチュアを苛立たせる言葉を自然に選んでしまうのが,この人の限界というか本質な気がするんですよね。本当な反省なんかしていないことの証拠というか。

あと本質ではないですが,「パットではストロークの軌道が少しくらいズレていても,フェースが真っ直ぐ向いていればカップインできるわけです。」と言ってますが,Pelzによればパッティングの方向性にもっとも影響を与えるのは軌道で,次にフェースの向きじゃなかったっけ?(訂正。インパクト時のフェース角はボールの転がり方向の70%を決定するらしい。)

以下,本書からランダムに引用。

  • 私のヒップターン理論が世に出てから,早いもので20年が経ちました。
  • 一般的にいってアベレージゴルファーの方々は,スイングの基本的な動きを複雑に考える傾向にあります。
  • 私の理論とは真逆に「腕をもっと振りなさい」と指導するインストラクターもいます。
  • 安易に手打ちの理論を否定すべきではないことも,レッスンの経験を通して痛感させられました。
  • プロとアマチュアを隔てる垣根の高さにショックを受けたものです。
  • プロたちのスイングが自然でほぼ無意識な動作なのに対し,アマチュアのスイングが自然に,ではなくて,意識的に行わないとできないという現実を無視して,プロの目線からレッスンを押し付けたのは私たちコーチの責任です。
  • アマチュアの方々は「クラブヘッドが返せていない」というひとつの結論に辿り着きました。
  • アマチュアゴルファーの中には,スイングを考えるのが大好きという方も多くいます。そうした方にしてみれば,「クラブヘッドが返せたらそれだけでいい」という私の言葉は衝撃的かもしれません。
  • 「腕や手を使う」ことを,スイング構築への入り口と考えてしまうちころに,スイングの質がいつまでも向上しない原因が潜んでいるのです。
  • 私がアメリカのカレッジにゴルフ留学していた頃から,アメリカでは「腕や手を使わず,体で振る」という理論が中心でした。
  • アメリカで見聞し,自分なりに分析して理路整然とまとめて世に発表したヒップターン理論ですが,日本の多くのアマチュアゴルファーにはちょっと難しかったかな,と最近になって反省しているところです。
  • 私自身,多くのアマチュアゴルファーが陥っている部分にもっともっと目を向けるべきでしたが,これでもう手打ちと体打ちの論争にピリオドが打たれるのではないでしょうか。
  • バックスイング中にコックと呼ばれる手首の屈曲が自然に働きますが,特別に意識する必要はありません。コックよりも両腕を回すことがより重要です。
  • バックスイングで両腕を時計回りに回旋させる際に,両腕を回すタイミングが早いとスイング軌道がフラットになり,両腕を回すタイミングが遅めであればスイング軌道がアップライトになるということです。
  • 極端な体打ちとは,アームローテーションをまったく使っていない状態です。それを体打ちと勘違いしている人も多くいます。
  • 左腕の屈曲はアームローテーションの一番の的といっても過言ではありません。
  • お陰様で私のヒップターン理論を実践して頂いているゴルファーが相当増えましたが,
  • 一般のアマチュアの方々が,ある程度はヘッドターンができているだろうという前提でヒップターンを提唱してしまったのは私の落ち度でした。
  • パットではストロークの軌道が少しくらいズレていても,フェースが真っ直ぐ向いていればカップインできるわけです。
  • インパクトの右足は「蹴り足」ではなく「踏み足」です
  • ダウンスイングからインパクトまではおヘソがまだ右を向いているイメージです。
  • 本書は腕や手をうまく動かせず,ヘッドターンができていない人たちを「置き去り」にしてしまったことへの贖罪でもあるのです。