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古屋晋一『ピアニストの脳を科学する:超絶技巧のメカニズム』春秋社

もちろんこの本はゴルフとは直接的な関係はないし,この本の内容自体(ピアニストの身体技法は脳科学的見地からどのように分析されるのか)に興味があって読んだのですが,同じ身体技法として,もしかしたらゴルフスイングにも何か参考になる点があるかもしれないです。

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム

  • 作者:古屋 晋一
  • 発売日: 2012/01/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

抜粋
  • 1990年代以降,脳を研究することを可能にするさまざまな実験装置や研究手法が開発され,世界中で,この分野の研究が長足の進歩をとげています。
  • 筋力の違いではないとすると,ではいったい,ピアニストの「超絶技巧」を可能にしているものは何なのでしょうか? 実は,ピアニストとそうでない人の決定的な違いは「脳」にある。そのことが,1995年頃から徐々にわかってきました。
  • 同じ速さで同じ指の動きをしているにもかかわらず,活動している神経細胞の数は,ピアニストのほうが,音楽家ではない人よりも少ないということがわかったのです。
  • 「ピアニストの脳は,たくさん働かなくても複雑な指の動きができるように,洗練されている」。
  • ピアニストの手指を動かす神経細胞は,長年の練習によって,複雑な指の動きを生み出しやすいように特殊な変化をとげていたのです。
  • 私たちの脳というのは,一般に「使えば使うほど増え,使わなければ減る」という性質を持っています。
  • たとえばオーディオのケーブルを高品質のものに変えると音質が良くなるように,脳の中のケーブルを包む鞘が発達すると,運動技能が向上するといったことが起こるのです。
  • 11歳までにおこなう練習は,すればするほど鞘を発達させるが,12歳以降は,練習をたくさんすれば鞘が発達する,というわけではないということです。
  • 最近では,自分の身体の動きを頭の中で鮮明にイメージすることによって,運動機能が実際に高まる,ということも知られています。
  • 両手を動かすときには,脳が左右両方が働いています。実はこのとき,左右の脳をつなぐ「橋」の役割をするところ(脳梁)を通って,脳から筋肉に送られる信号の一部が,反対の脳に漏れているのです。
  • ピアニストがピアノの音を聴いているときには,音を聴くための神経細胞だけでなく,なんと,指を動かすために働く脳部位の神経細胞も同時に活動していることがわかりました。
  • かのショパンも,「最良の先生は,自分の耳だ」という言葉を残しています。
  • 「楽器を弾けば弾くほど,耳が良くなって,わずかな音色やハーモニーの違いが聴きとれるようになり,音楽を深く繊細に感じられる」というわけです。
  • 学校教育の中で音楽の時間が減らされてしまうと,これまでは当然とされてきた子供の認知機能や感覚機能,あるいは言語機能などの発達に,思いがけない悪影響が出てくるおそれがあります。
  • いわば,楽譜の情報を「圧縮」することができるのです。
  • ピアニストにも3代疾病と言えるものがあります。腱鞘炎,手根幹症候群,フォーカル・ジストニアです。
  • ゴルフでは,パッティングのときだけ身体が固まって動かなくなる「イップス」という病気がありますが,これもフォーカル・ジストニアとの関連が指摘されています。
  • 現在主流になりつつあるのは,「不適切な身体の使い方や弾き方(ミスユース)が,演奏によって身体を傷める引き金となる」という考え方です。
  • 研究の結果,ピアニストのほうが,音楽家でない人よりも,遅筋が発達していることを示唆する結果が得られたのです。
  • 脱力というと,単に,筋肉を弛める,リラックスさせる,というふうに語られることが多いのですが,それだけでは身体はそもそも動きません。
  • ピアニストは,手を持ち上げるために収縮した力こぶを弛めることで,重力に任せて腕を落下させ,打鍵していたのです。
  • 脳にとっては,筋肉を収縮させるよりも弛めるほうが,大変な作業なのです。
  • ピアニストのほうが,初心者よりも,肩の筋肉(三角筋全部,大胸筋)の仕事は大きいということです。
  • これから鳴る音をイメージせずに打鍵すると,必要以上に強く鍵盤を叩いてしまうということです。
  • 指同士が独立に動かない原因は,腱同士や筋肉同士が結合していることだけではなく,脳の神経細胞同士も独立していないこととも関係しているのです。
  • 私たちの研究グループが用いた(モーションキャプチャ)システムは,アニメ『のだめカンタービレ』における演奏シーンのCGを作成する際にも使用されました。
  • 私たち人間の脳は,言葉を話しているときにも,次にどんな音を発音するかによって,あらかじめ口の動かし方を変えるということをおこなっています。
  • 脳が筋肉に「収縮しなさい!」と送る指令にはノイズが混ざりますが,その量は,筋肉が大きな力を発揮するときほど増えるという性質があります。
  • 「1日練習しないと自分が気づき,2日しないと批評家が気づき,3日しないと聴衆が気づく」
  • 鍵盤の加速のしかたによって,ハンマーのしなりかたが変わるので,ピアノの弦とハンマーが違った当たり方をする可能性が出てきたのです。
  • 音楽を聴いてゾクゾクするときに働く脳部位は,食事や,非合法ドラッグの摂取,性的な刺激によって快楽を感じるときに働く部位と同じだったのです。