Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

ゴルフにおける〈平均思考〉

最近こんな本を読みましたよって話です。

ykkactuarial.hatenablog.jp

この本で〈捨てなさい〉と言われてる〈平均思考〉というのは,冒頭のエピソードに象徴されています。つまり,かつてのアメリカ空軍がより多くのパイロットにフィットするようなコクピットを設計しようと思い,4000人以上のパイロットのさまざまな体の部位を測定し,その平均値をとることで〈平均的なパイロット〉のサイズと見なしてコクピットを作ったものの,体の部位すべが平均に近いパイロットなどひとりもいなく,設計としては失敗だったという話,です。

これを読んで僕が最初に何を思ったかというと,ゴルフテックのことです。ゴルフテックの話はむかーし昔に少しだけ書きました*1,彼らがやろうとしていることを要約すると,「プロのスイングの〈平均値〉を理想として,それと自分のスイングとのあいだにどれだけ違いがあるかを数値化し,それをもとにスイングを改善してこう」ということになると思うんですよね。

そこで問題したいのは――上述のコクピットの話のように――すべての要素が〈平均値〉に近いスリングをしている人ってどれぐらいいるんですか,ってことなんですよね。人間の体ってそれぞれ固有のつくりになっているわけで,静的な大きさや長さであってもすべてが平均的な人っていないのだから,動きになるとなおさらそれってありえないんじゃないかと思うんですよ。ゴルフテックがすでにそういう要素を考慮したうえでレッスンしていますっていうのであれば,すいません。

ってことをつぶやいたら,当のゴルフテックのアカウントからLikeされまして。

中の人は人間ができているなーと思いました。

この〈平均思考〉に関しては,当然話はゴルフクラブ(用具)にもおよんでくるわけで,きっとほとんどの市販のクラブが〈平均的〉なゴルファーを想定して長さとか重さとかいろいろ決めているわけで,それがそのまま自分にフィットする確率なんて,恐ろしく低いと思うんですよね。一方で,MyGolfSpyみたいなメディアが多くのテスターに用具のテストをさせてその結果の〈平均〉をとって新商品をランク付けしてて,それが「客観的な評価でござい」ってな謳い方をしているけれど,それもまぁナンセンスだよなーって思っちゃうわけですよね,『平均思考は捨てなさい』の文脈でいえば。(まぁ一方で再現性の低いスイングをするアマチュアゴルファーがフィッティングをしたとしてそれがどれほどの効果を生むのかという,意地の悪い疑問もあるわけですが。)

ポジティブな話をするならば,『平均思考は捨てなさい』が主張しているのは〈個性〉を尊重しましょうということで,そもそも個々の能力にはバラツキがあるし,その個性がどう表出するかはコンテクストに依存するし,そしてゴールに到るまでの道は人それぞれですよ,ということ。ということで,仮にゴルフにおける〈ゴール〉が「パープレーをする」とか「70台を出す」とかだとして,それを達成する道筋はいろいろあるし,それを達成する時間軸も人それぞれだし,とかとか。

でもまぁこうやって〈個性〉の名のもとにあらゆる要素を相対化していくと,何が正しくて何が正しくないのか,だんだん分からなくなっていきますね……。