僕のような理屈好きにはうってつけの本です。このブログで書いているようなネタの宝庫と言ったらいいのか。
ゴルフの科学といえば,"The Physics of Golf" や "The Science of Golf" といった本もあって,それらは主にスイングとそこから放たれるショットにおける物理学的側面を解説しているのに対して,この "Golf Science: Optimum Performance from Tee to Green" は,そういったポイントのみならず,練習方法や最新のコーチング技術,フィジカルにいたるまで,より幅広い要素がゴルフのパフォーマンスに与える影響を,科学的に解説しています。下に各章と各項目のタイトルをすべて拙訳したので,それを眺めれば,この本がどのようなエリアをカバーしているのか分かると思います。
エディトリアルデザインがなかなか優れて,各項目がすべて1見開きで解説されており,全ページカラー,イラストやチャートが豊富。1項目1見開きという制約がある分,ものによっては文章量が少し物足りなく感じるところもありますが,逆にいえばそれぞれコンパクトに知見をまとめて分かりやすく紹介している手腕は見事と言えます。
編者の Dr. Mak F. Smith は,イギリスのリンカーン大学における主任講師をつとめるスポーツ科学者。共著者として,ドクターの肩書きをもつ研究者やプロコーチなどが名を連ねます。こういったあたりに欧米のスポーツ文化の広さと深さが垣間見えます。
Golf Science: Optimum Performance from Tee to Green
- 発売日: 2013/06/07
- メディア: ハードカバー
- 第1章 心と体(mind and body)
- フィジカルのフィットネスレベルはパフォーマンスに影響するか?
- "Quiet eye" とは何か? パットのときはどこを見ればよいか?
- 年齢を重ねるとパフォーマンスにどのような影響がおきるか?
- パッティングのときは両足にどう荷重すればよいか?
- ホールの大きさのイメージはパフォーマンスとどんな関係があるか?
- "functionally connected"とは何か? なぜ体の可動性と安定性は大事か?
- ショット前ルーティーンのとき脳内では何が起きているか?
- スイング中は体のどの部分に負荷がかかり,どこを痛めやすいか?
- 体内の水分量がメンタルとフィジカルのパフォーマンスに与える影響は?
- パッティング時に息を吸うべきか吐くべきか?
- 第2章 スイング(the swing)
- クラブヘッドスピードを上げるために,体のどの部分をどのタイミングで同調させて動かせばよいか?
- スイング中に頭は動かさない方がよいのか?
- "Xファクター"とは何か? どれぐらいヒップとショルダーをターンさせるべきか?
- スイング中にどの筋肉をどのタイミングで使っているのか?
- ツアープロの動作の中でどこがアマチュアの動作と違うのか?
- スイング中にどれぐらい足への荷重をシフトさせればいいのか?
- 「タメ」は飛距離を伸ばすのか?
- スイング中にグリップを握る力はどう変化するか?
- 生体力学的な分析はスイングの再現性を向上させるか? 「スイングプレーン」はスイングの質を向上させるか?
- 「完璧なスイング」は存在するか?
- 第3章 道具(the equipment)
- 最適なドライバーの長さはあるか? 長尺だと飛ぶのか?
- クラブヘッドスピードごとの最大飛距離は?
- 飛距離を伸ばすための打ち出し条件について
- シャフトのキックポイント(調子)はパフォーマンスにどう影響するか?
- 「反発係数」はどのように計算されるか?
- クラブの打感とは何か? クラブのどの要素が打感に影響するのか?
- クラブヘッドの重量配分はパフォーマンスにどう影響するか?
- クラブヘッドの素材と製法はパフォーマンスにどう影響するか?
- ミート率(smash factor)を向上させる方法と,番手別の最大値
- クラブヘッド設計のどの要素が飛距離に影響を与えるか?
- 第4章 環境(the environment)
- 風が飛距離に影響を与える原理とその程度
- 雨や湿度が飛距離に影響を与える原理とその程度
- 気温が飛距離に影響を与える原理とその程度
- 地形が風に与える影響
- どんな要素がバンカーショットのスピン量に影響を与えるか?
- ライの違いがどのようにボールのスピンに影響を与えるか?
- どんな要素がボールのバウンドに影響を与えるか?
- グリーンの芝と土壌はバックスピンに影響を与えるか?
- どんな要素がグリーン上でのボールの転がりに影響を与えるか?
- 高度と緯度はどれほど飛距離に影響を与えるか?
- 第5章 コーチングと技術(coaching with technology)
- 3Dのスイング分析はパフォーマンス向上に役立つか?
- ボールの軌道のデータはアベレージゴルファーにも役立つか?
- スマホのスイング分析アプリはスイング向上に役立つか?
- スイング分析のためにどのような技術が用いられるか?
- スイング分析技術はコーチングにどのような影響を与えるか?
- 最先端のコーチング技術,生体的フィードバック
- 第6章 練習プロセス(the practice process)
- 練習量と練習方法がパフォーマンスの向上に与える影響
- ウォームアップがパフォーマンスに与える影響
- 「スイング改造」はどのようなプロセスを経るか?
- 「練習の冪乗則」とは何か?
- どのようなフィードバックがもっともパフォーマンスを向上させるか?
- 「グリーンの読み」がパッティングパフォーマンスに与える影響
- 最適なパッティングのボールスピードは?
- 補助器具を使った練習はパフォーマンス向上に役立つか?
- 最適な練習方法とは?
- 音を使ったトレーニングはパフォーマンスを向上させるか?
- 第7章 スコア(the score)
- スコア向上にとって鍵になるスタッツは何か?
- どの飛距離レンジがスコア向上のカギになるのか?
- ショットタイプ(ドライブ,アプローチ,ショート,パット)ごとの目的は?
- 「サンドセーブ」と「スクランブル」のスタッツが本当に意味するものは?
- 「Driving Accuracy」のスタッツが本当に意味するものは?
- パットのスタッツは全体のスコアにとってどれほど重要か?
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