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Brandel Chamblee『The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Golf Swings in History』|Golf Channel の名解説者ブランデル・シャンブリーによるスイング解説

どの世界でも,「評論家自身はどれだけできるのよ?」「評論はなんでそんなに偉そうに語れるのよ」問題ってあると思うんですよね。ゴルフの場合,その筆頭が Brandel Chamblee だと思うんですよ。最近だと,マキロイが今のまま筋トレしまくってると,タイガー・ウッズみたいな破滅の道を歩むよ,と「懸念」を示して,マキロイの反感を買ったり(例えばここ)。

で,その Chamblee がゴルフスイングに関する本を出したので,冷やかし半分で買ってみました。結果としては,これが思った以上に面白かったです。

The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Golf Swings in History

The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Golf Swings in History

この本によると,Chambleeの経歴は

2004年に Golf Channel に加わり,現在は "Golf Central" のスタジオアナリストを務める。また,"Live From" プログラムでもアナリストを務める。プロとして15年間プレーし,通算獲得賞金は$4ミリオン以上。1998年にPGAツアーの Greater Vancouver Open で優勝,また1990年にWeb.comツアーの Ben Hogan New Englnad Classic で優勝。1999年のマスターズでは初日を終えて1位タイ。PGAツアーの賞金ランキングで7年連続100位以内

ということで,要するにプロゴルファーとしてはそれほどでもなかった,と言えると思います。もちろん「名選手,名監督にあらず」という言葉がありますが,だからといって「名選手ではないから名監督になりうる」ということでもないわけで。

そしてこの本の構成といえば,トム・ワトソンによる前書きに続いて,「The Grip|Setup|Posture|Triggering the Swing The Initial Move Away from the Ball|The Completion of the Backswing|Transition|Impact and Finish|Summary」となっていまして,世の中にゴマンとゴルフスイングに関する本が出回っているなかで,よくもまぁこれだけ王道の=ありきたりの作りにできたなぁ,という。それでいてこの本をユニークなものにしているのは,そのサブタイトル「Lessons from the Best Golf Swings in History」にあるように,「歴史上の偉大なプレーヤーから学ぶ」点にあります。いやらしい言い方をするなら,自分の考えを正当化するために過去の人たちを持ち出してきていると言えるけど,まぁでもこの博覧強記はすごいです。

Chamblee が Introduction で言ってるのは,「私がよく訊かれるのは,自分の子供たちがゴルフを始めたばかりだとして,どこでゴルフレッスンを受けさせるか? ということ。言うなれば,ゴルフにおけるハーバードはどこか? ということ」で,そのあといろいろ言ったあとで,要するに「ゴルフにおけるハーバード,それは過去の偉大なプレーヤーたちである」と言ってます。(まぁそうじゃなかったらこの本の存在意義はないわけだし)

と,いろいろとうがった目で読み始めたんですが,果たして面白かった。例えばグリップのところでは,かの名著『Five Lessons』の26ページでベン・ホーガンはウィークに握るように言ってるし,ホーガンのグリップは見事なまでに左右対称で右手のつくるVがアゴを指していたけれど,これが可能なのもホーガンは右手の親指を付け根のところから反ることができてそれでその付け根からグリップの横に押し付けることができたからだ,だからホーガン以外はもっとストロングに,右手のVが右肩を向くぐらいでいいよ,とか。あとは(詳細は省きますが)セットアップと始動における右膝の重要性とか。その他にも,番手ごとのボールの位置はどうすべきかとか,スタンスはクローズドがいいのかオープンがいいのか,セットアップで背中は曲がったほうがいいのか伸ばしたほうがいいのかとか,偉大なプレーヤーを引き合いに出されると説得が増すのはこの本の趣旨だから当然として,読み物として純粋に面白いです。

あとこの本の最初から最後まで目につくのは,その偉大なプレーヤーとしてタイガー・ウッズも言及されるけど,それがすべて「メジャーで勝ちまくっていたころ=20世紀末から21世紀初頭」のタイガーであって,最近のタイガーは悪い例として引き合いに出されているところ。Chamblee のタイガーに対する評価がこれに集約されていると思います。