プレストウィックへ!
スコットランド西岸,グラスゴーからちょい南の一帯は,Royal Troon(2016年全英オープン開催地)やTurnberry,Prestwickなど,名門リンクスがいっぱいあります。Prestwick Golf Club はもちろん "The birthplace of The Open",全英オープンが1860年に開催されたときの会場として有名ですが,『風の大地』のファンにとっては,沖田がターンベリーでの全英に出場する前に滞在し練習する場所,リリィならびにマクガン家のキャディを輩出してきた場所,ということになります。
「スコットランドに行ったら,必ずプレストウィックを見て来なさい。あそこはプロゴルファーの聖地です。」(小針)
『風の大地』第13巻より
ということで,ロンドンからグラスゴーに飛んで,そこからクルマで1時間弱。果たして,Prestwick Old Course Hotel に到着し,しかし出迎えたのは無愛想なリリィの兄ではなく,感じのよいインド系の女性でした。(ホテルについて結論を言うと,部屋の暖房のききが悪く,バスルームのお湯の出も悪かったので,ひとりで泊まってますます侘しい思いをしました。『風の大地』ゆかりの地を巡るのもほどほどにしないと)。
ホテル外観。
リリィがトラックに轢かれた道。この右がホテル,左がクラブハウス。
リリィの兄が寡黙にグラスを磨いていたはずのバー。
このホテルからコースは道を挟んですぐ目の前にあります。ラウンド前にクラブハウスで何か食べようかと思いましたが,どうもビジターはそれも出来なそうだったので,プロショップの人に教えてもらった街中のLIDOというカフェへ。リリィやその兄がさんざん「こんな田舎から出ていきたい」といっていたのでどんな田舎かと思っていましたが,このカフェは期待に反して都会的で,しかも美味しかったです。
で,食事を終えてクラブハウスに戻ると,アメリカからの旅行者と思しきゴルファーふたりがプロショップの人と会話中(最近はアメリカ英語に敏感に反応するようになりました)。いわく,「バギー乗った方がいい?」「いやーコースはフラットだしキャディもつくから歩けるよ」ってな感じで,アメリカ人はバギー好き(そしてアメリカゴルフの影響をいろんな面で受けている日本のゴルフ(ゴルファー)も同じ)ということが再確認できました。N=1だけど。
ここではスタート前にクラブハウスを前に写真を撮ってくれました。ラウンドが終わってから,紙の額に入った写真をもらえるというサービス。ビジターもウェルカムな雰囲気がいいですね。
キャディのビリー
ついてくれたキャディは,ビリーというオジサン。ラウンド中にいろいろ会話ができまして,たとえばメンバーの3/4がミリオネアで,またイギリス国外のメンバーも多いとか,メンバーになるには,既存のメンバーと一緒にラウンドをして,そこで一人にでも反対されると申請が却下されるのだとか,あるいはあのベッカムもメンバーらしいとか。
ビリーは7歳からゴルフを始めて,キャディの仕事は6年前から。Royal Troon との掛け持ち。実は Troon は見るだけ見にいったのですが,「Troonは確かにチャンピオンシップコースだけど,プレストウィックの方がチャーミングなコースだね」と言ったら同意してくれました。
そんなビリーに『風の大地』の話をしたら,「そんな荒唐無稽な話はないだろ」って笑ってました。あと,ハーフでランチを挟む日本のラウンドの仕方も奇妙に思えたようで,「俺も飲むのは好きだけど,昼に飲んでからバックナインまわるよりは,ささっとラウンド終えてから飲む方がいいな」って。
キャディのビリー。
前の組がつまっていたので,待っているあいだに本当にいろんな話ができました。前が詰まっているものだから,グリーン上でも何回も練習させてくれて,ビリー自身もラインを確かめているようなところがありました。バックナインでパーが4つとれたのは,明らかにビリーのおかげです。
コース
ってな感じで,憧れのコースでのラウンドの記録で,いつになく前置きが長くなりました。ティータイムはコースのサイトから予約が可能で,サマーシーズンの週末ビジターのフィーは175ポンドでした。
http://www.prestwickgc.co.uk/the-links/
『風の大地』を読んで「プレストウィックは狭い,ボールをロストしやすい」という印象を持っていましたが,実際には15番ホール(その名も "Narrows")のフェアウェイが極端に狭い(20ヤードぐらい,しかもティーショットはブラインド)だけだと思いました。
その代わり,強烈に印象に残ったのは,いくつかのブラインドショット。5番パー3 "Himalayas" は完全にブラインドのティーショット。グリーンをさえぎるのは「ヒマラヤ」のニックネームにふさわしい丘。しかもグリーンまわりはバンカーがしっかり固めています。4打でも御の字ではないでしょうか。
あるいは,17番パー4 "Alps"。ここは2打目のアプローチショットがブラインドで,しかもグリーン手前には "Sahara bunker" が待ち構えています。意を決して打ったショットがグリーンに乗ったときのなんとも嬉しかったこと。これもやはりキャディがいなければ無理だったろうなと思います。
ということで,こんなホールがあるのだから,全英オープン黎明期に,このコースをよく知っているオールド・トム・モリスとヤング・トム・モリスがそれぞれ4度優勝しているのも,なんだか納得できますね。
海が望めるホールは少ないですが,ホールごとの変化に富んでいるので,飽きることはありません。ルーティングも Going out/Coming in ではなく,14番でいちどクラブハウスに戻ってくるかたちになっています。ということで,瀟洒なクラブハウスが遠くに見える光景が2回楽しめます。シャビーなクラブハウスを勝手に想像していましたが,かなり立派なクラブハウスでして,かなり財政的にうまくいっている(あるいはリッチなメンバーが集っている)ことがうかがい知れました。
1番パー4のティー,そのすぐ後ろには鉄道の駅がある。ホールの右は線路で当然OB。
3番パー5,ホールの途中に鎮座する「Cardinal Bunker」。
5番パー3「Himalayas」。この山の後ろにグリーンがあります。
その5番のグリーン。全部で6つのバンカーに囲まれている。
9番パー4。チャンピオンシップティーからの眺め。
10番パー4「Arran」。右ドッグレッグ。スライスして欲しいときにしなくて正面のバンカーにティーショットが飛び込む。
11番パー3「Carrick」。メダルティーからは約200ヤード,しかも強い向かい風……,ティーショットはミニドライバーで。
14番パー4でいったんクラブハウスに戻る。軽い左ドッグレッグで,肘の外側にバンカー,左から攻めるとグリーン手前でこんなバンカーが待ち構える。
15番パー4「Narrows」。ティーショットはブラインドな上に,落とし所がこの狭さ。
ビリーが「シャッターチャンスだぞ」といって教えてくれた,コース途中にある建物。古くからある「lunch house」だそうです。
17番パー4「Alps」。グリーンをさえぎる丘の上から見るとこんな感じ。グリーン右手前に大きなバンカー,通称「Sahara」。ニックネームの付け方がシンプルでいいですね。
そして18番パー4のグリーン。最後はピッチショットで寄せワンのパーが取れて,ビリーともども満足でした。
2 May 2015