Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

〈自転車に乗るようにゴルフスイングを〉ってやつ - Vol.2|運動スキルと認知スキル

前に書いたこれ,

〈自転車に乗るようにゴルフスイングを〉ってやつ - Linkslover

もともとはMKのこれに対するレスポンスなんだけど,

自転車に乗るようにゴルフスイングできない理由はどこにあるのか!? | マーク金井ブログ

「ゴルフスイングはなぜ自転車に乗るようにいかないのか」というのは,問題設定がそもそも間違ってると思えてきた。正しく言えば,「ゴルフスイングはまさに自転車に乗るように運動スキルが記憶されるからこそ,ダメなものはずっとダメ」なんだろうと。

運動スキルと認知スキル

TPIの中で〈運動スキルと認知スキル〉という概念ができきた。運動スキルはまさに自転車に乗るとかいうやつ。認知スキルは人の名前を覚えるとかいうやつ。そのエピソードとして脳梁を切った人の話が語られていて,その人にピアノを教えることにしたと。でもその人は長期記憶が持てないから,レッスンのたびに「はじめまして,私は○○です。実はわたしはピアノが弾けませんで」みたいなところから始まるんだけど,それでもその人のピアノのスキルはレッスンを受けるたびに向上していったっていう。

その話のソースが見つからないんだけど,運動スキルが面白い(かつやっかい)なのは,上書きされないってこと。ようは本棚の中に古い本がずっと居座っている状態で,じゃあ新しいスキルを獲得したらどうなるかというと,それはその本棚の中に新しい本が加わるだけで,その古い本はそこにあるままなのだとか。つまり,あるゴルファーがチキンウィングで悩んでました,練習してチキンウィングを解消しました,でもチキンウィングを起こす運動のパターンは脳の中に存在しつづけるのだと。

で,平常時はその新しいスキルでもって動作ができるけど,古いスキルが顔を出すときがあると。それは,1)その動作を久しぶりに行なった,あるいは,2)ストレスがかかる状況において。

そう考えると,アマチュアゴルファーなんてだいたいが久しぶりにゴルフしてる状態で,しかも往々にしてストレスがかかる状況にあるわけだから(1番ホールのティーショットからして),たまに練習(と称して闇雲に球を打つことを)しても,その場はたまにいいショットが出るかもしれないけど,それは本当に〈その場〉だけだよね,っていう。

そういう意味では,〈ゴルフスイング〉と〈自転車に乗ること〉はまさに同じで,問題は〈自転車に乗る〉やり方はひとつしかないのに〈ゴルフスイング〉の仕方は無数にあるということで,さらに言えば,多くの人がそのゴルフスイングに対する正しい考え方・コンセプト・イメージ(つまり「ゴルフスイングって要するにこういうことでしょ」っていう考え)を持ってないことに起因するのだろうと思うわけです。

Learning と Performing well と Retention

「じゃあどうすりゃいいの?」の前に,もうひとつ。

Learningとは,新しいスキルを身に着けた状態。Performing well とは,そのときたまたま上手くいっただけの状態。その違いを測るのが,Rention test。

たとえばふたりのゴルファーに何かを練習させました。その二日後にそれらゴルファーに同じことをさせて,二日前のパフォーマンスと比べてどうなのかをみるのが,Retention test。

Blocked Practice と Random Practice

それでじゃあどういう練習をすればいいのって話になるけれど,そのときに Blocked Practice と Random Practice という概念が出てくる。前者は,同じ動きを続けてやる練習。7番アイアンなら7番アイアンを持って,同じようなフルスイングをひたすら続けるやつ。後者はその名の通り,ランダムに行なうやつ。ショットごとに番手を変えて,球筋も変えて,ターゲットも変えて,ってやつ。

このとき,短期的に結果がいいのはBlockedの方。でも,RetentionがいいのはRandom Practiceの方。

これに関して面白い例があって,たとえば掛け算の練習をしましょうと。そのときBlocked Practiceは「8 x 12」だけを繰り返しやる。最初は頭を使うけど,2回め以降は単に覚えたことを繰り返すだけ。Random Practiceの方は,毎回違う計算をする。当然ながら毎回頭を使わなきゃいけないし,フラストレーションもたまる。でもだからこそ,計算能力が身につくのは後者の方だと。

こうやって掛け算の例で見ると明らかのように思えるけど,でもドライビングレンジに行くと同じ番手で同じショットをひたすら繰り返すのが,アマチュアゴルファーなんですね。

ただこれもスキルレベルによって多少の違いがあって,要するに本当の初心者ならBlocked Practiceの方が有効な場合がある。だからといってBlocked Practiceだけをやればいいということではなく,BlockedとRandomとに割く時間の割合を少し変えてあげる,というイメージ。

まとめ

  • ゴルフスイングは自転車に乗るようなもの
  • だからこそ,一度身につけた悪い動きを改善するのは難しい
  • 改善するためには,質の高い練習をする必要がある