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クラブプロにしてPINGの設計者がPGAの週末に進むまで|PGA Tour

先のPGAにクラブプロとして出場し,週末のラウンドに進んだマーティー・ジャートソン(Marty Jertson)。このクラブセッティングは先に紹介しまし*1,その中で「PING の Vice President of Fitting and Performance を務められている」と書いたのですが,なんとPINGのクラブ設計も担当されているのだとか。設計のキャリアは2006年のRaptureハイブリッドから始まり,PGAで使った最新のG410ドライバーも,ジャートソン自らが設計したものだそうです。

と同時に,彼はプレーヤーとしてもかなりの履歴でして,Southwest Section PGA Player of the Year を受賞すること2回,PGAに出場すること4回(2011年・12年・18年・19年),そして今年はそれに「PGAの決勝ラウンド進出」というのが加わりました。

ゴルフクラブで働くクラブプロならまだしも,普段はクラブデザイナーとしてフルタイムで働いているジャートソン氏が,どうしてPGAの週末に,しかも難コースといわれる Bethpage Black でプレーできたか。その秘密に,PGA Tour の用具関係の記事を担当している Andrew Tursky が迫りました。

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ソース

Equipment Q&A: Ping designer Marty Jertson by Andrew Tursky, 22 May 2019

拙訳

これまで何度かメジャー大会でプレーした中で,Bethpage はいちばん難しかったですか?

そうですね,パーの設定とラフという観点からは,そうです。Atlanta Athletic Club*2 は水があるので,もう少し怖かったですが。Atlanta ではダブルボギーやトリプルボギーがもっとありました。Bethpage では結果はバイナリーです。いくつかのホールでは,いやほとんど全部のホールかな,フェアウェイを外すとウェッジで出すしかないんです。そういう意味では,恐怖でしたね。フェアウェイに打つ大事さという点では,全米オープン並でした。

PGAの週末のコンディションはいかがでした? ハンディキャップ5のプレーヤーはどれぐらいで回れると思いますか?

それについてはキャディといっぱい話しました。「スクラッチプレーヤーならどうだろう? ハンデ5の人ならどうだろう?」と。こう言えます。PGAでは多くの目があったのに,ラフの中のボールを探すのに苦労しました。なので,ボール探しは3分以内というルールに従ってプレーするなら,ハンデ5の人は120ぐらいのスコアになるでしょう。ロストボールをいっぱいするでしょうからね。すごくキツいんです,ラフが。飛距離とともに正確性が試されます。どちらか一方だけでは通用しなくて,その両方を持っていないと戦えないんです。

そういうゴルフは楽しいですか? メジャー大会はそうあるべきだと思いますか?

各メジャー大会がそれぞれのアイデンティティを持っていると思います。Bethpage では,ボールを曲げる必要はありません。とにかく飛距離と正確性です。そういうレイアウトのコースなんです。そして,セカンドショットの高さが重要です。190-230ヤードのセカンドショットが多く求められるので,ロングショットが試されますね。その距離のショットには自身があります。以前PGAでプレーしたときは,そこが私の弱点でした。

Bethpage は特徴的で,ショットシェーピングがあまり求められません。すべてはフェアウェイに打つことと,我慢することです。

ロングゲームはどう鍛えたのですか? どういうステップを踏みました?

3段階のアプローチをとりました。最初は道具。ドライバーの最適化です。シャフトを少し軽くして,さらにできるだけストレートに打てるようにしました。人々があまり話題にしないことですけどね,それは。できるだけドライバーの練習をして,スピン軸を0度に近づけるようにしました。それで飛距離が伸びました。もちろん,私が設計したG410ドライバーも,多いにその手助けになりました。正しいボールを選ぶというのも,要素のひとつです。

2番目に,トレーニングで脚を鍛えました。PING のリサーチコンサルタントである Sasho MacKenzie がデッドリフトのメニューを作ってくれて,冬のあいだはずっとそれに取り組みました。PGAに向けて調整したのです。

最後に,技術を向上させました。Swing Catalyst のような用具を用いて,ウェイトシフトにフォーカスしました。まずは横方向からの動き。それから垂直方向への動き,いわゆるジャンプですね。ダウンスイングで左腕が地面と平行になるタイミング*3で地面を蹴ってジャンプを入れるようにしました。

これら3つすべてに取り組み,そしてそれらを同調させました。オフシーズンにこれを行なったことで,ドライバーの飛距離が15ヤード伸びました。これでようやく,ツアー平均の飛距離です(笑)。

15ヤードでようやくツアー平均ですか。それがまさに,いまのツアーの飛距離の凄さを物語っていますね。

ツアープレーヤーは平均して若くなって飛距離が伸びていて,私は歳をとる一方ですからね。35歳を越えると大変になります。私はいま38歳です。多くのことに取り組んで,ようやく現状維持ができます。

時の翁ですね。さて,プレーヤーとしてのキャリアだけでなく,クラブ設計の仕事についても語ってもらえますか?

もちろんです。私は Colorado School of Mines Division II カレッジでゴルフをしました。同窓生のツアープレーヤーで,“Jimmy Hard K" こと Jim Knous がいます。とてもいいゴルフプログラムがありました。私はエンジニアリングで学位をとりました。ゴルフ業界で仕事をしようとは,当時思っていませんでした。石油会社やガス会社で働くだろうと思っていました。ですが在学中に少し上達したので,卒業後にプロになって,エンジニアリングの仕事に就くかわりに,ミニツアーで1年ほどプレーしました。ですが,分析的な思考様式を持っているもので,自分がこの道でやっていける可能性は低いと判断し,それで PING でパートタイムの仕事に就きました。そこでは何人かの素晴らしいメンターに出会えました。2003年か04年ごろでしょうか,素晴らしいデザイナーたちのもとで働きはじめ,いろいろと学びました。自分で最初に設計したのは,2006年の Rapture ハイブリッドです。ゴルフ用具に関するすべてのことが私は好きで,ゴルフをプレーすることとスコアを減らすことと道具を最適化することに対する情熱を組み合わせられることを,とても嬉しく思います。私はとても好奇心が旺盛だと思いますが,それが鍵になっていると思います。PING ではクラブ設計に関するあらゆることに取り組みました。CADデザイン,ウェッジデザイン,溝,シャフト,グリップ,フィッティングテクノロジー,iPING,そして最近のドライバーについているタービュレーターなどです。とても楽しく仕事をしています。

8-9年前ですから2010年ごろですか,私はPGAプログラムを受講し,Aクラスのプロフェッショナルとなりました。そうしたことで,より競技ゴルフに取り組むことができるようになりました。そこで学んだことを,自分のプレーに活用できていると思います。過去5年間は私は PING でチーフデザイナーで,すべてのデザイングループとチームを率いていました。昨年末に,現在のポジションについて,カスタムフィッティングツールとテクノロジー,そしてゴルファーのプレー改善につながる教育の責任者となりました。この新しいポジションを,とても楽しんでいます。ゴルフの技術的な側面に対する自らの情熱でもって,カスタムフィッティングソリューションを構築しているのですから。こんにちでは,自身最高のゴルフをするためには,最高の設計のクラブと最高のフィッティングを組み合わせる必要があります。どちらか一方だけでは不十分なのです。

自身の作品の中でお気に入りのものはどれですか?

最近のものはバイアスがかかっているのであまり言及したくないのですが,お気に入りのふたつはドライバーです。ドライバーはスコアメイクにおいてとても重要ですからね。みんなドライバーを打つのが好きだし,数値を計測もしやすいです。これらふたつの出来には非常に誇りを持っています。ひとつは G30 ドライバー。セールス的にも成功しましたし,タービュレーターを用いた最初のモデルで,いくつかの姉妹モデルも生みました。もうひとつが G410 です。私は G410 の Plus,SFT,そして最近発売された LST のチーフデザイナーでした。G410 は私にとって大変なプロジェクトでして,多くの血と汗と涙がありました。G400 の後継を作るというのは容易ではありませんでした。PING のモットーとして,前のモデルより明らかにいいものができなければ発売はしない,というのがありますからね。LSG の発売が少し遅れたのは,それが理由です。

ドライバーは記憶に残りやすいですが,それほど注目を集めなかったものにも,私は取り組みました。アイアンシャフトの ascending weight iron shaft technology (AWT) であったり,パターフィッティングアプリの iPING だったりです。とても楽しかったですね。iPING の最新バージョン「iPING 2.0」は,来月か再来月にはリリースされますよ。

自分だってクラブ設計はできるよ,あるいは設計なんて難しくないでしょ,と考えている人たちに対して,クラブ設計でいちばん難しいのはどんなことだと経験上考えますか?

解決しようとしている問題に注力しつづけること,だと思います。大変なことのひとつは,市場の多くがやっていることにとらわれずに,信念を持ち続けることです。PING では,これは市場では知られていることだと思いますが,信念を曲げずにいます。ゴルファーのスコア改善を手助けし,ゴルフというゲームをプレーする楽しさに寄与する。大事なのは,潮流に流されないことと,信念を保ち続けることです。

自分でも設計できるぞと考える人たちについては,アイアンの設計と製造における複雑さと求められる正確性を,見過ごしていると思います。たとえば私たちが許容している誤差,たとえば溝については,航空機のそれよりも小さいです。それに気づく人はほとんどいませんがね。溝のスペックについては,そのエッジの半径が1000分の7インチからプラスマイナス1000分の1インチとしています。目視では見えないほどのスケールの話をしています。なので,製造における正確性は重要事のひとつであり,そこにかけている研究量は,普通のゴルファーにはまったく見えてこないものなのです。

偉大なゴルファーであると同時に自ら設計を行なう者として,ゴルフ用具の進化が名コースを毀損しているという議論についてどう考えますか?

心配はしていません。ゴルフが直面しているのは,マイノリティが支配しているという問題です。ゴルファーのうちでほんの一握りのひとたちが,ものすごい飛距離でプレーしています。ブルックス・ケプカしかし,キャメロン・チャンプしかし,ダスティン・ジョンソンしかり。私たちがこの話題で思い浮かべるのは,そういう人たちのことです。ですが,普通のゴルファーは同じ問題には直面していません。それは USGA や私たちの業界が直面している問題であり,文字通りすべてのゴルファーに当てはまる,まっとうなルールと規制をいかにして作るかという問題です。非常に難しいですが。

私自身は,用具の将来について,その将来の方向性についてワクワクしているんです。危惧はしていません。過去に起こった用具の進化は,将来も起こるでしょう。なんなら,より速いスピードで進化が起こると思いますし,それがゴルファーを手助けする方向のみに向かいます。多くのゴルファーがよりゴルフを楽しめ,よりよいプレーができ,ゴルフを楽しめるようになるでしょう。業界全体にとっても健全です。

あなたのバッグのに入っているアイアンに目を向けます。Blueprint アイアンは,発売時には「上級者向け」と銘打って世に出されましたよね。世の中にはこのアイアンを打ちたい人はたくさんいると思いますが,あなたはゴルファーに対してアイアンの寛容性についてどのように伝えますか? 鍛造のブレードがいいのか,あるいは他のより寛容性が高いものがいいのか。

そう,鍛造ブレードというか,Blueprint ですね。確かに,警告を掲げました。このアイアンは,ルイ・ウーストヘイゼンや,あるいは彼のような真正のボールストライカーのために造りました。彼らは文字通り,アイアンでは芯を外さないんです。残念ながら,私はその中には入りません。私はもう少し,ミスヒット時のお助けが欲しい。少し保険が欲しいんです。なので私は先週 iBlade を使いました。iBlade の慣性モーメントは Eye2 を上回るのです。小さくてコンパクトなブレードタイプなのに,古い Eye2 よりも易しいんです。これは本当に驚くべきことです。複数素材によるデザインと,重量配分のおかげです。ですから,Blueprint で掲げた警告を私は気に入っています。それは真実ですから。

これは大変なことなのですが,アイアンを評価して打つためには,自らのエゴを捨ててどれぐらいのミスヒット時のお助けが必要かを見極める必要があります。ボールのシェイプを自ら操りたいのか? あるいはまっすぐ打ってスコアを縮めたいのか? それが,Blueprint にするか iBlade にするかあるいは i210 にするかを決める要素なのです。私たちの製品群の中で,上級者向けのアイアンといったらそのへんです。そして,どれぐらいの高さを出したいのか,ボールスピードが必要なのか,があります。それからソールフィッティングもあります。ターフの抜けをどうしたいのか。それはアイアンについてあまり語られるところではないですが,設計するときには考慮に入れています。i210 と iBlade と Bluprint との違い,われわれの契約ツアープレーヤーたちが経験する大きな要素のひとつは,ターフの抜けです。ソールのデザイン,バウンス角とリーディングエッジの作り,ヒール=トウの反り,これらすべてがターフの抜けに影響します。ツアープレーヤーたちはこれらを考慮してアイアンを選びます。

フルタイムで仕事をしているけどプレーを向上させたいゴルファーに向けて,なにかアドバイスはありますか?

すべては「複利の力」だと思います。人生における偉大なことは,福利の力から来ます。近いに向かう私の気持ちがそれで,「自分は38歳で,7歳からゴルフを始めた,だから31年もトレーニングしてきたぞ」というものです。日々の小さな練習,あるいは毎週の小さな練習。それが積み重なっていきます。トーナメントで最高のプレーをするために,山ほどゴルフをする必要はありません。気持ちの持ちようと,自身を持つことが大事です。

私がやっていることのうちで,仕事を持っているゴルファーでもできることは,自宅でちょっとしたことをすることです。マットでパッティングの練習をするとかですね。安価なものでいいんです。特別はものは要りません。小さな練習の積み重ねが,将来大きな効果を生みます。ネットを買って,子供が寝たあとにスイングのメカニカルな部分に取り組むとかもできますね。そして,正しいコーチを見つけること。もちろん,正しい道具を手に入れることも大事です。この点は強調してもしきれないです。私自身も,道具についてはアドバンテージがあると思います。他の PING ユーザーを除いては。あらゆる側面で小さな改善が,大きな結果につながります。

素晴らしいアドバイスですね。お使いのパターとパッティングスタイルについて教えてください。

アンカーリング禁止直後は,うまくパットができませんでした。気持ちの問題だったと思いますが。スタイルを変えるためにいくつかの打ち方を試しましたが,最終的にはロングパターを使いつづけることにしました。ルーティーンのおかげで,誰も私がアンカーリングをしているとは思えないと,自信が持てます。どういうものかというと,左の親指を胸につけて素振りをして,それからその指を胸から外すのです。これでアンカーリングの問題は解決します。

それから,シャフトを半インチ短くしました。だから今は47.5インチだと思います。Cadence Ketsch を使っていますが,モデルも重要な要素です。私は Ketsch の2代目モデルを作りまして,そこには TR フェーステクノロジーがあります。自分のパターはソールのプレートをカスタマイズして少しウェイトを変えて,全体で490グラムにしています。ロングパターに適しているヘッド重量は475から500グラムだと思うのですが,テンポやバランス,そして重心の位置によって変わりますね。私は Ketsch をずっと愛用しています。Ketsch はわたしたちにとっては隠れた名作で,ツアーでも結果を出していますし,アライメントもしやすいです。再現性があるのであれば,アライメントで2−3度ずれるのは構わないのですが,私自身はスクエアに構えたいタイプのプレーヤーです。個人的な好みですが。

ロングパターで大事だと思うのは,固まらないことです。私のパッティングをよく見ていただければ,グリーンをタップして,テイクバックの前に地面から浮かすのがわかると思います。アンカーリングが禁止されたあと,いくつかのテクニックを試して,少しループの入ったストロークにしました。その効果は素晴らしいですよ。TRフェースも最高です。

Bethpage では,多くのホールでセカンドショットで4番アイアンを打ってグリーンセンターを狙い,40-60フィートから2パットでパーを拾っていましたね。それがツアーの大会やメジャー大会では大事な戦略だと思います。ところで,ニューヨークや Bethpage のファンはいかがでしたか?

ええ,楽しかったですよ(笑)。邪魔されることもなかったですし,プレーに影響もまったく与えられませんでした。ショットを打つ前や打つときは。私に対してはとてもポジティブでした。会場で働くボランティアの方々やセキュリティの人たちは,信じられないぐらいいい感じでした。みんな「グッドラック!」と言ってくれました。彼らの笑顔はとても素敵で,ファンの方たちもみんな一生懸命に応援してくれました。とはいうものの,週末の空気は少し違っていましたね。面白かったですよ。パットし終わったあと,彼らは「やつはアンカーリングしてるぞ! チェックしろ!」みたいなことを言うんです。気にはなりませんでしたよ,いつもそうですから。

初日2日目は,タイガー・モリナーリ・ケプカの組のふたつうしろの組でプレーしました。そこでの観客の興奮と雄叫びは,決して忘れることはないと思います。2日目の4番ホールでタイガーがイーグルを決めたとき,木々を抜けて観客の雄叫びが聞こえてきました。映画の中にいるような感覚でしたね。

*1:WITB|マーティー・ジャートソン|2019年5月19日|PGA Championship - Linkslover

*2:2011年にPGAを開催

*3:いわゆるP5のポジションですね