えー,テニスの話です。ゴルフとはまったく関係ないですが,どうしても書きたいネタなので。
先日,O2アリーナに ATP WORLD TOUR FINALS のフェデラー対ベルディヒ戦を観にいきまして,そこで「フェデラーがベルディヒのセカンドサーブでサービスライン付近まで出ていってハーフボレーでリターンをする」という光景を目にしました。しかも2ポイント連続で。とてもビックリしました。
で,翌日にテニス好きの同僚にその話をしたら,「あー,SABRでしょ?」と。「セイバー?」「Sneak Attach By Roger」。
最近すっかりテニスに疎くなっていたけれど,ファンのあいだではよく知られていたショットだったらしい。
それでさっそくググってみたら,シンシナティの決勝でジョコビッチ相手にそのSABRを決めている映像がYouTubeで簡単に見つかりました。いい時代だ。
このボリス・ベッカーの表情たるや!
で,さらにググってみたら,昔テニスにハマっていたときによく読んでいた TENNIS X なるサイトで,そのSABRの誕生秘話が明かされているのを見つけました。
Roger Federer Explains The Origins Of His SABR Shot And What It Stands For
要約の意訳をすると,
- シンシナティに到着した日,フェデラーはセンターコートでブノワ・ペールと練習をした。
- だけど,時差ボケなんかで疲れていたので,数ゲームやってささっと切り上げようということに。
- フェデラーは「もうやめようよ」って感じだったけど,コーチのセヴリンは「数ゲームやって調整しようよ」ということで,練習を続行。
- 最後の方でフェデラーが冗談まじりに,「もう全部チップ&チャージするから,ささっと終わらせよう」とか言っているうちに,今のSABRと呼ばれるショットを連発。その驚くべき光景に,ブノワ・ペールが笑い,ロジャーも笑い,セヴリンも笑い。
- で,その次の練習でもそのショットを試してみたら上手くいき,また次の練習でも試してみたらまたしても上手くいった。そしたらセヴリンが「ねえ,試合で試してみたら?」 フェデラーは「マジで?」
- セヴリンはそのショットを試合で,しかも大事なポイントで試すことを強く主張。
- その戦術について話すうちに,なんとなく名前が〈Sneak Attach By Roger (SABR)〉に決定。〈Fed attack〉でも何でも良かったけれど,フェデラーはそのアホっぽい感じが気に入った。
- シンシナティではSABRが決まって嬉しかったけど,ビッグサーバー,例えばジョン・イズナーみたいな相手に対してはやらない。
US Open 2015: Roger Federer's aggressive new SABR shot is not disrespectful, but it is brilliant
これはTelegraphの記事で,このSABRに対して批判的な,ボリス・ベッカーのコメントを紹介しています。いわく,「あのショットは相手のサーブに対する侮辱(disrespecting)に近い。もしフェデラーがあれをマッケンローやコナーズ,レンドルや私に対してやったら,我々はこう言うと思う。『ロジャー,君のことは心底好きだけれど,君にぶつけにいくよ』。我々の世代では,あれは受け入れがたかっただろう」。
Telegraphの論調としては,まず「オンコートでの振る舞いがそれほど優等生でもなかったベッカーが他人のスポーツマンシップのことをとやかく言えるのかい?」ということと,さらに「そもそもこれはスポーツマンシップの問題なのか? すべてのプレーヤーがルールの範囲内でポイントを奪うために新たな・革新的な方法を見出そうとしている,そのひとつの例なのではないか?」という二点。
それに加えて,「そもそもこれって簡単なショットですっけ? セカンドサーブとはいえ100mphで飛んでくる足元のボールをハーフボレーで打つんですよ? 侮辱だろうが何だろうが,これで簡単にポイントがとれるんだとしたらみんなすでにやってるはずでしょ?」ということ。「これはテニス界における Kevin Pietersen の switch hit だ」ってな感じで,Telegraphは肯定的に締めくくっています。