Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

マサ・ニシジマ『ゴルフコース好奇心』ゴルフダイジェスト社|Back 9

HOLE10より。前半はこちら。

ゴルフコース好奇心―ANALYSIS OF A GOLF COURSE

ゴルフコース好奇心―ANALYSIS OF A GOLF COURSE

抜粋
  • 欧米でロングとは距離が長め,ショートは短めのホールを指し,従ってロングパー3もショートパー5もあるわけです。
  • 谷越えのスケールは谷を越えた向かい側の景観に生まれるもので,谷越えよりも,むしろ丘を越えていくようなイメージのほうがスケールが大きくなるはずです。
  • 世界の谷越えの中で,つまらないレイアウトは,狙いを示すハザードがなく,ただ斜面に置かれたフェアウェイが前方に広がり,谷を越えさえするば良いと感じさせるような単調なホールでしょう。
  • 日本のコースはグリーンに向かって常に前進し,さらにフェアウェイを徐々に絞り込んでいく発想が強いのですが,丘陵地帯が多い日本では,かえってこの(ケープキッドナッパーズの17番ホールのような)高低差のあるフェアウェイを並列し,攻略ルートの本数を増やすようなアイデアも必要だと考えます。
  • 極端にいえば,ゴルフコースは18のパー3で構成されています。パー4,パー5ホールのパーオンを狙う理想的な位置からのアプローチショットは,すべてパー3と同じ条件になるからです。実際,設計家の多くはこの理論を基にして18ホールの構成を考えています。
  • 攻略性の高いホールというのは,その日の状況やプレーヤーのレベルによってベストルートは変わって当然です。
  • 日本では特に距離の短いホールで,フェアウェイに樹木を配置するケースをよく見ます。しかし距離がないからという理由で,ハザードとしてプレーゾーンのしかもフェアウェイ上に,樹木を置くのは安易な設計理論といわざるをえないでしょう。
  • ゴルフはボールを転がすと同時に,飛球させるスポーツです。つまりゴルフはビリヤードと違って三次元空間を活用して行うものだけに,正確な飛球に対して,それを阻むハザードや障害物が空間にあってはならないはずです。
  • 廣野には開場当時に撮影されたコースの写真が多く存在します。その写真が示すようにオリジナルの廣野は大変スケールの大きな荒涼としたゴルフコースでしたが,無駄とも思える植栽がコースのスケールを小さくしてしまったようです。
  • 彼(クラシック時代の英国人設計家,トム・シンプソン)のドッグレッグ理論では,ティショットでショートカットできるホールは正しいドッグレッグホールではなく,ドッグレッグはあくまでプレーイングルートに沿って進行させるべき,としています。でなければホールを折り曲げる意味がなく,まだドッグレッグのオリジナル,リンクスの砂丘ルートともそぐわないからです。
  • ショートヒッターが2打目でグリーンを狙えず,レイアップ(刻み)をしなければならないような,曲がり地点までの距離が長いレイアウトもドッグレッグホールとしては不適当でしょう。
  • ステレオタイプとはティグラウンドやフェアウェイ,グリーンが独立した島のようになっているホールでは,アリゾナなどの砂漠地帯では比較的ポピュラー。
  • 改造によって高い評価を得たゴルフコースを分析してみると,大半はオリジナルのグリーン図面や開場当時の写真が存在し,その図面に沿って作業しています。ティリングハーストのベスページ・ブラックやレイノーのショーエーカーズなどもグリーンをオリジナルに戻すことで再評価されました。
  • 管理上の理由から「サマーグリーン=高麗」,「ウィンターグリーン=ベント」の2グリーン制を考案し,自ら設計するコースに導入して国内で流行らせたのは井上誠一氏です。彼の2グリーン理論はユニークで,ガードバンカーの配置・形状は2つのグリーンを網羅するものでなくてはならない,というものでした。
  • コースを評価する中で,「メモラビリティ」という項目があります。コースの印象がどれだけ濃いかを表すもので,印象に残るホールがいくつあるかを最低基準としてとらえ,さらに18ホールの流れ(ルーティング)を評価します。
  • ボビー・ジョーンズの言葉の中に,「ウォーターハザードはリカバリーの効かない最悪のペナル(罰)である」というものがあります。しかしこの言葉を受けて,ウォーターハザードが100パーセントコースをダメにするとかんがえられるのは,ジョーンズの言葉の意味を真に理解したとはいえません。
  • では最悪のウォーターハザードとはどういうものか。それは,コースマネジメントをする上で,ひとつの攻略ルートしか認めないような位置に池やクリークが置かれた場合です。
  • ヒロイック(勇敢)な要素を持たすためのウォーターハザードであっても,1ホールの中で2度,3度とショットに絡むようであれば,それはプレーヤーから戦略ルートの自由を奪い取る最悪のペナルとなり得ます。
  • ポルトガルにサンロレンツォというコースがあります。完成当初は評判の高かったコースですが,なぜか最終ホールはすべてのショットに水が絡み,それまでの17ホールとはまるで異なるコンセプトの設計になっています。このわずか1ホールのために,このコースの評価は年々低くなっています。
  • 例えばオーガスタナショナル,アーメンコーナー(11番,12番,13番)のウォーターハザードは,あくまでコースを折り返した地点の設置で,仮にそこでミスをしても,残りのホールで取り返す可能性は十分にあるのです。
  • 米国では,最終2〜3ホールにウォーターハザードが常に絡んでいたために,コースの評価が下がってしまった例が数多くあります。コースの戦略を水際に頼りすぎる理論はゴルフコース設計を大雑把にとらえすぎている,というのがその理由です。大事なことは,攻略ルートが1本に絞られないこと。ヒロイックな池越えルートがあると同時に,ショットメイキングによって池を回避し,パーセーブできるような攻略ルートもなくてはならないはずです。
  • 英国では海岸線のリンクスランドから内陸にコースができる時代になって,初めてランドスケープ(景観性造園学)という言葉が登場してきます。
  • 現在の世界トップ100コースにランキングされるコースの半数近くが,何とクラシック時代の作品であり,そのためこの時代を「ゴルフコース黄金期」と称しています。