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和田泰朗『世界が認めた究極のシンプルスイング キープレフト理論:世界的ティーチングプロ団体の「マスター」が初公開!』日本文芸社

ツイッター上でにわかに賑わっていたので買って読んでみましたが,いやー,大変。

ツッコミどころ

  • これまでスイングについて紹介されてきたメソッドのほとんどは,うまくできている人のスイングを解体,解説しているにすぎませんでした。(p.004)

→理論って言われるものって基本的にそうじゃない?

  • そこで,これまで培ってきた動作解析の知識を動員し,動作の原理を組み上げていく手法でスイングを分析,実践してみました。(p.004)

→はぁ。お手並み拝見です。

  • これまで振り子運動のイメージでスイングしてきた方は,一旦(ずっとでもいいです!),振り子の発想を削除し,スイングについて無の状態になってください。(p.014)

→このあともやたらに振り子振り子いってるけど,まず「振り子運動」とは何かを説明すべきじゃないの? あと「振り子運動のイメージでスイング」している人って,そもそもどれぐらいいるの? 何のイメージもなくとりあえず打ってる人が大半じゃないの?

  • うまくボールを打てないのは単純明快,「斜めの棒を斜めに動かせないから」です。(p.015)

→すげーな。「動作解析の知識」とか「動作の原理」とか言っといてこれかよ。

  • 振り子運動では位置エネルギーしか使えません。(p.017)

→この人のアタマの中で「振り子運動としてのスイング」ってどういうモデルになっているんだろう。上体も下半身も動かず,支点としての手首の位置も動かず,ただクラブが動いているイメージなんだろうか。

  • 左肩支点の振り子が作動中に,クラブは絶対といっていいほど振り遅れます。(p.020)

→その前に「振り遅れ」を定義せよ。

  • 長い棒の先端で正確にボールをヒットするのは容易なことではありません。(p.022)

→ここすげー雑。まず「長い棒を長いまま持って振り子にするとボールに当てるのがやっと」と,頭ごなしに言う。そして,長いから難しいんであって短く持てばいいじゃんというノリで「棒の真ん中あたりを持つ」けどそうすると「棒の余り部分が体にぶつかって,そのまま振ることはできません」という。当然じゃん。「そこで余った部分(クラブでいればグリップエンド側)を体の左サイドにズラし,ボール側の先端が自分から見て右斜め下,グリップ側の先端が左斜め上を指すようにします」。こんな感じで「グリップエンド側を終始体の左サイドに置く」のが「キープレフト理論」だってこの人は言ってるんだけど,そりゃ長い棒を短く持ったら当然じゃん。でも実際のクラブはこんなにも長くないし,グリップエンドが体にぶつかるほど短くも持たないでしょ。前提条件がぜんぜん違うのに,これをもってキープレフト理論の振り子運動に対する優位性を主張するのって,そりゃトンデモですよ。

で,このあと天下り的に「二点吊り子」の話がでてきて,「プロは二点吊り子で振ってる」「振り子運動は位置エネルギーによる慣性モーメントがエネルギーの主体でネガティブなもの」「一方,(スイングに二点吊り子の要素がある)プロは自分の力でクラブを動かし,ポジティブにエネルギーを与えている」とかなんとか……。疲れるわ。ネガティブとかポジティブとか言い方の問題じゃん。振り子運動にしたって自分の力を加えてないわけないでしょ。アマチュアのスイングはダウンスイング時にキャスティングが入っているから「振り子運動を想起させる動作が多く見受けられます」とかって,それただの印象であって,話戻るけど「アマチュアが振り子運動のイメージでスイングしてる」とは限らないでしょ。キャスティングするのには他に理由があるかもしれないじゃん。

  • バックスイングでは,体を右に回して左肩を水平移動。(中略)左肩が下がらないことが条件です。(p.032)

→前傾しないんですかね。

→これ,pp.106-107に載ってる連続写真なんですが,フォロースルーでがっつりグリップエンドが飛球線後方から見えていて,これって振り子運動じゃないんですか?

結局この本って,最初に「動作解析の知識を動員し,動作の原理を組み上げていく手法でスイングを分析,実践してみました」っていってるわりには「アドレスではああせよ,バックスイングではこうせよ」って述べてるだけでその「知識とか原理とかはどこにあるんですか?」って感じだし,「振り子運動 vs. 二点吊り子」についてもちゃんとした分析がなされているわけでもなく,「世界が認めた」っていっても「WGTFで表彰された」って事実と「タイガーもケプカもこれやってます」って(証拠もなく)述べているだけで,結局は下の動画みたいなドリルやるといいよっていうこと「キープレフト」および「二点吊り子」という言葉でドレッシングしているだけという印象を最終的に受けました。

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おしまい。