Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

〈60点のショット〉を定義したい

ここ数週間頭から離れないのは,比留間裕氏が語った以下の言葉*1

スイング理論って何のためにあるかって言ったら,大きなミスをしないため。常に60点以上のショットを打つのがスイング理論の本質。

よく言われるこの〈60点以上のショット〉ってやつ。マーク金井氏も往々にしてこの表現を使っている気がしますが*2,「満足ってわけでもないけどギリギリ合格」ってニュアンスがあって抜群だなと思う反面,「じゃあ50点のショットと60点のショットと70点のショットとの違いって何?」って真面目に考えると,簡単ではない(そんなこと真面目に考える必要もないんでしょうけど)。

ドォーク・スケール

例えば Tom Doak の『The Confidential Guide To Golf Courses』だと,ゴルフコースに対するレーティングを0から10まで行なってて(いわゆる「The Doak Scale」),それぞれにちゃんと定義がある。例えば最低の「0」だと

あまりにうそっぽく不自然なコースで,あなたの心を汚染しかねない。どのような状況にあっても,お勧めできるコースではない。建設に当たって驚くほどの金額が費やされ,そしてきっと最初から建設されるべきではなかったコース。

だし,最高の「10」だと

ほぼ完璧。1ホールでもスキップしたら,見る価値のあるものを見逃すことになるだろう。このカテゴリーにあるすべてのコースを見ていないとしたら,ゴルフコース設計の可能性をまだ分かっていないことになる。この本を閉じて,旅行会社に電話しよう。今すぐ。

とか。こういうノリで,ショットにおける「0点」から「100点」まで10点刻みで定義づけられないかなー,というのが,最近考えていることです。

相対的60点

ひとつの考え方としては,例えば同じ状況から11回ショットして,結果のいい順に100点・90点・…・0点とする。つまりいい方から数えて5番目のショットを「60点のショット」と定義する,というやつ。

これはこれでそれっぽい感じがする反面,たとえばティーショットが10回中7回右OBだったような初期の僕のような場合,「60点のショット」が「右OBだけどそこそこ飛んだっぽいやつ」みたいなことになる。でもまぁ,目指すのってそういうことじゃないですよね。

絶対的60点

もうひとつの考え方としては,stroke gained 的なやつ。ゲインが0を60点だとして,ゲインの度合いで適当に刻んで100点から0点まで定義するというやつ。理論的にはきれいにまとまるかもしれませんが,まぁアマチュアの場合はほぼ不可能でしょう(誰に対してのgain/lossかってのを定めるのが難しいので)。

定性的・記述的60点

ということで,落ち着くところとしては(doak scale みたいに)それっぽい記述を与えるところかと。

例えば僕のドライバーショットでよくあるのは「薄い当たりで地を這うような弾道なんだけどランは出てIPの辺りまで転がっていく」というやつで,これなんかいかにも「60点のショット」にふさわしい。「ショット的にはしょぼいんだけど死んでるわけでもないし,次のショットが普通にグリーン狙える」って感じ(パー4ホールだとして)。こんな感じで「ショットの良し悪し」と「結果の良し悪し」っていうふたつの軸でショットの採点ができそうな気がしますが,これ以上細かく考えるのはひとまずやめておきます。

ただ言えるのは,0点は間違いなくOB。前に進まない上に2打損するから。「空振り」と「前に進むけど1ペナ(池とか)」だとどっちがいいんだって話ですが,前に進んだ度合いにもよりますね。「たいして進んでない上に1ペナ」なら10点,「空振り」が20点,「そこそこ前に進んだけど1ペナ」なら30点,とか。まぁここには stroke gained 的な考えが含まれていますが。

「60点のショット」のためのスイング理論

この「60点のショット」という考えには「コース戦略」の考え方も含まれていると思うんですが,そこの部分はとりあえず置いといて,「ショットのクオリティとして60点以上のが常に出るようにするのがスイング理論」,という比留間裕氏のスタンスに立ってみると,なんか世の中にある「なんとか理論」とか「なんとかメソッド」とか,複雑過ぎません?

まぁそういってる比留間裕氏(というかPowerRoataionalGolf)自体が「リードアームアブダクション」とか言ってるんでアレなんですが,なんていうか,「ゴルフってそんな難しいのかよ?」っていう。その最たる例のひとつが小澤康祐氏の『ゴルフスイング物理学』*3だとは思ってるんですが,いや,物理学的観点を持つのは当然どっかで役立つんだけど,とりあえず偏重心とか慣性力とか向心力とかそういうのいいから,「こう握ってこういう感じで体動かしたら60点以上のショットがほぼ毎回出ますよ」っていうメソッドというかティーチングというかフレームワークというかが,あるといいなぁと。

あと少し違う話ですが,仮にとあるゴルファーの現時点でのフィジカルを制約条件にしたときに理論上最高にヘッドスピードが出るスイングのやり方があったとして,そのスイングでもってコースで球を打つのは正しいでしょうか?って問題もあると思うんですよね。ドラコンだったらもしかしたらそれが正解かもしれないけど,ストロークプレーだったら不正解の可能性が高いでしょうね。「そんなん当然だろ? スイングで大事なのは再現性だろ?」と言われるでしょうが,なんで再現性って大事なのか,再現性を高めるには何が必要なのか,再現性とスピードとは両立しないのか,とか,重箱の隅をつつけば面白い問題はいろいろと作れそうな気がします。

〈60点〉って考え方,ゴルフだけじゃないんですね

検索してみたら,まーいろいろ出てくること……。

IT大国インドの強さは"60点主義"にある 「英語、数学が強いから」ではない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

仕事は「60点の出来」で堂々と出そう | 「ラクして速い」が一番すごい | ダイヤモンド・オンライン

松下幸之助は「能力は60点で十分」と考えた | 松下幸之助はなぜ成功したのか | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

あと全然関係ないですが,「食器はどれぐらいの値段のものにすべきか」って問題に対して,「普段気兼ねなく使える程度に安くて,壊れたときちょっと悲しくなる程度に高いもの」という秀逸な回答があります。この本かこのシリーズのどれかの中で目にしました。

そういうノリで,いい感じに〈60点のショット〉を定義づけたいんですよね。