GOLF103

1にコースで2に道具,3・4が理屈で,5にスコア

本 // 慎武宏『イ・ボミはなぜ強い? 知られざる女王たちの素顔』光文社新書

イ・ボミに興味があるわけではなく,韓国人プレーヤーの強さの技術的な秘訣を知りたくて読んでみたのですが,結果的に,イ・ボミやキム・ハヌル,あるいはシン・ジエたちの苦悩と奮闘と努力と人間性に圧倒され,魅了されたのでした。

イ・ボミはなぜ強い? 知られざる女王たちの素顔 (光文社新書)

イ・ボミはなぜ強い? 知られざる女王たちの素顔 (光文社新書)

来日当初は姉とともに葛西に住み,レンタカーを借りて国内を移動しながら,ようやくつかんだ日本初優勝でキャディをつとめた姉とグリーン上で抱き合い泣きあったジョン・ミジョン。韓国で賞金女王の座にありながら,日本ツアーに出場するためにファーストQTから挑み,そして無事通過して父の懐に飛び込んで涙を流したキム・ハヌル。アメリカで賞金女王の座につきながらも,新たな挑戦を求めて日本にわたり,スポンサーの離反や韓国メディアからの批判にあいながらも,その人間性で新たな居場所を確保したシン・ジエ。彼女たちの姿は,こちらも涙なしには読めなかったです。

強さの秘訣

ところで,「韓国人プレーヤー」の強さの秘訣に話を戻すと,この本から読み取れたのは3点です。

ひとつめは,メンタリティ。パク・セリの活躍に刺激されてゴルフをはじめ海外を目指す韓国人プレーヤーたち。彼ら・彼女らの心の底には,ただの「憧れ」ではない,「あの人にできたのだから私にもできるはず」という気持ちがあるのだとか。

ふたつめは,幼いころからの激しい競争。「国家代表」になることで得られる名誉とステイタスを夢みて,幼いゴルファーたちが家族の強力なサポートのもとで熱心に練習をし,さらに厳しく公平な選抜過程を経ることで,本番に強いメンタリティが鍛えられている。「競争が激しい」ということ自体はなんとなく知っていまいしたが,具体的な制度や強化方法なども記されており,参考になりました。

最後が,技術。イ・ボミがいみじくも語っているように,「日本人選手と韓国人選手の違いを強いて挙げれば,スイングフォームに対する考え方ですよね。韓国人選手はグリップの握り方から腕の角度,振り抜き方,スタンスの取り方まで非常に細かい部分まで気を使い,“正しいスイング”にこだわります。それに比べると,日本人選手はスイングフォームが人それぞれで個性がありますが,あまりこだわりがないような感じもします。それでもリズムやテンポがいいので欠点というわけではないのですが,そういったスイングフォームのこだわり方に,韓国と日本の違いを感じます」というところが,最大の特徴と言えましょうか。

イ・ボミの練習

「コーチがなかなかボールを打たせてくれなかったんですよ。ゴルフを始めた最初の一カ月はひたすら素振りだけでしたし,ようやくボールを打てるようになっても,一球打つ前に必ず五回は素振りするよう義務づけられました。ただ,今となってはそれがよかったと思います。正しいフォームを身につける礎となったし,何よりも”ボールを打てることの大切さ”を身に染みて学びましたから……。一球入魂というと大袈裟かもしれないですが,集中力も養えたと思います」

名づけてパワーインパクト・ドリル。大量の砂を詰め込んだ軍用ダッフルバッグをひたすら叩く練習である。「小柄な私がボールをより遠くへ飛ばすためには,ボールにパワーを伝えねばならず,そのためにはしっかり強くインパクトする必要があると思ったんです。それで最初はタイヤを叩いていたのですが,ゴムだと叩く音が大きいし,力任せになってしまったので,砂を詰めた軍用ダッフルバッグを叩くようになったんです。軍用ダッフルバッグと聞くと”ゴルフとどんな関係が?”と不思議がられますが,砂袋を叩くことでインパクト時の感覚や正しいフォームの形状を体に記憶できますし,強く叩こうとすることでリリースのタイミングも自然に掴むことができます。さすがに今は軍用ダッフルバッグは使いませんが,今でもインパクト時の感覚を確認し研ぎ澄ますために,たまに実施している練習法なんですよ」

「一日だいたい五時間ぐらいかな。その時間の多くを費やすのが,アイアンの練習ですね。アイアンはゴルフでもっとも重要だと思うんですよ。ドライバーやウッドを握るのは一ラウンドで十数回程度ですが,アイアンはその倍以上。だから韓国時代からアイアンの練習に多くの時間を費やしてきました。仮にアイアン練習を三時間だとすれば,ドライバーを握るのは一五分程度。アイアンは四番からPWまでクラブがあるので飽きもしないし,ひとつの番手でフルショットしてみたり,コントロールショットをしてみたり,いろんなパターンの打ち方もある。それらを入念に確認したり,試したりしています」

「アマチュアの方はアイアンを手にすると,スイングでボールを上げようとしがちですが,アイアンはフルショットしなくても,正確に捉えていればボールは自然と高く上がり飛んでいくものです。つまり,インパクトが何よりも大切。スクウェアなインパクトでしっかりミートすることを意識しながら,その感覚を確かめます。スイングの振り幅やスイングスピードを五〇%,六〇%と段階的に上げながら,自分のリズムでしっかりと当てていくんです。そうすることでインパクトの感覚や感触を,体に刷り込んでいきます」

「目をつぶって打ってみる練習もいいですよ。もちろん,目をつぶったままでは空振りしますが,フォームを確認したり,体の動きを自覚することができます。目を開いていると,どうしてもボールの行方ばかりに気を取られてしまうのですが,目をつぶったままで打つことで,フォームに意識を集中させ,自分の体の動きを感じ取る。そうすれば修正すべきポイントが明らかになり,バランスのよいスイングの動きを身につけるための始発点となります」

「二枚の硬化を重ねて,上の硬貨だけをパター打つ練習です。パターで重要なのはヘッドをしっかりボールのスイートスポットに当てることですが,ボールの中止よりも上を叩いてしまうと転がりすぎてしまうし,下をヒットするとボールが若干浮いてしまい性格で安定したパッティングができなくなります。そういったクセを修正してくれるのが,この硬貨を使った練習です。パターヘッドを地面スレスレに低くできますし,フェースをスイートスポットに合わせやすくなります。硬貨に集中しているのでヘッドアップも防止できます」

イ・ボミの専属コーチ,チョ・ボムスの教え

「私はゴルフには三つの要素が不可欠だと考えます。メンタル,感覚,体力です。この三拍子が揃ってこそいいゴルフができ,いいスイングもできるというのが私のゴルフ哲学で,ボミをはじめ指導してきたすべての選手たちには,この三つを備えるよう強調しました。ひとつでも欠けてはならないと」

「たとえばメンタルとは,ゴルフをするときだけに必要なものではありません。ゴルフもほかのスポーツと同様にコンペティション(競争)である以上,その競争を勝ち抜くための生活パターンも維持しなければならない。つまり,規則正しい生活とそれを可能にするセルフコントロールです。自己管理を徹底している選手は,ゴルフも強くてうまいのです」

「たとえばゴルフを始めた多くの人々はレッスンを受けたり教本を読みながら,スイングの基本を覚えていきますよね。その基本に忠実になろうとするあまり,バックスイングの動作やダウンスイングの形,フィニッシュの姿勢など,いろんなことに気を使われますが,何よりも重要なのは”インパクトゾーン”なのです。というのも,バックスイング,ダウンスイング,フィニッシュと続く一連の動作の中で,もっとも重要なのはボールを捉える瞬間。つまり,ダウンスイングからインパクトにかけてフェースが目標に向かう正味三〇センチの動きの中にあるわけです」

「つまり,バックスイングもダウンスイングもフィニッシュさえも,すべては”正確なインパクトゾーン”のためにあると考えるべきです。バックスイングはインパクトゾーンを正確にするために正しく取るべき部分です。フィニッシュはインパクトゾーンをキレイにまとめ,スイングを締めくくるためにある。要するに,バックスイングからフィニッシュまでの一連の動作は,いかに正確にインパクトゾーンをキープするかに主眼を置くべきなのです。ボミのスイングもそういったところを意識して作ってきました」

「今の彼女のスイングはとても理想的です。特に左腕の使い方。インパクトの瞬間に左腕が崩れていないし,手首も折れていません。彼女のように左腕がしっかりキープできてこそ,ボールをより遠くに飛ばすこともできる。ボミは左腕の使い方とキープが非常にうまいんです」

国家代表合宿でのジュニア育成方法(かつての韓国代表・代表常備軍の総監督を務めたハン・ヨンヒのコメント)

「取り立てて特別なことをしているつもりはありません。アマチュアとはいえ,代表合宿に集まる選手たちはそれぞれ身体的特徴がありますし,日常的に指導を受けているレッスンプロやコーチもいますから,一から手取り足取り指導することも,彼らが身につけたフォームを好き勝手にいじることもありません。それはかえって,彼らに混乱を与えることになります」

「(ゴルファーとして自立できる方法を授ける)その際に私がもっとも重視したのは,ゴルフの基礎と原理です。グリップの握り方はもちろん,どのように打てばボールはまっすぐ飛ぶのか,ボールを叩く角度や場所によってボールがどう変化するのか,スタンスとボールが飛ぶ関係性やパッティングのコントロール方法など,ゴルフの基本技術と原理を教えるわけです。それも”こうだからこうしなければならない”という頭ごなしの強制ではなく,”こうだからこうなる”という原理を教えます。ゴルフのメカニズムを知っておけば,調子を崩したり,自分のスイングに迷いが生じたときでも,自ら修正することが可能になりますからね。いつでも立ち返ることができる基本を,頭と体に刷り込ませるのです」

「私たち韓国人ゴルファーは一般的に,基本に忠実でスイングフォームも画一的だとされていますよね。グリップの握り方から腕の角度,振り抜き方,スタンスの取り方まで非常に細かい部分まで気を使い,自分にあった”正しいスイング”を崩さないと評価されます。スランプや調子が悪かったり,自分のスイングを崩したとき,立ち返る基本と土台があるということは強みであり,心のよりどころになるのです」

おまけ

さて,これを読むと,いよいよ「その正しいスイングを教えてくれ」と思うわけですが,この本の著者がハン・ヨンヒに具体的な指導法を聞きまとめた,以下の連載が参考になると思います。

1 【ゴルフ】韓国代表総監督が語る「韓国人が世界で成功している3つの要因」|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

2 【ゴルフ】強靭な選手を次々に輩出する、韓国・国家代表システムの全貌|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

3 【ゴルフ】史上最年少優勝キム・ヒョージュを生み出した韓国代表の『マル秘』指導とは?|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

4 【ゴルフ】韓国代表コーチが明かす「イ・ボミが強くなった理由」|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

5 【ゴルフ】韓国代表コーチが語る「チェ・ナヨンに最初に教えたこと」|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

6 【ゴルフ】チェ・ナヨンを進化させた、たった1つのアドバイス|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

7 【ゴルフ】『女王』アン・ソンジュさえも陥った、極度のスランプ|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

8 【ゴルフ】韓国代表監督が教える「正しいスイング」とは?|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

9 【ゴルフ】韓国人プロゴルファーの95%が採用する「グリップ」とは?|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

10 【ゴルフ】韓国代表監督が伝授する「正しいグリップの握り方」|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

11 【ゴルフ】韓国代表監督が教える、「手打ち」を防ぐアドレスの作り方|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

12 【ゴルフ】韓国代表監督が指導する理想的なスイングを生み出すアドレス|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

13 【ゴルフ】韓国代表監督直伝、精度と飛距離を得るためのスイング|ゴルフ|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

余談

イ・ボミといえば,GDOのこの記事,ひどいですね。トップアスリートである彼女をつかまえて,「結局は彼氏に甘えたい女の子」みたいな三文芝居を演じさせて。

イ・ボミが妄想する理想のゴルフデートを実現してみた|topics|GDO ゴルフレッスン・練習