ロバート・トレント・ジョーンズJrは。日本でも,オーク・ヒルズや美浦などの設計で知られています(ソース)。その彼が著した「Golf by Design」,その副題「How to Lower Your Score by Reading the Features of a Course」がまさに示しているように,テーマは「コースの特徴を読むことでいかにしてスコアを減らすか」です。
これで本当にスコアが減るかは別にして,多くのコースが実例として持ち出され,イラストつきで解説されていたのは,なかなか面白いです。
Golf by Design: How to Lower Your Score by Reading the Features of a Course
- 作者: Robert Trent Jones,Tom Watson
- 出版社/メーカー: Little, Brown and Company
- 発売日: 2005/05/11
- メディア: ペーパーバック
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Chapter 1: The Playing Field
ゴルフというゲームに対する著者の考え方が語られます。「ゴルフは設計家とゴルファーとのあいだで行なわれるチェスのようなものである」。そこには「攻めと守り」があります。あるいは,「ゴルフはビリヤードのようなものである」。それは,次やその次のショットを見越したポジションどりが要求されます。あるいは,「ゴルフはターゲットスポーツである」。著者は「すべてのホールを分割し,パー3ホールの連続であると考える」ことを提案しています。また,よくいわれるように,ゴルフボールを「Strategic|Penal|Heroic」という3種類に分けることも述べられます。さらに,「パークランド,デザート,リンクス,山岳,熱帯」といったコースのタイプについても,それぞれの特徴が述べられます。
Chapter 2: the Teeing Ground
ティーインググラウンド(以下,ティー)だけが,ゴルファーがそのライを選べる唯一の場所だけに,ティーについて理解を深め,それを最大限に活用することが必須である,と著者は語ります。例えば,ティーの傾斜に注意を払い,それがボールの弾道に与える影響を考慮せよと述べます。ティーについたら,ホールの主要な特徴を見分け,それをもとにホールをどう攻めていくかを考えます。そして,設計者がホールにしかけたワナを読み取ることも求められます。ティーマーカーの向きにも注意を払い,自分のアラインメントがそれに惑わされないように注意します。
Chapter 3: Fairways and Rough Plays
フェアウェイの種類,例えばフラット(あるいはベースライン),マウンデッド,ローリング,ティルテッド,についてまず語られます。そして,フェアウェイのスタイル,つまりストレート,ドッグレッグ,スプリット,アイランド,についても違いが語られます。芝の違いがプレーに与える影響にも触れられます。ライごとのプレーの仕方(左足下がり・上がり,爪先上がり・下がり)についても簡単に触れられます。設計者の観点からは,ラフにはふたつの役割があるようです。ひとつは,ホールの「守り」として,もうひとつは,「ボールがそれ以上悪い状況に入り込まないためのバッファー」として。
Chapter 4: Bunkers
古い時代にはゴルフコースに数多のバンカーがあったけれど,大恐慌の時代にはそれを維持するのが難しくなったそうです。で,ボビー・ジョーンズやアリスター・マッケンジー,あるいは著者の父(ロバート・トレント・ジョーンズSr)といった設計者たちが,あらたな哲学を生み出した。それは,「バンカーとは初心者のプレーには影響しないが,中級者以上のプレーヤーにとっては影響すべき場所に配置すべき」というものです。バンカーは「いくつ」ではなく「どこに」配置するかがカギ。バンカーの種類の違い,役割の違いについても語られます。
Chapter 5: Other Hazards
その他のハザードとして,水や木などについて述べられます。また,アリスター・マッケンジーのハザードについての有名な言葉が引用されます。「多くのゴルファーは,ハザードの本当の意味について間違った理解をしている。つまり,ミスショットを罰するのがハザードであると。そうではなく,ハザードの本当の意味は,ゴルフというゲームをより面白くするものである。例えば,Cypress Pointの16番,海越えの222ヤードパー3ホール。ボールをひとつふたつなくすリスクをおかしてでもグリーンを狙う価値のあるホールである。あるアメリカ人が私に言ったのだが,彼はいつもこのホールで海越えを狙うので,いままで大量にボールをなくした。だけど,ボールがグリーンを見事に捉えたときの喜びと達成感は,それまで海に消えていったすべてのボールを超える価値がある」。
Chapter 6: Reaching the Green
グリーンを狙うショット(アプローチショット)と,グリーンコンプレックスとについて語られます。ショットの種類,つまりチップ,ピッチ,ロブ,バンプアンドランの違いについても述べられます。ウェッジの種類についても触れられます。ショートゲームに影響を与えるグリーンの種類の違い,例えばフラットなのか,受けているのか,馬の背なのか,ボウル型なのか,2段なのか,ローリング(うねっている)なのか,についてもイラスト付きで説明されます。
Chapter 7: Greens
まずサイズの違いについて述べられ,大きなグリーンの場合はそれがいくつかのより小さなグリーンの集まりとしてみなせることが述べられます。ペブルビーチ7番パー3のグリーンのサイズが時代によってどう変化したか,その写真も掲載されています。グリーンのスピードについては,スティンプメーターはあまり役に立たないこと,それよりも風や日光や気温や雨といった要素がグリーンの速さに大きな影響を与えることを述べています。芝の違い,特にそれによる芝目の違いについても語られます。
Chapter 8: Illusions and Wind
設計家が使うイリュージョン,つまりいかにコースを長く・短く・広く・狭く見せるか,について,多くの実例がイラストと写真もふくめて述べられます。また,風がプレーに与える影響についても語られます。
Chapter 9: Architectural Excellence
これまでの述べたすべての要素を踏まえた上で,いくつかのコースをピックアップして解説をしていきます。たとえば,St Andrews Old Courseの11番パー3。North Berwrickの15番パー3。Royal Portrushの5番パー4。Pine Valley13番のパー4。Mid Ocean5番パー4。Augusta National13番パー5。などなど。