Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

奥嶋誠昭『ザ・リアル・スイング:科学が解明した「ゴルフ新常識」』実業之日本社|この内容が「常識」になってほしいと真に願う

またしても面白い本に出会いました。データ解析をベースにしたスイング分析に関するものです。

スイングにおける「側屈」の重要性については,僕が以前参加したワークショップで耳にしてましたので,そういう点ではスムーズに読み進めることができました(この側屈の動きこそが,いわゆる「タテ感覚」につながるのかな,と改めて思いました)。また,第3章の内容(クラブフェースの向きが打ち出しの方向を決める)をラウンド中に意識すれば,いままで経験していたミスは減らせるのかな,と思いました。

好むと好まざるとにかかわらず,いまスイング理論はこの程度までに(そして当然この先にまで)進んでいるのだな,ということが分かります。こういった事実を無視して抽象論だけでスイングが語られるのは(特に,やれ「ヒップターン理論は日本の多くのアマチュアゴルファーにはちょっと難しかった」とか「手打ちと体打ちの論争にピリオドが打たれる」といったようなのは),今後減っていけばいいなと願います。

以下,内容の要約です。

第1章,スイングの真実は「6方向の自由度」で見えてくる
  • ここでいう「6方向の自由度(6DoF)」とは,上下(屈曲・伸展,Lift),左右(スライド,Slide),前後(スラスト,Thrust),上下軸まわり(回転,Turn),左右軸まわり(前傾・後傾,Bend),前後軸まわり(側屈,Side Bend)のこと。
  • ゴルフスイングの動きはこれらの組み合わせであり,その動かし方の順序や度合いの違いが,スイング理論の違いを生んでいる。
第2章,GEARSが明らかにしたスイングの真実
  • GEARS(ギアーズ)とは,カラダとクラブの動きをデータ化する「リアルタイムスイング解析システム」のこと。
  • このデータによれば,プロであってもすべて(肩,腰,膝,爪先)のラインをスクエアに構えているわけではないことがわかる。
  • また,スクエアに構えたとしても,インパクトでスクエアに戻ってくるとは限らない。バックスイング中に(回転の動きの中に)側屈の動きを加えることで初めて,真の「前傾キープ」が実現できる。そこにさらに伸展と右方向へのスライドが加わって,トップ・オブ・スイングが完成する。
  • 動きのエラーは,それらのどれかが過剰になっているから。
  • ダウンスイングでは回転の意識しかないから左に突っ込むのであって,そこに右への側屈の意識を入れることで,上体の開きが抑えられる。
第3章,ハイスピードカメラ,弾道測定器が明らかにしたインパクト
  • 従来は「スイング軌道がボールの打ち出される方向を決める」と考えられてきたが,実際には「クラブフェースの向きが打ち出し方向に大きく影響を与える。インパクト時のクラブパスとクラブフェースの向きとの関係がボールの曲がり方を決める」。
  • クラブフェースの向きが打ち出し方向に与える影響は,アイアンが75%,ドライバーは80%。ドライバーの方が数字が大きいのは,バルジの影響。
  • ドライバーショットはスイング軌道の最下点の先にボールがあるために,オンプレーンで振ってもパスはアウトサイド・インになる。アイアンの場合はその逆。
  • 打ち出し角については,いままでの常識的な角度より,高めに打ち出す方が飛距離は出やすい。例えば,ヘッドスピードが40m/sの場合,打ち出し角18度・スピン量1600-2000rpmでキャリーが231ydと最適化される。
第4章,シャフトマックスや足圧計で明らかになったこと
  • シャフト測定器「シャフトマックス」を使えば,スイング中にシャフトにどう負荷をかけ,どう解放しているか,どのタイミングでどの方向にどれぐらいの長さと強さで,がわかる。
  • シャフトへの負荷が大きいほど飛ぶ。
  • プロのスイングを写真で見るとシャフトが大きくしなっているように見えるが,それは動いているものを静止画にするときに起こるトリックのようなもの。GEARSのデータによれば,プロがヘッドスピード55m/sで振っていても,ヘッドの動きは数センチ程度であることがわかる。
第5章,最新のゴルフ理論を上達につなげるために
  • スイングプレーンが縦になるほど打球が曲がりづらくなる。それゆえ,背の高い人ほど有利。
  •  スイングを通じてカラダの中に動かない場所はないが,カラダとボールとの間隔をコントロールする感覚はあっていい。
  • 超短尺クラブを打って実感できるのは,「体幹を屈曲させながらお腹を引っ込めないとスイングできない」ということ。
  • お腹を柔軟に動かす感覚,特に凹ませる感覚こそが,ヘッドに働く遠心力に対抗して,カラダの悪い動きを防ぎ止め,クラブの動きを安定させてくれる。
  • 体幹をつかったスイングは,カラダにとってはかなりキツい。しかしこのキツさこそが,スイング向上には必要。