Linkslover

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鈴木康之, 藤岡三樹臣, 杉山通敬『痛快!ゴルフ学』集英社インターナショナル

なぜ表紙が坂本竜馬なんだ,というが,誰しもが最初に抱く印象だと思いますが……,前に取り上げた印南一路『すぐれたゴルフの意思決定』東洋経済新報社の中で,「コース設計家が錯覚をどう使うか知れば,錯覚のある場所が見抜きやすくなり,錯覚を予防するのに有効と思われる。ところが,この観点から書かれた書物は,『痛快! ゴルフ学』(集英社インターナショナル,2002年)の第13章「ゴルフ造園学」以外にはほとんど見当たらない。」とあったので,買って読んでみました。

ちなみに著者たちは,Amazonの情報によると

鈴木康之
1937年生まれ。ゴルフマナー研究家。広告界でコピーライターとして活躍するかたわらゴルフマナー研究に取り組んで四半世紀。雑誌、新聞、インターネットに連載物を執筆しつつ1999年にマナー研究の集大成『ピーターたちのゴルフマナー』(ゴルフダイジェスト社)を上梓

杉山通敬
1935年生まれ。ゴルフライター。『ゴルフダイジェスト』編集長を経て1960年にフリーの文筆業に転ずる。一貫して「ゴルフは文化である」の視点で著述活動する

藤岡三樹臣
1935年生まれ。ゴルフ史研究家。上智大学卒業後、イギリスに留学しゴルフ史を研究する。ゴルフ資料の膨大な収集家でもある。元日本ゴルフ協会事務局次長、参与。英国ROYAL ST.DAVID GC会員。PGA学術会員。GCS(収集家)会員

だそうです。みなさん1930年代のお生まれなのですね。

まず構成ですが,全部で27章からなっていまして,それぞれ章第が「ゴルフ犯罪学」「ゴルフ社会学」「ゴルフ造園学」などと,すべて「ゴルフxxx学」というかたちになっています。これらをすべてひっくるめて書名の「ゴルフ学」ということになる,ということなのでしょうが,「学問」もずいぶんと甘く見られたものだというか,薄っぺらい言葉の使われ方だなぁという印象が拭えません。で,各章のアタマが1見開きで,そこにその「なんちゃら学」という言葉と関係がありそうな偉人のイラストと,その偉人が本当に言ったのかしらと誤解させるような,ゴルフにまつわる格言めいたものが書かれているというかたち。(その流れで表紙が坂本竜馬なんでしょうが,それにしてもどうして竜馬なんだよっていう疑問はぬぐえない)

各章を3人の著者が分担して記述スタイルになっていまして,ちなみに「ゴルフ犯罪学」とは要するにスコアのごまかしにまつわる随筆,「ゴルフ社会学」とはいわゆる「江戸しぐさ」を枕にしながらのゴルフ場におけるマナーとエチケットに関する随筆,そして「ゴルフ造園学」は,コース設計,特に人間の認知(あるいは錯覚)に関する知見を活かしていかに設計者がプレーヤーたちを欺こうとしているかについて,といった具合です。

章によって文章のクオリティやスタイルにバラつきがありまして,ある章は何の腹の足しにもならない著者の想いを綴るもの,そしてある章はインタビューや取材を通じた読み応えのある内容,といった感じでして,そのバラけた感じがまた意図的なものなのでしょうから,そこに本の作り手たちの自己満足や自己陶酔が透けて見えなくもない。(少なくとも,繰り返しますが,安易に「学」という言葉を使ってほしくないのです,私は)

そんな中でも面白いと思った章は(カッコ内はその章の著者),

  • ゴルフ歴史学:主要な人物に焦点を当てた日本のゴルフ史。アーサー・グルーム,赤星六郎,中村寅吉など(杉山)
  • ゴルフ法律学:赤トンボの上にとまったボールの処理に関する,R&Aを巻き込んだ裁定について(鈴木)
  • ゴルフ言語学:日本のゴルフシーンに氾濫する和製英語について(鈴木)
  • ゴルフ造園学:上記の通り(鈴木,川田太三へのインタビューを基に)
  • ゴルフ建築学:ブリック&ウッドクラブ設立の経緯(鈴木)
  • ゴルフ経済学:日本のゴルフ料金はなぜ高いか? 下げられる余地はないのか? ゴルフ場の経営について(鈴木)
  • ゴルフ考古学:さまざまな経緯でなくなった日本のゴルフ場,その背景(杉山)
  • ゴルフ演出学:さまざまなニギリの方法を紹介(坊城浩)
  • ゴルフ文学:ゴルフに関する本のリストが参考になる
  • ゴルフ資料学:ゴルフの日本史と世界史を年表形式で

の,全10章です。