世の中には30,000以上のゴルフコースがあり,その中のいくつかは自らを「リンクスコース」と称していますが,この本の著者たちによると,その中で「True Links(本当のリンクス)」と呼べるのは,246コースしかないそうです。その246の本当のリンクスを網羅したのがこの本です。
総ページ数は300以上,書籍のサイズは28.9 x 28.9 x 2.7cm とボリューム満点。
- 作者: George Peper,Malcolm Campbell,Iain Macfarlane Lowe,Tom Watson
- 出版社/メーカー: Artisan
- 発売日: 2010/11/01
- メディア: ハードカバー
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本書の構成としては,
- リンクスの語源,定義,歴史,ウンチク
- リンクスの設計家の概観(Old Tom Morris から,最近では Tom Doak,Bill Coore and Ben Crenshaw など)
- セントアンドリュース・オールドコースにまつわるあれこれ
- オールドコースに匹敵するリンクスのアイコン的なコースの紹介(Ballybunion,Carnoustie,Muirefield,North Berwick,Prestwick,Royal Dornoch,Turnberry など)
- それ以外の古典・名作の紹介
- UK・アイルランド以外のリンクス(大陸ヨーロッパ,ニュージーランド・オーストラリア,南アフリカ,北米)の紹介
- 現代のリンクスの設計の概説(Bandon Dunes や Cabot Cliffs など含む)
- リンクスの将来的展望
といった感じで,これだけ見ると真面目くさってますが,というか実際に文章は非常にしっかりしていますが,それをすっとばしてもいろんなリンクスの写真を見ているだけでも面白いです。
リンクスの定義というのもなかなか難しいですが,本書がいうには,もっとも厳密な定義としては,
- 川の河口に隣接していること
- コースのある地点から海がのぞめること
- 木がほとんどないこと
- バンカーが数多くあること
- セントアンドリュース・オールドコースのように,フロントナインとバックナインとが「行って来い」の関係にあること
らしく,素人目には土壌とか地形とかは無視していいのかしらと思いますが,この本におけるリンクスの定義は,それよりは少し緩いらしく,しかしUSのペブルビーチは「崖の上」なのでリンクスにあらず,なのだそうです。
プロローグでは,リンクスでのゴルフとインランドコースでのゴルフ(アメリカ的と言い換えてもいいと思う)との違いを記している箇所があって,
インランドゴルフでは,ボールがウォーターハザードに入るか木の中に入ると少なくとも1ストロークは落とすのに対して,リンクスでのゴルフでは常にトラブルを回避してカップを狙う道が存在する。その道はひとつだけではなく,ときには3つも4つも(その道が見つけられるとして)。常に吹く風ゆえ,リンクスでのフェアウェイは基本的にやさしいが,しかし好ましいサイドは存在する。その好ましいサイドを見つけることはゴルフの戦略の本質であり,それはセントアンドリュース・オールドコースに端を発する。イギリスのゴルフライター Henry Longhurst が記すように,「すべてのショットで,それがショートピッチだろうとフルドライブだろうと,一歩下がってこう自らに問わなければならない。『ちょっとまて,ここで俺は何をしたいんだ?』」 プレーヤーは,肉体的な才能だけでなく,想像力も要求される。つまりは,正しいショットを選択し,そしてその正しいショットを打つのだ。
このパラグラフはいろんな要素が詰まっていると思いました。