Linkslover

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関雅史『誰も語らなかった飛ばせるクラブとスイングの本音』マイナビ

人気につき増版されたQP氏の本ですが,Kindle版もあったので読んでみました。タイトルに「スイング」とある割には,スイングについて語られているのは「レベルブローで振れ」と「ドローボールの練習をしろ」というぐらいで,基本的には「ミスショットはもっとクラブのせいにして良い」というスタンスのもと,どういったクラブをどういった基準で選べばいいかを解説するとともに,その前提条件となる基礎知識についても説明がされています。さらに,そのクラブ選択の基準を明確化するために,フィッティングを受けることが(アマチュアほど)大事,そのフィッティングで計測するのは「ボール初速と打ち出し角とスピン量」で,それを測った上で理想の弾道を得るためにどの数値をどういうかたちで変化さえていくのかが大事,というのが,著者の主張です。

その基礎知識の部分については,特に目新しいこともなく,これまでの知識の整理に役立ちます,といったところ。クラブ選択については,「ヘッドよりシャフトが重要,なぜなら自分に合わないシャフトで振ってもタイミングがとれなく,道具の性能を最大限に発揮させられないから」というのが著者の主張で,そのシャフトについては「大まかに分けてシャフトは4種類しかない」と断言しています。(これはGDOの昔の記事に書かれていることですね)。

興味深かったのは,最終章にある「タイプ別クラブ選び」。「スライスに悩む人」「フックに悩む人」「ヘッドスピードの速いゴルファー」「アベレージゴルファー」「飛距離低下に悩むベテランゴルファー」「女性ゴルファー」という,6つのケースで,具体的にどういう思考過程を経てフィッティングが行なわれているかが紹介されています。

うがった見方・言い方をするならば,たぶんこの本に書かれている内容は,多くのクラブフィッターが理解・習得・実践しているもので,「これぞQP氏ならでは!」というものでもないと思うのですが,本人のキャラクターと各種メディアでの露出による知名度,そして「2008年に世界ドラコン日本大会にて382ヤードという記録を持って」いる著者の実績があるからこそ,こうやって書籍として流通しているのだろうなぁと……。

あと,この書籍の編集に関して,いくつか気になったこと。

  •  「させて頂き」という表現が多く目につく。「させていただく」が正しい敬語とは思えないが,せめて「頂き」ではなく「いただき」に。「する事」も「すること」にすべき。
  • 誤字。☓「ディープフェースと世に」→「ディープフェースと呼び」
  • 途中,QP氏のブログ記事風あるいは語り口調風に,半角カタカタのつっこみが入ったり,「おっと,話が脱線しましたね」などといった口調がさしこまれるが,書籍でこれをやられてもしらける。(本当に話が脱線しているのであれば編集の時点でなんとかすべきだし)
  • 書影に帯いる?
  • その帯にあるタケ小山氏の「ここまでしゃべっていいのかよ」というほどには,何かを暴露しているとは思えない。

誰も語らなかった飛ばせるクラブとスイングの本音

誰も語らなかった飛ばせるクラブとスイングの本音

  • 作者:関 雅史
  • 出版社/メーカー: マイナビ出版
  • 発売日: 2015/02/11
  • メディア: Kindle版

抜粋
  • この本を書くに至ったのは,良いショットを打ちたい,飛ばしたい,上手くなりたいと考えるゴルファーの方々のゴルフクラブに対する“常識”が,間違っていると肌で感じたからです。
  • 「ミスショットはもっとクラブのせいにして良い」のです。
  • 自分に合ったクラブを使っているのは大体上級者の方で,なかなか上達できず悩んでいらっしゃる方ほどクラブには無頓着な方が多かったのです。
  • 最近のクラブは効果の出やすいグルファーを絞り込んで作られています。でも,その対象ゴルファーをハッキリと発表しません。
  • スイング理論を詳しく勉強しろと言っているわけではありません。自分のスイングの傾向と自分の弾道の傾向を知っておくべきだと言っているのです。
  • クラブを探すうえで重要なのが,今使っているクラブから何を改善させたいのかをハッキリさせることです。
  • ヘッドスピード42m/sのゴルファーの場合,スピン量2400rpm,打ち出し角15度が理想値です。
  • そもそも真っ直ぐ飛ばすことが難しいゴルフではミスがつきものです。そのミスの幅を如何に抑えるかという練習が安定した結果を出すために必要です。それがあえて曲げる練習なのです。
  • 現代のスイング論は,クラブ自体が進化した結果,クラブをスイングで補うといった考え方は主流ではありません。どちらかといえば,どのように振ればクラブの性能を最大限に活かせるのかという考え方になっています。
  • 過去のスイングは,シャフト軸を中心としたヘッドのターンが主流の考え方でした。(…)しかし近代のスイングでは,左手を軸としたクラブ全体でヘッドをターンさせる考え方に変化してきています。
  • シャフトの役割とは何でしょう。それは三つあります。一つ目は,エネルギーを生むゴルファーのスイングのタイミングを取りやすくすること。(…)二つ目は,スイングのパワーを増幅させること。(…)三つ目は,しなりの場所を変えたり,捻じれる量を調節したりしてヘッドのボールに対しての向かって行く角度,いわゆる入射角に変化を持たせ,インパクト時のフェース面の向きや角度に一定の傾向を持たせることです。
  • よく「シャフトとヘッドのどちらを先に選んだ方が良いか?」という質問を受けますが,私自身シャフトとお答えしています。
  • アマチュアゴルファーこそシャフトにもこだわるべきなんです。
  • クラブにこだわっていないからスイングが固まらないのです。
  • ではどんなときに重心の位置が弾道に影響を及ぼすか? それは芯を外した時です。
  • 深重心はフェースから見て重心が遠い位置にあるので除夜の鐘を打つ撞木のような長い棒で打つイメージ。浅重心は短い棒で打つイメージです。
  • 重心は,インパクト時にボールによってヘッドが押し返されるのですが,ロフトがある分,ヘッドは真後ろではなくやや下方向に押されます。
  • ここ数年のドライバーで重心の高すぎるドライバーは私の知る限り存在しません。というのも現代のドライバーで重心を高くしてしまうとメリットは何もないからです。
  • 重心角は,大きいほどダウンスイングでフェースが閉じる方向に動こうとするので,ボールがつかまりやすく,小さいほど,自分でフェースを閉じる必要がある分,操作性が良くなるという効果があります。
  • 大まかに分けてシャフトは4種類しかないと私は考えています。その4種とはしなる場所で分けられます。
  • 自分の理想の弾道が出やすい挙動のシャフトを使っても,自分のタイミングで振れなければ理想の弾道など出るはずはありません。
  • 理想の弾道のために自分のスイングを変更する努力をするより,自分の気持ち良く振れるスイングで理想の弾道を目指していく方が絶対にやさしいし,無理がないのです。
  • 最新のクラブで飛距離を伸ばすには,頑張ってヘッドスピードを上げるより,第2章で説明した飛ばしに必要な三つの数字“ボール初速”“打ち出し角”“スピン量”を効率良くした方が良い結果につながるのです。
  • アメリカ等では力いっぱい振れと教えます。日本では力むなと教えます。まったく逆です。どうしてでしょうか? それは根本的な身体の構造に違いがあるからです。
  • はっきり言える目指すべき点はあります。それは,“クラブ軌道をレベルブローにする”です。
  • レベルブローが身に付く練習法をお教えしましょう。まずは適度なロフトのあるアイアン,7番アイアンか8番アイアンを使います。そしてボールをティアップした状態で打ちます。
  • (アウトサイドイン軌道は)さらに上を向いたロフトのついたフェース面とずれた下方向にヘッドが動いているので,エネルギー伝達の効率が悪くなります。だからスライスは飛距離をロスすると言われるのです。
  • 打ち出し角とスピン量はクラブで実現できます。しかしボールをつかまえるということと,芯で打つことは,どうしてもクラブだけでは補えず,スイングの技術が必要になります。
  • 誰でもディスタンス系のボールが飛ぶとは限らないのです。
  • もし,思ったように飛距離が出ていないのなら,(1)どの数値が問題で思った弾道になっていないのか? (2)そしてその数値が悪い原因はどこにあるのか? (3)それはどうすれば改善できるのか? といった流れで修正していくことになります。
  • 試打したデータの中で一番の判断基準は,ボール初速です。
  • 私の考えでは,つかまりを抑えたシャフトはつかまりの抑えたヘッドと,つかまりの良いシャフトはつかまりの良いヘッドを組み合わせた方が良いと考えています。
  • クラブが軽いとインパクト時の衝突力が重い比べて弱くなるので,飛距離の低下にもつながります。
  • アベレージゴルファーが一番重視して頂きたいのが打ち出し角です。(…)ここでいうアベレージゴルファーとは,ヘッドスピードが35m/sから40m/sに満たない方を指します。
  • 長尺を打ちこなせて効果が出るタイプは,トップから切り替えしで積極的にタメを作らないゴルファーです。
  • 私は,女性こそフィッティングを受けるべきだと思っています。正確には,フィッティングを受けて自分に合ったクラブを使えば,もっと楽しくゴルフができるようになると思うのです。