Linkslover

I want to be a window through which Japanese golfers can see what’s happening outside. TPI G2/P2.

Oliver Horovitz『An American Caddie in St. Andrews』|ハーバード大学のギャップイヤーを利用してセント・アンドリュースでキャディをした学生の話

最近買って読み始めたばっかりだけど,思ったより面白いのでさっそく記します。

An American Caddie in St. Andrews: Growing Up, Girls, and Looping on the Old Course (English Edition)

An American Caddie in St. Andrews: Growing Up, Girls, and Looping on the Old Course (English Edition)

「パリのアメリカ人」みたいなタイトルの本ですが,こちらは「セント・アンドリュースのアメリカ人キャディ」。主人公は,ハーバード大に合格しながらも入学が認められたのが1年後からということで,そのギャップイヤーを利用してセント・アンドリュース大学で学びながら,アルバイトでセント・アンドリュースのキャディをつとめた若者。彼のセント・アンドリュースでの体験が描かれるわけです。

いかにも「アメリカの若者が書きました!」という調子の文章で,鼻につかないこともないが,テンポが良くてすいすい読める。

彼自身もけっこうな腕前のゴルファーというか,小さいときから親と一緒にゴルフをし,また親戚がセント・アンドリュースに住んでいる関係で,何度もオールドコースでプレーしたことがあったらしい。なので,ギャップイヤーにセント・アンドリュースに行くという選択は,彼にとって自然だったそうな。

この本が興味深いのは,やはり普通ならなかなか表に出てこないキャディ(しかもセント・アンドリュースの)の生態が描かれていることだと思う。例えば,

  • 最初のうちは他のベテランキャディに相手にされなくて疎外感を味わっただの,
  • グリーンについたら若いキャディがピンを抜くのが不文律(日本と違ってプレーヤーひとりにキャディひとりがつきます)だとか,
  • 指名されない以外は,キャディへの仕事の割り振りは早い者順(first-come first-served)で,朝早くキャディ小屋に行って番号札もらうだとか,
  • オールドコースでプレーするのはアメリカ人がいちばん多くて,次にイングリッシュ,その次に日本人だとか(日本人はドライバーに8万円とかも使うくせにチップが少なくて,でもたぶんそれは旅行会社に高い金を払ってるからキャディには払うチップがないんだろうとか),
  • キャディがにとっては何よりもチップが大事で,いくら感じのいいゴルファーについても,チップが少ないと悪い印象しか残らないとか,そのチップの額をキャディ同士でスラングを使って(ラウンド中でも)話し合ってるとか,
  • アメリカ人でも北部の人はティップがせこいとか,カナダ人もせこいしドイツ人もせこいし日本人もせこいとか,
  • キャディたちのあいだでは「知識はチカラなり」なので,著者は暇さえあればコースガイドを見てオールドコースにあるあらゆるバンカーの名前を覚えようとしたとか,
  • アメリカ人の客が来て,フロント9のあいだずっとフランスのことをコケにしてて(例の「フレンチフライ」じゃなくて「フリーダムフライ」の話),そしたらそれについてたキャディの母親がフランス人で,バック9ではそのキャディはグリーンの読みを真逆に伝えてたとか,
  • ある日筆者がついた客が日本人で,オールドコースでプレーするっていうんですごく興奮してたんだけど,英語がまるで喋れなくて大変だったとか(「オハヨウゴザイマス」って挨拶したらなんかすごく喜ばれたとか),

とかなんとか。

いやー,キャディって怖いですね。