このブログのタイトル下に書いているのは,〈球聖〉ボビー・ジョーンズの語った「ゴルフってのは5.5インチ幅のコースで,つまり両耳のあいだでするものだ」という名言だけど,まぁその手の名言と,それにまつわるエピソードをまとめた本。
騎士たちの一番ホール―不滅のゴルフ名言集 (日経ビジネス人文庫)
- 作者:夏坂 健
- 発売日: 2004/05/01
- メディア: 文庫
例えば,「1ホールの中に,人生のすべてがある。 ラジャード・キップリング」とだけ言われても,あぁそうですか,って感じだけど(というか,キップリングが1907年にノーベル文学賞を受賞した作家だということ自体を知らなかった),キップリングとはまったく関係ないスコットランドのソーンヒルGCで「針の穴」と称される6番Par3ホールのエピソードから始まり,そして「八つ当たり街道」と名付けられた9番Par5の話に移り,川奈の大島コースに触れてから,「まれにティショットがフェアウェイをとらえても次に好打の保証なし,その有為転変を人生になぞらえた冒頭の言葉」みたいなかたちでこのキップリングの言葉に軟着陸させるという感じで,取り上げられれている名言の中にはそれ自体で味わい深いものもあるけれど,全体的にはこういった名言にまつわる(あるいはまつわらない)エピソードの数々を味わうための本なんだと思う。
あとがきには,
手間ひまさえ惜しまなければ,ゴルフ史には無量のドラマが眠っていること間違いない。そこで疲れた体に一喝,またぞろ各国の図書館と資料館めざして徘徊の旅に出掛ける。
と書かれてあって,豊富なエピソードはそうやって集められたのねと合点がいった次第。
19世紀末とか20世紀前半とか,それぐらいの古い話が多く,その時代のゴルフの名著の名前も挙げられているので,それが知れるという点でも読む価値があったかな。
「まさにゴルフはゲームのエスペラントだ。 ロード・ブラバズン・オブ・タラ」の項では,そのタラさんの話にはまったく触れずに,著者自身が「ゴルフのエスペラント性」を体験したエピソードが書かれているんだけど(イギリスの山道で迷ったときに出会った老夫婦から,「ゴルファーだ」と名乗っただけで非常に優しくされた,とかいう,ささいな話なんだけど),そういうのを読んでちょっとウルっと来てしまった自分がいたりして,まぁこういう本を読むことで,ゴルフバカはさらにゴルフバカになっていくというか,いろんな側面からゴルフの面白さ・奥深さにハマっていくんだろうなぁと。